嗚呼、チャルメラカー
寒い寒い冬の夜になると恋しくなる。
チャルメラの音色が住宅地に響くと小銭を握りしめて家の外へ出る。
そこへやって来るのは「ラーメン屋台」の車。
屋根を付けた軽トラの荷台が厨房で、プロパンガスのコンロと寸胴鍋が見える。
注文を受けると、そこでチャチャッと作ってくれる。
出てくるのは、発泡スチロールの丼に盛られた、ごくごくありきたりな しょうゆラーメン…いや素朴な中華そばと言ったほうがいいな。
当時1杯350円ほどだったか。
ほくほくと立ちのぼる湯気から漂うスープのにおいに つばを飲み込む。
寒空の下で立ったまま食べるもよし、暖かい家に持って入って食べるもよし。
家の近くで最後に「ラーメン屋台の車」を見てから35年は経つけど、今でもあの懐かしい味を思い出す。
またチャルメラ鳴らして来てくれへんかな。