デフレバイク 世にはばかる




おことわり:当コラムに出てきますバイクの値段は掲載当時のものです。


不景気になると、物が売れなくなり、値段を下げてでも売ろうとするので、物価が下がります。
それを、デフレーション、略して「デフレ」と言います。


逆が「インフレ」。有名なのは、2015年に廃止されたジンバブエドルですね。
廃止される際の交換レートは、3京(けい)5000兆ジンバブエドル=1米ドル
それも、通貨切捨ての「デノミネーション」を何度も繰り返してこの有様ですよ。

こんなになってしまったのは、ムガベ大統領(当時)が、「資金が足りないならいくらでも金を発行する」などと抜かしたせいです。



この異常さを1米ドル=115円としてジンバブエドルに直すと、

200円のキャベツは、5京87兆ジンバブエドル
1980円のシャツは、50京261兆ジンバブエドル!!
150万円の車は、4垓(がい)5652京ジンバブエドル!!!(「垓」は「京」の1万倍)
銀行強盗が3億円奪ったってのは、913垓434京ジンバブエドル!!!!
日本の国家予算90兆円は、2壌(じょう)7391杼(じょ)ジンバブエドル!!!(「杼」は「京」の1億倍。「壌」は「京」の1兆倍)



きゃー!!!聞いた事もない桁の名前が出てるー!!!
頭大爆発やね。
こんな国に生まれなくて良かった、と思う今日この頃。

歴史・経済のお勉強はオシマイ。




さて、デフレです。
100円ショップもしかり、マクドのハンバーガー59円(掲載当時)もしかり、
牛丼屋が並280円まで下げたのもしかり、
「焼肉の天壇」が平日半額にしてるのもしかり、
ユニクロの服が異様に安いのもしかり、
安い小型車や軽がバカ売れするのもしかり……。




安いことはいいことだ、と思うのは大間違いです。
その結果、企業は、値段を下げたしわ寄せとして人件費をケチり、給料が下がる。突然解雇される…。
→お金がないので物が売れなくなる→…悪循環なんですよ。
これをデフレスパイラルと呼んでいます。



選挙で選ばれただけで 日本を代表してるんだと勘違いしてる、ご高齢のピンボケおじちゃんたちに、
この状況を直せというのが、無理なんです。




だって、そうでしょう。
こっそり受けたワイロがばれても、「たかが500万円ではないか」とか言って 開き直ってるような奴らですよ。
俺の年収ちかい高額を貰っといて「たかが」はないやろう! 
スマキにして干上がってる山科川に放り込むどー!!と激怒しちゃうのがフツーの人間の反応だと思います。



…誰も止めてくれないから、どんどん話が逸れていくではないか!!



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えー、何の話やったっけ? あ、そうそう、デフレの話ね。
で、物を安く生産するためには、人件費を抑えるのが一番。
人件費が安い外国で生産して輸入しよう。
そういう流れになってきています。



事実そうですよね。
服や靴、帽子、タオルなど、身の回りのもので「MADE IN JAPAN」の製品、ありますか?
僕が今着ている「Lubricants」の長そでシャツは中国製やし、
バイクのジャケットも中国製、ナイキの帽子は台湾製。
ケンウッドのMDラジカセも中国製。
使い捨てのコンタクトレンズはアイルランド製…。
パソコンとデジタルピアノと置時計は日本製やね。ちょっとホッとした。



今は見当たりませんでしたが、韓国製も多いですね。


食べ物にしても、偽装で有名になった牛肉もアメリカやオーストラリア産が幅を利かしてるし、
中国産のシイタケなどもそうやし、最初からカットしてある野菜や、冷凍の野菜は、全部輸入物ですし。
冷凍野菜は手抜き料理に便利でよくつかってたのに、
生産地が「マレーシア」とか書いてあって、すんごく不安なので、やめました。



こうやって「安い」と言う理由だけで、日本の農業・工業はどんどん外国製品に押されて衰退していくんですよ。



そのなかでも、かたくなに日本製を守ってきた工業製品があります。

車とバイクです。
両方とも、世界に名を轟かせているメーカーがたくさんあります。
それって、立派な誇りだったと思うのですが、その牙城もとうとう崩れてしまいました。



バイクにまで「ユニクロ商法」が入ってきたからです。


ホンダが中国・上海で生産して 日本に輸入する50ccスクーター「Today」





2002年8月から販売されているこのスクーター、定価9万4800円
その次に安いホンダの50ccバイクは、14万9000円。その差、実に5万円以上です。
実勢価格で8万8000円ほどであります。
とうとうここまで来たか、って感じです。



日本のメーカーが中国からバイクを輸入するのは初めてのことです。



スズキは「レッツUスタンダード」14万4000円を、
’02年2月に11万2000円に値下げして、半年で2万4000台を販売。




さらにホンダに対抗して、部品点数の削減や、生産工程の合理化を行い、
’02年10月から10万5000円に値下げしています。

実勢価格は、こちらも10万円を切って、9万8000円ほどで販売しています。

ちなみにスズキは「国内の製造業として まだやることがある」と、国内生産にこだわり、
「日本国内での生産」をアピール
しています。



ヤマハも50ccスクーターに関しては、’02年12月から2年間かけて台湾に生産拠点を移管するそうです。

カワサキが出て来ませんが、カワサキは現在 50ccのバイクを作っていません。
一番排気量が小さいのは「KSR110」の110ccですね。



そして、国内の50ccバイクの販売台数は、


1982(昭和57)年の280万台をピークに減少し、
1985(昭和60)年に200万台
1995(平成7)年に95万台
2001(平成13)年は40万台
2005(平成17)年には30万台と、ピーク時の9分の1以下にまで落ち込んでいるそうです。




そりゃ バイクメーカも焦るわな。
国内の4つのバイクメーカーは、バイク以外のものもそれぞれ生産している巨大企業なので、潰れるということは無いでしょうけど。
だからって、海外で生産すればいいって問題でもないやろうに。



その中で現れた デフレバイクは 市場にどういう刺激を与えるのか、僕は非常に興味がありました。
ホンダは、「中国製・日本製は関係ない。ホンダ製だ」と強調していましたし。
その割に、

  1. 同じ4サイクルエンジンを積んだ「スマートDio」は5.0馬力あるのに、「Today」は3.8馬力(当時)と非力なのはどうして?
  2. 全体に「安っぽい」雰囲気を醸し出しているのはどうして?
  3. 燃料計が無いのはどうして?
    (↑ガソリンの残量が少なくなると、ランプが点灯します。
      2サイクルのバイクで 「エンジンオイルが無くなった時に点くランプ」と同様のもの)

スズキのデフレバイク「レッツIIスタンダード」にも燃料計はありません。(上の「項目3」と同じシステム)
「スタンダード」以外のグレードの「レッツII」には燃料計が付いているのに。
あきらかにケチってるやないか…。



長距離を走る僕には、燃料計が付いてないのは痛い。
それなら代わりにトリップメーターを付けとけよな。これでは満タンにしてから何km走ったか分からんやん!
無頓着なオバちゃんやったら、しょっちゅうガス欠起こすで。



これは売れへんな。
ホンダ、敗れたり! それが発売前の感想でした。


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そして、販売が開始されて2ヶ月たったある日 新聞にその「成果」が載っていました。



なんと、「Today」は最初の1ヶ月で1万台を売る大ヒットになっていたのです。
「店頭に並べることが出来ない」人気ぶり、とありました。



現在(2002年10月現在)、国内で一番売れてる車(ホンダ・フィット)の月間販売台数が 2万5000台程度なので、
「Today」の売れ方が尋常でないことは明白です。



その新聞記事が世に出るのと前後して、「Today」を街中でチラホラ見掛けるようになり、
ここんとこ、毎日1台以上は見かけています。
間違いなく売れているのだと実感せずにはいられませんでした。



ターゲットは僕のようなヘビーユーザーではなくて、お買い物に使う人なんやな。
それなら、「走りさえすれば」と割り切ってしまえれば、超お買い得やしね。




これで、今までバイクから遠ざかっていた人が、バイク乗りに戻って来てくれたら それに勝る喜びは無いね。
国内のバイク販売台数の7割は原付なんやから。
たかが原付、されど原付、されどバイク。


…あれ? いつの間にか、俺の立場が逆転してるやん!
ま、いいか。



でも、おれは「デフレバイク」はいらん(笑)

参考:京都新聞 '02年7月22日付
   毎日新聞 '02年7月23日付
   毎日新聞 '02年10月6日付
いずれも朝刊


     モトチャンプ(三栄書房) ’08年7月号