雪国であった。



タイトルは、川端康成の「雪国」の有名すぎる一文を借りました。ちなみに読んだことはないです(笑)。


小説の書き出しの、「国境の長いトンネル」は、フィクションの世界の、仮想のものと思いこんでいました。

それが実在するトンネルを題材にしていたなんて、恥ずかしながら大学受験で文学史で学ぶまで知りませんでした。
読んでないのだから、学ぶまで分からんかったのは当たり前やけど(笑)。

「国境」とは群馬県と新潟県の県境を指し、「トンネル」はJR上越線の「清水トンネル」だと言われています。



物語は、主人公が鉄道で雪のない群馬県側から清水トンネルを抜け、
雪国である新潟県湯沢町に着いたところから始まるということですね。



…これを機会に「雪国」を読んでみようかな。


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トンネルの入口がぽっかり口を開けているのは「怖い」印象がないこともないですもんね
(コラムでは心霊スポットとして2回取り上げていますし(笑))。


まぁ、トンネルって オレンジ色のナトリウム灯がともるだけの殺風景さはありますが、
出口が近づいてくると、なんだか心が浮き立ちません?

ホッとするのはもちろん、入口と出口で風景はもちろん、気候も風習もまったく異なっていたりとか。

考え方を変えれば、山に隔てられた2つの地域を繋ぐ、不思議な空間だなぁと思うんですよね。



ただ、バイクで走る上では、非常に気をつけなければならない場所のひとつです。


ことに早いスピードで走っているときに起こる現象として、
昼間にトンネルに入ると、急激に暗くなるため目がついていかず、実際より暗く見える「暗順応」が起こりますし、
トンネルから出ると、外の強い明るさに眩しくて、物が見え辛くなる「明順応」が起こります。



それと、長大なトンネルだと、上にも書いたとおり、出口の環境がガラッと変わっているかもしれません。



「雪国」のようなシチュエーションをバイクで再現すれば、
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。路面が凍結していて思い切り転倒した。」
だって、十分ありえますやん。



↓は鉄道トンネルの話ですけど、
兵庫県北部の「餘部鉄橋」での事故は、
トンネルを出たところが地上45mの鉄橋上で、
突風にあおられて列車がひっくり返って下に落っこちた
わけでしょ。



道路の世界でも…↓
山岳地区の高速道なら、直線的に道を敷設するために、
山と山の間の谷間を高架橋とトンネルを連続させて繋いでいるところなどいくらでもあるよ。

出口になびいている「吹流し」が真横になびいていたら強風の証拠。
そういう状況だと、車重の軽いバイクなら、トンネルを出た瞬間に隣の車線まで流されてもおかしくないです。
だから、速度を緩め、体を伏せて身構えるくらいの心構えが欲しいです。


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僕のトンネルでの実体験を書いておきましょう↓

中央道の、長野県と岐阜県の県境にある延長7kmの「恵那山トンネル」をバイクで走っていた時のこと。
長野側は曇りでした。
長いトンネル内の代わり映えしない壁面を延々と見せられるのは退屈ですし、距離感や速度感も鈍ってしまいます。

そこへ、はるか遠くに トンネル内とは違う、一条の光が差し込んだ瞬間。
やっと抜けられる!

外の景色がぐんぐん近づいてきます。
しかし、なんか様子が変。あれ?外界がぼやけているやん…??


まさか!と身構える間も無く トンネルを飛び出した僕と「相棒」を襲ったのは、
ものすごい土砂降りの雨でした。


トンネルに入るまでは曇っていただけだったので、カッパも着てなく、すぐにずぶ濡れになってしまいました。
それでも下手に停まると、後続車に追突されるなどの事故を誘発しかねないので、
2kmほど離れたSAまで雨にたたかれながら走り続け、すぐに屋根の下へ逃げ込んだのでした。

山を挟んで天候がまったく異なっていることを学んだ、20代序盤のころの苦い思い出。


などなど、トンネルの出口は別世界の入口。
思いもよらぬ危険がいっぱい潜んでいることもお忘れなく。