ハイティーンの転身




僕は「49のソコヂカラ」を通じて、バイクのある生活、バイクの楽しさを伝えられればと日々願っている中で、
どうしても受け入れられないバイク乗りがいる。




多くは夜になると活動を開始。
正当な手段で手に入れたとは思えない’70〜’80年代の空冷エンジンの400ccバイク
三段シート直管マフラーなど全面的に違法改造を施し、
特攻服と呼ばれる学ランとニッカポッカを足して2で割ったようなものを着た若者たちが、
ノーヘルで幹線道路を集団で蛇行運転をしたり爆音をとどろかせたりする。




言わずもがな、暴走族のことだ。




僕たちは彼らのことを嘲る意味合いを持つ俗語の「ゾッキー」と呼ぶし、
ネット上ではその時代錯誤な滑稽さから「珍走団」と呼びもする。

たまにK察に追われたヤツらが家の近所の道に逃げ込んでくることがあるけど、爆音とサイレンで大迷惑。寝られへんやろ。



「バイク乗り=暴走族」の図式から離れられない一部の大人たちは、
ややもすると「バイク」というだけでアレルギー反応を起こし、バイクは一律に悪い乗り物と決め付けられることもある。
「警察24時」などの番組で「ゾッキーvs警察」の対決シーンを面白おかしく見せつけられると、バイク乗りとして複雑な気分になりもした。




しかし。
先日、フォークシンガー・さだまさしが視聴者からの投稿はがきを読むTV番組(←※外部リンク)で、
視聴者から、新聞の地方面にこんな記事が載っていたので、是非番組で紹介して欲しい。との便りをもらったと
披露された一本のニュースに、寝ぼけ眼でテレビを観ていた僕は、画面にかぶりついた。



以下に、さだまさしが読み上げた読売新聞の記事全文を載せる。

茨城県大洗町を拠点に活動していた暴走族の解散式が17日、水戸署で行われた。

今後、津波で大きな被害を受けた同町の復興のため、がれきの後かたづけや浜辺の清掃などを行う
ボランティアチームとして再出発する。


解散したのは、同町の高校生など15人で構成された「全日本狂走連盟愚連隊大洗連合ミスティー」
メンバーが入れ替わりながら約30年間、同町や水戸市などで、集団でバイクを乗り回し、爆音を響かせてきた。


解散のきっかけは東日本大震災
避難所などで「敵」と思い込んできた近所の大人や警察官から「飲む水はあるのか」などと気遣われ、
「暴走なんかしている場合じゃない」という気持ちが強くなった
という。
泥まみれになった町役場の清掃に参加するメンバーも現れた。



解散式では、暴走族の少年総長(16)が
「今まで地域の人に迷惑をかけた。今後、暴走行為は行わない」などと宣誓書を読み上げた。
「族旗」も水戸署大洗交番所長に手渡し、同町職員や警察官らから拍手が送られていた。


総長は「これからは同じ境遇の少年たちも巻き込んでボランティアとして頑張りたい」と誓った。





2011(平成23)年3月11日に宮城県沖で起こったマグニチュード9.0の巨大地震と津波により、
東北から北関東の太平洋岸地域に壊滅的な被害を与えた東日本大震災は、
人々から何もかも奪い取るだけではなく、人の心も動かしたのだ。



厳格な縦社会と強い結束で結ばれている16〜18歳(ハイティーン)の彼ら。
たとえこういう状況下であったからにしても、OBたちが培ってきた長年の伝統を捨て「解散」を決断することには
ただならぬ勇気がいっただろうと思う。

だが、さだまさしも言っていたが「確固たる信念を持った少年は強い」のだ。


彼らの暴走という「信念」に注ぎ込まれていたパワーが、
地震・津波・原発のトリプル攻撃に悲観している被災地の方達に「未来」と言うベクトルをもたせてくれると信じている。


そして、復興した暁に、彼らが良きバイク乗りとして復活してくれるのを願ってやまない。


待ってるで。





参考資料:読売新聞Webサイト「Yomiuri Online」 2011年4月18日付