気まぐれなセンターライン




早速ですが、2枚の写真をご覧いただきましょう。

場所は大津市の事実上の玄関口、浜大津の大津港前です。


 

 


え、海ナシ県のシガに何で港があんねん、寝言は寝て言え〜とおっしゃる皆さまは、
琵琶湖様の逆鱗に触れて「ミシガン」や「ビアンカ」、「うみのこ」に轢かれればいいと思います。




えーと、ご覧いただいた2枚×2組は同じ場所の裏表です。
これ、どういうこと?って思いませんか。



実は、大津市の旧国道161号線の大津港〜柳が崎の2.5km区間は、
時間帯によって、中央線が変移(移動)するんです。


(地図中央の赤く塗ったところが当該道路)
(2006年の地図なので、駅名が今と違ったり、今はない施設があるのは気にしないこと)


この区間は道路が上下線合わせて3車線と、ちょっと変わったことになっていまして。



これだと、車線が「↑↑↓」「↑↓↓」になり、なんだか不公平ですよね。

だからといって車線を拡張できる余裕もないので、
時間帯によって進行方向を切り替えて交通の流れを調整しています。

つまり、3車線のうち真ん中の車線は、
時間によって北行きになったり南行きになったりする
んですね。




いま、どこが中央線なのかを確認するには、
道路上にある「中央線」の標識か、車道の白線上のオレンジ色の点滅鋲が目印になります。






途中の交差点から3車線区間に進入する場合は、
左折なら一番手前の車線へ、右折なら一番奥の車線へ行くことがルールとなっています。
いきなり真ん中の車線に入ってはいけない理由が分からない方は、実際にやってみて正面衝突したらいいと思います。




あ、ここは親切な標識出てるなぁ。



ここまで読んできたら、ある疑問がわくと思います。


中央線が切り替わる時、真ん中の車線を走っている車がそれに気づかず正面衝突するのではないか?



その疑問にお答えしましょう。
まず、2車線側の中央線が変移して1車線に切り替わり、真ん中の車線が通行禁止になります。
そして数分後に1車線だった反対方向が2車線に切り替わることで、真ん中の車線で衝突が起こらないようになっています。



要するにこういうこと。

「↑↑↓」 → 「↑×↓」 → (数分間) → 「↑↓↓」

ちゃんと考えてあるんですよ。




こういう限られた道路を有効活用するのは面白い仕組みとは思いますが、
中央線が変移するというイレギュラーな仕組みに慣れてない他府県ナンバーの方にとっては
混乱のもとなんですね。


ここをあんまり走り慣れてない僕も、
真ん中の車線を走っていてホンマに大丈夫なんやろうか。対向車と鉢合わせしないやろうな
と不安になったことがあります。



なので、この仕組みはこのたび廃止されることになりました。


2024(令和6)年1月23日より、中央線が変移しなくなり固定されます。




(c)読売新聞



廃止まであと12日(※コラム公開当時)。周辺道路では電光掲示や看板で啓発をしています。










ちなみに、この区間の北側、柳が崎〜自衛隊北の1kmも中央線が変移する3車線道路でしたが、
これに先立って2016(平成28)年に廃止されています。



↓その当時の記事



(c)産経新聞



こういう中央線を変移させる規制は、かつて京都市内にもあり、
山科区の日ノ岡〜東山区の蹴上(けあげ)の区間が同様に
上下線3車線の道路が時間帯によって中央線が変移していました。




が、道路と並行していた京阪京津線が地下鉄開業とともに地下化し(1997(平成9)年10月)
線路が撤去されたことで道路が拡張され4車線化(上下線各2車線)されたのに合わせて廃止されています。


そういうわけで、車線が変移するのは時代の波に飲み込まれ、なくなっていくのです。


このコラムをリアルタイムで読んでるそこのキミ!今すぐ大津へ行って変移する車線を堪能したまえ!
そして、リアルタイムで読まなかったそこのキミ!貴重な体験を逃して悔しがるがいい!!




記事引用:
産経新聞 2015年12月28日付配信記事
読売新聞 2023年10月7日付配信記事