Mr.Bikeの35年




そのうわさを知り、居ても立ってもいられず本屋に走り、最後の1冊を手に入れました。





1976(昭和51)年から発行され続けてきたバイク雑誌の老舗の一、
「Mr.Bike」(モーターマガジン社)が休刊するのです。



「休刊」と書くとまたいつか復活しそうなイメージがありますが、実質的な廃刊です。



どうして「休刊」と書くのかは、いわば出版業界のお約束のようなものらしいのですが、
もう少し掘り下げて書いてみると、
書籍にはISBNという世界共通の書籍コードが割り当てられていて、そのコードは唯一無二のものです。
(ちなみにニポンの雑誌には「雑誌コード」という別の番号が付与されています)

そのためたとえ廃刊となっても、そのコード番号は永久に生き続けるため、コード番号上「廃止」という概念が存在しないので、
「その書籍の発行は休止」扱いになるんだと聞いたことがあります。




それはさておき、バイク界を支えてきたバイク雑誌が消えるとなると尋常ではありません。



初心者向けから流行の先取り、特定のカテゴリに特化するなど多数あるバイク雑誌の中において
「Mr.Bike」はバイク界における光と闇を鋭い視点で切る唯一の社会派的存在
特に交通行政に対しての発言の強さでは右に出るものなどありませんでした。

若かりし僕が本屋で初めて「Mr.Bike」を手に取ったときの感想も

なんと固い雑誌なんや

でした。



だから、内容については好き嫌いがハッキリ分かれる一冊だと思いますが、僕は好きでした。


やたら多いコラムといい、留守電に吹き込まれた読者の独り言を活字にすることといい、
無駄な努力に全力を注ぐところといい…、

読者との距離がもっとも近かった。



僕が初めて手に取ってから15年余り、どの発売号を手に取っても、一貫してそのスタイルを通していた

「Mr.Bike」の作り手らの、バイク乗りの、バイク社会の未来を真に願っている
バイク乗りの息づかい
が聞こえました。

でも、そういう硬派なのって、ゆるゆるで個人主義が蔓延する今の社会では受け入れられないのでしょうね。
そのあたりが休刊に追い込まれた原因なのかなぁと勝手に思っています。




バイクの販売台数が年々減少し、
情報はインターネットでちょっと検索すれば手に入るのが当たり前の現状。

さらに、タブレット端末等で読むデジタル書籍の台頭に、
紙媒体の既存のバイク雑誌界はどう対処しているのでしょう。


本屋でいろいろ立ち読みしたり図書館でバックナンバーを借りたりしてますが、どの雑誌もマンネリ化を感じます。
お金を出してまで所有したいバイク雑誌がほとんど無い。
エラそうなことを書くことを許してください。でも僕の純な思いは書かなきゃ伝わらない。




思うんですけど、いま流行のデジタルメディアで書籍を読むスタイルの根底は、
「本は欲しくないけど、とりあえず読んでみたい」方にはピッタリでしょうよ。



ま、個人的にはデジタル書籍はどうも受け入れられないんですけどね。
かさ張らなくていいとか、安くつくとかのメリットはありますが、所詮画面の広さが世界の総てじゃないか。
たとえ、そのデジタル書籍が何MBとか何GBとかの大容量を誇っても、それは形を持たない空虚なもの。

書籍にはその厚み、ページ数分の世界がある。
その辺をより生かした雑誌作りをして欲しいなぁと願っています。



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さて、僕は先ほど買ってきた最終号となる「Mr.Bike」2010年7月号、まだページを開いていません。
このコラムを書き終わったらノートパソコンを片付けて、寝床で読みふけろうかな〜と
楽しみに取ってあるんです。

35年の歴史は いかばかりか。



それじゃ、ここいらで僕の今回のコラムはおしまい。待ちきれなくなってきたもんで(笑)。