峠のレコード盤



バイクでどういった場所・道を走るのが好きですか?


僕だったら、あまり人の来ない、ひなびた田舎道をとことこ走るのが滅法好きですね。
過去には、オフロードバイクで林道アタックをして泥まみれになったのも印象深いです。


皆さんそれぞれに思い出のある道や、お気に入りの道があることでしょう。



その定番として、峠道を取り上げてみます。
いわゆるワインディングロード。
コーナーからコーナーを攻めて駆けぬける喜びは バイクの大きな醍醐味ではないでしょうか。


この一文を書きながら思い浮かんだワインディングロードは、京都市〜福井県小浜市をつなぐR162、通称、周山街道
京都のバイク乗りなら必ずといっていいほど訪れる「良い道」です。

最近ではファミリーカーが走りやすいように直線化が進んでいますが、
新たな道路建設は自然な風景を台無しにしていますし…、
運転者のスキルを落とさないためにも、あえて難易度の高い道を残しておくのも大事ではないかと(苦しい言い訳)。



そういう峠道は、往々にして「攻めて駆けぬける喜び」を生き甲斐にしている人種が集います。
いわゆる「走り屋」と呼ばれる方々です。


いかに速く走るかを競うべく、コーナーではバイクではハングオン、車ではドリフトなどをし、
峠はたくさんの走り屋で賑わいます。



ただ、ここはみんなの道路、公道です。
それを一部の愛好家が占領していいはずがありません。
それに、近くに住宅などがある場所では騒音公害や、一部のマナーの悪い人たちによるゴミのポイ捨て
走り屋を見に来る「ギャラリー」が深夜まで大騒ぎして社会問題となることもあります。



その典型例が、京都市と大津市を結ぶ府道・県道30号線
通称「山中越え」です。




抜け道として地元では有名なこの道は、大津市側の急な坂と深いカーブに特徴があります。
僕が10代の終盤のころの絶頂期の週末の夜ともなると、おびただしい数の走り屋が集結
バイクや車がサーキットと見紛うくらいに走りまくり、
そのうえに興奮したギャラリーで異様な盛り上がりを見せていました。

山中越は京滋(けいじ)地域の走り屋の聖地的な位置づけですからね。
しかし、近くには比叡平という住宅地があり、一般車がまともに通行できないなど苦情が絶えなかったようです。



それをK察が黙っているはずがなく、取締りに来たときだけ走り屋たちは雲の子を散らすように逃げ去りますが、
K察が去ると、どこからともなく舞い戻ってきてサーキットの復活…と いたちごっこでした。



そこで、走り屋の好き勝手に絶っっっっ対させへんど!!と、K察は対策を講じました。

道路に細工を施したのです。

ひとつめは、キャッツアイ

車線の上下線を隔てるもので、
道路全体を使ってのコーナリングやドリフトなどの 派手なパフォーマンスを
させないためのものです。

キャッツアイを踏むとタイヤがバースト(破裂)しますし、
偏平率の高いタイヤを履いていると、タイヤの厚みが無いため、
ホイールまで傷めてしまう結果に。



ふたつめは、特大減速帯

道路に凸凹をつけることで、走り味(?)を悪くし、
速度を出させなくするためのものです。

走り屋の車は、コーナリング重視をするため、
車高を落とすのがチューニングの定番なんですね。

そんな車でガタガタ道を走るとサスペンションがイカれるので敬遠される、と。
そして、みっつめに、タイトルに書きました レコード盤、です。

ドリフトは、後輪をロックさせ、道路との摩擦で後輪を滑らせ
コーナーを曲がるテクニックのことです。
彼らに走らせないためには、どうすればいいか。

簡単です。路面と平行に細かい溝を刻み、摩擦力を生み出さないようにすれば
いいんです。
正式には「グレーチング」と言うそうですが、
さもレコードのように見えることからそう呼ばれています。



ところで、レコードって知ってます?

   現在の音楽メディアの主流であるCDの前身にあたり、
   音を黒く大きな円盤に記録してあるものです。

   サイズにより、LP盤やEP盤、SP盤などがあり、LP盤は直径30cm
   記録時間は両面で最高1時間程度。

   音そのものをダイレクトに刻み込むので「アナログ盤」とも呼ばれ、
   人間の耳に聞こえない高周波の音も記録され、それが音にまろやかを与え、
   今でも人気があります。

   それに比べると、CDは耳に聞こえる音だけしか記録できないので、
   音がとがった感じになるんですね。



↑LP盤レコード(左)と、CD(右)





上記3つにプラス、一番注目を浴びる180度ヘアピンのギャラリーコーナー直前(京都方面)に、
最強(当時)といわれる「LHシステム」というオービスを設置。
制限速度(30km/h)プラス20kmくらいで記念撮影され、即時に警察本部に電送される…らしいです。



これで完全完璧。走り屋は壊滅。峠に平和が訪れました。



しかし、これで終わりではないのです。
これらの対策をなされても普通の車なら、ほとんど違和感なく走れるがな。
逆に迷惑をこうむる乗り物があるのです。



幅の狭い道なので、バイクでうっかり道の中央によってしまうと、キャッツアイを踏んで転倒します。

車体を倒して曲がるバイクは、カーブに設けられた特大減速帯でのコーナリング中に
凹凸でがたがたしてバランスを崩し
てしまいます。
バイクレコード盤の溝にそって走らないと、
ハンドルを取られ
ます。

路面との接地面積が小さいバイクは、
路面との摩擦力も奪われるので、コーナリングが不安定
になり、
さもするとスリップダウンに繋がりそうです。


レコード盤の溝の深さを50円玉で測定。なかなか深いよ→



レコード盤は「雨天時の水はけを良くし、スリップ防止のため」との大義名分もありますが、それは車に対しての話。



僕はここを何度もバイクで走って慣れているけど、それでもシャレ抜きで怖いよ、ドキドキするもん。



スピードを十分すぎるほどに殺して走ればエエがな、とおっしゃる皆さん。
アナタはバイクを分かってない。

遅すぎる速度は車体のバランスを崩しやすいのんですよ。
いわゆる「遅乗り」は、速く走ることより格段に難しいのやから。
駅伝やマラソンの先導をしてる白バイの方。あれ、難なくやってるように見えますが、きわめて高いスキルが要求されます。



さらに車体の軽く、タイヤの細い自転車だと
注意を十分すぎるほど払っていてもハンドルを取られてコケるど。
それに、下り坂側の道路の端っこの側溝にはフタがしてないから、ちょっとしたミスで側溝にハマって大怪我を負う危険性もある。



バイクと自転車。施された走り屋対策は二輪車にばかり牙を剥くのです。

一般道やのに、どうしてハイレベルな走りをさせられる必要があるのん?
道路は共有財産なのに、どうしてバイク・自転車いじめをすんのん?
ってか、そんなこと考えてないんでしょうよ。走り屋対策を発案した人は。


仮にバイクがこれらのトラップで事故って死者が出ようが、「ライダーの不注意」で済まされそうです。
ホンマ、ムカつきます。



山中越を通行される二輪車の皆さん、峠からの湖国の風景に気をとられてトラップにかからないよう、
神経を尖らせて走ってくださいよ!!(出来れば通らないほうがいいよ!)