夜明けに向かって走れ




突然バイクで走りたくなった!


そんな気が起こったこと、ありませんか。




僕、仕事で疲れ果てる毎日を過ごし、
明日はお休み…の夕方の帰り道に、無性にバイクで走りに行きたくなったんです。

明日ツーリングに行こう。いや、朝まで待てない。そうや、今から走りに行こう!


身支度を済ませ、バイクにまたがり京都を出発したのは、夜半が近い、23時20分でした。



20代のころ、深夜にバイクでよく走ったものでした。



昼間とは全く異なる世界が広がる夜、漆黒の中をライトの光を頼りに走る…。

こう書くとボーソー族のように聞こえます(笑)が、違いますよ〜。
純粋に夜のツーリング、ナイトランです。
まぁ、奴らが夜な夜な出没するのと、根本は同じかもしれませんが(苦笑)。




目的地は決めてました。
滋賀県の湖西・R161北上し、福井県敦賀市からR8を東へ
ルートが直線的でかつ道が十分に整備されていて走りやすく、信号が少ないことも理由のひとつ。




ナイトランの魅力は、
どこもかしこも空いていて、下道でもストレスなく非常にハイペースで走れることに尽きます。



そして、全てが黒く染まっているので、
経験したことがないと、怖いとか、景色が見えなくてつまらない…などの先入観を持つかもしれません。
ですが、余計なものが見えないことで逆に恐怖心がかき消され、走りに集中できるんですよ。



昼間の下道ツーリングだと、平均時速が30km程度でも珍しくないのに対して、
この時はバイパス道路だったことも加算され、それが60km近くに達していました。


おかげで、京都〜敦賀間の80kmあまりを1時間20分で走りぬくことに。
この区間の走行のベストタイムです(笑)。

ちなみに、進行方向右手にずっと琵琶湖があったはずですが、全く見えませんでした(笑)。




乗用車と出合うことはほぼ無く、すれ違うのは長距離の大型トラックばかり。
同じ方向に向かう大型トラックもペースが十分に早いですので、お互いの走行を妨害することもありません。
むしろ僕が煽られてましたわ orz 僕の通常の下道走行は遅いってことですね(悲)。




漆黒を切り裂き走り続け、滋賀県から福井県へと入ります。
敦賀〜武生間の海に面した断崖絶壁にへばりつくようにして造られた、急カーブと隧道だらけのR8を走り、
26時越前海岸を見下ろす道の駅で小休止



この時間だと誰もいないやろな〜と思ったんですが、
暗がりの駐車場には仮眠中の車や大型トラックが意外と多く停まっています。

店は開いてなくてもトイレと自販機は使えますので、ナイトランの休憩ポイントにはうってつけです。

そりゃ、コンビニだと食べ物の買い出しも出来ますけど、
店先に深夜特有のややこしい人種がタムロしてることもありますし、あまり長時間駐車するのも気が引けるので遠慮してるんです。




で、眼前には荒々しくも美しい日本海が視界いっぱいに広がっているはずなのですが、
やはり全く見えません(笑)。

お天気が良ければ星空が美しく見えそうなのに、雲が出ているため、それも見えず。
代わりに、はるか沖合に漁火が。







写真左側には水平線に一列に並んだ漁火と、右側の漁火は相当に明るく、雲に光が反射して、空が薄明るくなっていました。
これほどの光で魚やイカたちを昼と勘違いさせ、漁をするんですね。
漆黒の海に輝く幻想的な光景を独り占めできるのは、ナイトランさまさまです。




福井県内のR8を東へ。
丑三つ時くらいには眠くなってくるかなと思ったのですが、
ハイペースな上にずっと暗闇の中という非日常にテンションが高く、逆に目が冴えてイケイケ状態に。
片側2車線のバイパスで大型トラックたちと抜きつ抜かれつのバトルを繰り広げてました(笑)。
深夜だけあって街明かりも少なく、距離感も時間の感覚もよく分からなくなってしまいましたね(汗)。




27時半。東西に長い福井県に別れを告げ、石川県に入ります。
この日は夏至の前日。この時間になると、それまで黒一色だった空の縁が濃紺に変わり始めました。



夜の支配が解け始めたのです。



28時になると、東の空に一筋の光が。そのときに、空が一面の曇天だったことを初めて知りました。






漆黒は重たい雲の存在すらも隠してしまっていた
のです。
そりゃ、晴れの予報やのに途中で突然雨が降ってきて驚くわけやわ。







そして徐々に空が明るくなるころ、金沢を通過。







ここでR8に別れを告げ、能登半島への無料自動車道「のと里山海道」へ。

29時になろうかというころ、東の空の雲の隙間から太陽が顔を出しました。




ナイトランのクライマックスが、ここに。




この瞬間のために、僕は、世界の半分を覆う「闇の世界」を駆け続けたんです。

それも、東の空を拝めるように、東へと向かって。


陽炎を伴いながら昇る朝陽。それを全身で受け止め、高揚が止まりません!




しばらく走り、目的地に到着。





夏至の前日なのに、この影の長さが、陽がまだ低いことを表してくれています。



約5時間の下道走行で268km

僕でもこれだけ走れたのは、ナイトランのなせる業です。



現地滞在わずか20分で帰路に就きます。
もっと遊びたいところですが僕の一日はまだ始まっていません。帰ってから日中はいろいろと用事が待っているのです。それもナイトランのいいところ。




下道を朝陽を背に受けながら走りたいところでしたが、時間節約のため金沢から敦賀まで北陸道を走り、
途中のサービスエリア(SA)で朝ご飯…と思ったら、
朝6時台ではまだ店が開いてないハプニング orz

これはナイトランの弊害ですね。

7時台に入った次のSAは営業していて、燃費の悪い僕の餓死は逃れられました(笑)。




敦賀から先、京都までは来た道と同じく滋賀県内の湖西側、R161を走ります。


9時台にR161を南下していると、たくさんのツーリングライダーとすれ違い、何度もピースサインを交わしました。

ツーリングが始まったばかりの彼らは、
まさか対向の僕がツーリング終盤だとは微塵も思わなかったことでしょう(笑)。





10時半に帰宅。走行距離535km。

久々の徹夜を完遂し、一日分を走り切った僕は、次の現実的な一日に向けて重たい目をこすりながら動き出したのでした…。




あ、ナイトランって、写真を撮っても全然画にならないですね(笑)。