タダほど高い大根の小噺 





僕のHPで紹介する京都ネタでは、観光地・名所については基本的に取り上げないことにしています。

そういうものは、他のHPやガイドブックなどでも飽きるほど載っていますし、
更に僕がわざわざ取材して書くことなどなかろうと思うからです。



ですが、今回は京都観光では定番中の定番の寺を 僕のヒネクレた視点からご紹介します(笑)。
体張って取材してきたんで、最後まで読んでね♪



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京都の冬の風物詩として千本釈迦堂(※国宝/上京区五辻通七本松東入ル)の
「大根だき」というのを聞いたことはありませんか。

発音は「だいこだき」ではなく「だいこだき」と言います。



毎年12月7・8日に行われる行事で、このときに炊かれる大根を食べて無病息災を願うというもの。

大根2切れとおあげさん(京言葉で「あぶらあげ」の意)が入った「簡易版おでん」状のものを1000円で販売…
じゃない、1000円を供養料として納めていただくものです。


ちなみに大根は京都の農家から提供されたものを使用。大根を炊くのは信者達
つまり、ほとんど経費のかかっていないものを、すごい高値で売りつけているというわけです。
エラいアコギな商売してくれるやん。




千本釈迦堂の大根だきを食べてみたいと思いつつも、仕事を休んでまでして行くものでもないし、
かといって週末だと大根を求めて来る多数の参拝者と争奪戦になるのは目に見えているし…。



そういうわけでこの歳になっても食べに行けてないのですが、
先日TVのニュース番組の中で、京都の他の寺でも大根だきをやっていると知りました。
どうやら客寄せにあちこちの寺でマネをしているようなのです。

なかでも無料で大根だきを振る舞う太っ腹なところもあるとアナウンサーが喋っているではないか。



金を払わずして大根だきにありつける!タダ飯万歳!!とばかりに、自転車をキコキコ漕いで行ってきました。
この歳になっても卑しさだけは全開です(笑)。




その場所とは、京都盆地からR367を滋賀県方面へと向かった先、
左京区大原にある三千院というところ。天台宗の寺です。


国宝や重要文化財がゴッソリとある、京都を代表する寺のひとつです。
JR東海の「そうだ、京都行こう」のCMで有名になった寺…と言えばわかるかな?




京都市がある京都盆地は東西8km、南北10km程度と小ぢんまりしているため、
観光地の大半が自転車で移動できる範囲内にあります。

大原の三千院は盆地から少々離れた山間部にあるとはいえ、距離は知れてるやろう。
そのノリでペダルを踏み込みました。



2011(平成23)年2月13日(日)。
家を出たときは冬晴れで気温5℃。汗かきの僕にはちょうどいい気候でした。


僕の住んでいる京都市の東の端っこ、山科区の自宅から九条山を越え、京都盆地の北東端である花園橋まで10km程。


まぁここまでは何度も自転車で走っているので余裕シャクシャクでしたが、
花園橋から鯖街道と呼ばれるR367で京都盆地を脱出すると風景が一転、比叡山のふもと、やや深い谷底道へと変化します。


仕事で大原界隈は何度も行ったけど、こんなにだらだらと上り坂続いたっけ?
それに、こんなに遠かったっけ?はぁはぁ(息)、キコキコ(漕)。

車やバイクで走るのと自転車で走るのとでは、道の感覚ってこんなにも違うものなのか〜(苦)。



だんだん寒くなってきたで〜雪が舞い始めたで〜、昼間なのに気温が2℃しかないで〜!
路面は濡れていて泥除けのない自転車なので、泥を跳ね上げジャケットや自転車が汚れてきます。


人なんか歩いてないし、ロードレーサーの自転車コンビには置いていかれるし、車もたまにしか通らないし。



寒い〜心細い〜お腹すいた〜(涙)。



などと独りブツブツ文句を垂れながら走り続け、土井志ば漬(※外部リンク)の店舗が見えると大原。
観光シーズンの大原なら活気があるのに、真冬の大原なんか陰気のドン底
潰れたJOMO(現エネオス)のガソリンスタンドが寂しさを引き立ててくれますorz



R367をそれてから1kmで三千院ですが、最後になかなか急な坂道が。
心臓パワー全開で一気に漕いで上り、御殿門前に着きました。



真冬の格好をし、ぜーはーぜーはーと乱れた呼吸に汗をぶりぶりとかいている姿は、
そぞろ歩く観光客らの不審な視線を買っていますorz

片道20km、所要時間は1時間半でした。
なお、自宅から京都盆地を横断した西の端、嵐山まで自転車で1時間強なので、大原がいかに遠いかが分かります。



ま、これだけ頑張ったのだから大根だきも よりおいしく感じるに違いない!



で、タダ大根はどこにあるのん?
汗をぬぐいながらキョロキョロと周囲を見渡すと、三千院の境内で行われているらしいと分かりました。

じゃぁまぁ、中に入るか。
自転車を御殿門近くに停め、ツカツカと入ろうとしたところで、
僕の目がある一点に釘付けに。その瞬間に全てを悟ったのです。





拝観料700円→  





千本釈迦堂を始めとする大根だきが有料の社寺は、境内に自由に出入り出来るのに対して、
ここ三千院は入場料と言う名目で 大根を食べようが食べまいが、問答無用で金を取られるのです。


「無料」に目も心も奪われ、落とし穴に見事にハマった己の能天気さに自分自身をシバキたくなりました。
これって詐欺とかに簡単に引っかかる典型例やんorz


ここまで自転車で来たのに大根を目前にして700円をケチって引きかえすなどというのは大人げないがな。
しぶしぶ拝観料を払い、中に入りました。




靴を脱いで入ったところは重厚な造りの客殿

境内は雪がうっすらと積もり、

客殿から見える池泉鑑賞式庭園(ちせんかんしょうしきていえん)である
聚碧園(しゅうへきえん)は荘厳な雰囲気を漂わせています。




狭い庭に見えますが、そう見えるのは僕の写真の腕の問題で、実際にはそこそこ広いんです。




なんとここでも数珠やお札、お守りなどのオミヤゲを売っています

京都の有名どころの社寺仏閣は ほぼ例外なく高額な拝観料を取り、中でもグッズを売ったりするなど、
ひたすら観光客にカネを落とさせる戦法を取っています。

なので、メジャーな寺めぐりなどしてるとカネが幾らあっても足らんというのは有名な話。




それはいいとして、

ここまでで大根のダの字すらありません。
大根さま〜隠れてないで出ておいで〜〜♪



「順路」の文字に従い、再び外へ。往生極楽院も見事な雪化粧。
靴を履き、境内の石段を上ると、ようやく大根だきの「のぼり」を見つけました。
石段を登りきった先に金色不動堂(こんじきふどうどう)が現れ、
その前のちょっと広くなったところで、発見!
お目当ての「大根だき接待処」がありました。




テントの下で信者さんやお坊さんら三千院関係者が大きな鍋で大根をぐつぐつと炊いています。
その隣の長いす席では、大勢の拝観者が大根をハフハフといただいてます。



うまそう!!
あふれ出るヨダレを飲み込み、次々とお椀によそわれて出てくる大根を僕も獲得!


…したのは、随分大ぶりなお椀とは対照的に直径5cmほどの小ぶりの大根が一切れ

ここまで自転車漕いで来たのに、これはないで〜(`ω´*) という表情とメタボな体をゆすると、
大根担当のオバチャンが「やっぱり大きいのがいいですよねぇ」と交換してくれました。
たまにはデカい図体も役に立つではないか(笑)。


果たしてチェンジされて出てきたのは、それはそれは大きな、直径10cmはあろうかという太い大根です。
しっかりと炊き込まれ、あめ色になった大根からは出汁(だし)の利いたいい香りが鼻腔をくすぐり、
空腹感が最高潮に達します。







大根大好き♪ では、いただきます!!  







幾らなんでも大きいまま丸かじりは行儀が悪いので、お箸で大根を小さく切り分けようとしますが、
とろとろになるまで炊かれているはずなのに、箸が思うように入りません。
妙に手応えあるんですけど。


お箸が折れそうなほど指に力を入れて大根を切り分け、アツアツを口に運びます。


この瞬間のために自転車をいっぱい漕いで来たんや。ああ、おれシアワセ♪♪


パクッ




ん?
この大根は、期待していた トロけるような大根じゃない!



大根の断面を見ると、太い「すじ」が無数に入っています。
おかげで口の中がモソモソして食感がかなり悪く、見た目と違って味は…お世辞込みで、今ひとつ。


食べきるのですら必死の状況。
溢れんばかりだった食欲は全く無くなり、ガマン大会闇鍋の様相に。


今時格安スーパーでも売ってへんやろうグレードの低い大根、どこで手に入れてきたんや?!
もしかして三千院の家庭菜園で取れた自家製大根やろか?



こんなことなら欲張って大きな大根を要求するんじゃなかった〜(ノД`)シクシク

だからと言って残すわけにもいかず、
あわよくばお代わりをねだろうと企んでいた大根大食い選手権計画は実行に移す以前に崩壊しました orz




教訓 :「大根だき」に屋台のおでんレベルのものを期待してはいけない。
教訓2:ことわざは正しかった。




その帰り道は、行きの道をたどればオール下り坂で楽チンだったのですが、
同じところを走るのはツマランと、わざわざ遠回りして別の峠道にアタックし、己のスタミナの無さを嫌というほど感じさせられましたとさ。

orz