稲荷山モグラウォーカー



トンネルの中に入ると、それまでの風景が一変し、異次元に吸い込まれたような、不思議な感覚にとらわれます。

阪神高速8号京都線、通称:京都高速。
その一部の、山科盆地〜京都盆地を一直線に結ぶ
「稲荷山トンネル」(長さ2537m)が2008(平成20)年6月1日17時に開通し、
それに先立ち、市民を対象にトンネルウォークが開催されました。




まー、僕個人としては、古都・京都に都市高速は似合わないと思っていますし、
渋滞解消を目的にしながら、一般道として整備せず、都市高速にしている点も納得がいかない。

距離が短いのに通行料金が450円と、時間を金で買うにしてもボッタクリなので、車などで通ることもあるかどうか…。
ETC利用者だけ大幅割引で最安250円とかの差別待遇も気に食わない。


計画時期も20年以上も前と、もはや過去の遺物。



ですが、意義はとにかく、普通は歩けないところをタダで歩かせてくれるのですから、行っておくべきでしょう。
コレを逃したら、ここは生涯歩けないのですから。
で、母親と2人で歩いてきました。
 どーして母親とデートしなくてはいけないのかorz



6月1日は、初夏というより真夏を思わせる蒸し暑い朝でした。



稲荷山トンネルの山科側入口には、老若男女、家族連れにカップル、その他いろいろ入り乱れて混雑し、
トンネルウォーク開始を今か今かと待ちわびていました。
僕たちだけではなく、ミーハーな連中は多いんやね(笑)。

10時開始と聞かされていましたが、10時になっても一向にスタートしません。
どうやら、最前列で記念セレモニーを行っているようなのですが、
上り坂でなおかつ後ろのほうに並んでいる僕たちには、何も見えません(涙)。
誰かよく分からない人のアイサツがあったり、地元中学校のブラスバンド部の演奏があったり、
風船飛ばしがあったり……いつまでたっても歩かせてくれず、
気温も高く人ごみの中でずっと棒立ちで、気分が悪くなってきました。

近くにいる幼い子どもたちがグズり始めています。
僕だってグズりたいわ(涙)。




「こんなに暑いのにいつまで待たせるんや!」の怒号まで飛び出す始末。
大の大人の僕でも熱中症になるんじゃないかというほどの熱気。焦らすにもほどがあるわ!


しかし、セレモニーは粛々と行われ、10時20分、やっとお待ちかねのトンネルウォーク開始です。


我先に中に突入しようとするのを防ぐためか、
先ほどのブラスバンドのマーチングを先頭に、ぞろぞろとゆっくり中へと吸い込まれていきます。
片側2車線の道路トンネルの真ん中を堂々と歩くのは初の経験ですので、
なかなかコーフン。

天井がとても高いことに驚かされます。

ブラバンの演奏にエコーが効いて上手に聞こえます(笑)。
トンネルでコンサートをしたら音響効果が抜群そうやね。
お約束で記念撮影(笑)→


外はあれだけ暑かったのにトンネル内はひんやりしています。
日も当たらないから当たり前ですけど。
体を伝っていた汗も次第に引き、快適なウォーキングを楽しみます。



途中には物産展やアンケートコーナーなどがあります。
阪神高速のパトロールカーに体験乗車もあり、子どもたちがサイレンを鳴らしてみて喜んでいましたが、
それ以外は、基本的にただ歩くだけです。


広報外の トンネルウォーカー限定サプライズなども ありません(笑)。


母親とのデートにおいて、特にこの場で話しておくことなど何もないし。

なおのこと、出口を目指して歩くだけです。



外の風景や状態も時の流れも何も分からない、無機質な空間を、テクテクテクテク、テクテクテクテク……。
長い長い地中のトンネルでほとんどを過ごすモグラって、こんな気持ちなんやろか(笑)。

距離表示がないので、今いる場所が何km地点なのかも分かりません。


スタンプラリーにしたら、ただ歩くだけのイベントがより盛り上がるのに。


中間点のかなり手前で、反対の京都盆地側から入場してきた参加者とすれ違い始めます。
どうしてこんなに手前ですれ違い始めるの?
京都盆地側のセレモニーは短かかったんかな。


トンネルはほぼ一直線で、制限速度は60km/h。
山科側はトンネルを出たところが高速の終点で、すぐに信号がありますので、オーバースピード防止のため、トンネルの壁には
速度を徐々に落とすように錯覚を起こさせるペイント
がなされています。

↑左の写真から順番にペイントが変化してきます。あ、僕たちは一方通行のトンネルの出口側から歩いていますので、
ペイントの方向も逆向きね(笑)。
本来は「:││》≫」と変化してきます。


開通後、話のタネに車で通ってみましたが、トンネルの幅の割にペイントの幅が狭いので、全然錯覚が起こりませんでした。
これ、新聞にも取り上げられたのに失敗やったね(笑)。


しかし、非日常的な状況下に長い時間おかれると
あらゆる感覚が狂ってきちゃいます
ね。


人間は日の光を浴びて活動しなくてはいけない生き物なんだと感じさせられます。
遠くに京都盆地側のトンネル出口(本来の入口)が見えてきました。
モグラ気分も終了が近づいています。
山科側入口はU字型だったのに、こちらは口の字型です。

出口を抜け時計を見てみると、40分が経っていました。
トンネルを出ると、そこは河原町通と師団街道の間の十条通でした。

山科盆地〜京都盆地間の どの一般道ルートをたどろうが、必ず山越えがあるのに、
平坦な道で歩いて稲荷山を越えてきたのが
ワープしたみたいで信じられません。
で、京都盆地に出てきたのはいいけれど、ここから山科へはどうやって帰ればいいのか?

少し考えた結果、トンネルを戻るのがベストに思えました。が、
またあの殺風景をだらだら歩くのはヤなので、歩いて京都駅まで行くことにしました。
トンネルウォークで十分歩いたのに、また炎天下を30分も歩かされ、今度は汗まみれに(涙)。



逆の京都盆地→山科側に出た人も、
最寄りの地下鉄椥辻駅まで1キロ半ほどをゾロゾロ歩いたんやろうなぁ。




トンネルウォーク参加者は、9000人だったと新聞に書いてありました。
ローカルイベントにしては盛況だったようで。


そして僕たちが歩いた数時間後の17時に、一般車両の通行が始まりました。
それを見学に行った母親によると、山科側の先頭車両は軽トラで、京都盆地側の先頭車両はベンツだったとか。
Kトラって…山科の程度が分かるがなorz


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開通2ヵ月後の統計では、稲荷山トンネルの通行量は、当初予想の2割だそうです。
たったの2割。


原因は、もう分かっていますよね?
僕は大金450円も払って2回も通りましたが、前も後ろも1台も車が走っていませんでした。
ここまで閑古鳥が鳴いてる有料道路も珍しいわ(皮肉)。

歩行者や自転車を通行可にしてくれるなら 何度でも通ってあげるで(笑)。