スズキの逆襲
デフレの波が、バイクにまで及び、値段の安い原チャが街を闊歩する時代になりました。
詳細はデフレバイクの項目を読んで学習してもらうことにして、その続きの話を書きたいと思います。
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ホンダの94800円の原チャ「Today」の前に、惜しくも価格競争に敗れた、バイクメーカー・スズキ。
苦汁をなめさせられたスズキは、起死回生を狙って、
今年(2003年)2月11日に「打倒ホンダ」を掲げた原チャを世に放ちました。
その名も、「チョイノリ」、59800円! ほとんどバイクの叩き売り状態!!
「排気量1cc当たり1000円」を目指して開発しただけあって、限りなく近い数字が出ていますね。
それも、コストの安い中国で生産し 輸入するという、こざかしい手段で低価格を実現したホンダと違い、
スズキは意地でも国内生産にこだわっての、この値段!
ネーミングもナイス!
名前のとおり、用途を「通勤や通学、買い物など近距離の移動」に絞り込んで設計。
軽量化、合理化、低コスト化、高品質を実現した、と、あります。
エンジンは新開発の4サイクル50ccを搭載、従来の4サイクルエンジンより4割の軽量化。 エンジン出力は2馬力。燃費はリッター76kmの超エコノミー! 外装は、プラスチックに色を塗るのではなく、初めから色のついているプラスチックを使用。 部品点数、3割削減(※)。ボルト・ナット類の締め付け箇所を約5割削減(※)。 結果、車両重量を4割も削減し(※)、乾燥重量、たったの39kg! (※同社「レッツ2」との比較) 車重が軽いので、エンジンの負荷が少なくなり、触媒無しでも排気ガス基準をクリア(!)し、触媒分のコストと重量も削減。 |
本当に、徹底的。ホンダを目の敵にしてるのが丸分かりで面白い。
では、見てみましょう。
来い!「チョイノリ」!!
…あの〜、どこかで見たことのあるカタチなんですけど…。
あ、電動キックボードを大きくしたのと 同じようなフォルム。
でも、これはれっきとした原付。公道を堂々と走れます。
余計なものを全て排除した、って感じですね。
・メットイン無し。 ・バッテリーを積んでいないのでセルモーター無し、キックスタートのみ。 ・オドメーター(積算計)も無し。 ・各種インジケーターもほとんど無し。 ・燃料計無し、かわりに燃料コックを装備。 ・燃料タンクは僅か3リッター! ・ヘッドライトはロービームのみ! ・後輪の懸架はリジット(自転車と同じ)! ・バックミラーが右側にしか付いてない!! |
ここまでやっちゃって、いいもんなんでしょうか……。
ちなみに、最高速は控えめで、40km/h余りだそうで、K察にナンパされる確率がグンと低そうです(笑)。
しいて不満を言うなら、ヘルメットをかけておく場所がないことかな。
この文章を打っている現在は、まだ発売されていないので、これ以上のインプレは出来ませんが、
常識を打ち破った「チョイノリ」、案外ブレイクすると思います。
なぜ、そこまで言い切れるか。
それは、1987年に世に出て、当時「使い捨てカメラ」と呼ばれた「写ルンです」が証明しています。
これも、正式名称は「カメラ」ではなくて「レンズ付きフィルム」なんです。
ゴチャゴチャしたメカニズムを一切廃してシンプルに徹し、手軽に購入できて、簡単に撮影できるそれは、24枚撮りで当時1380円。
爆発的に売れ、写真撮影シーンを変えた経緯があります。
「チョイノリ」も、その流れを汲んでいると思います。
僕は、スズキの血のにじむような努力とコダワリに すっかりホダされ、ホンダ党をやめちゃおうかな…と思ったくらいです。
ホンダも2003年中に、今リリースしてる94800円の「Today」より更に安いバイクを販売するとも言っていて、
どこまでバイクの低価格競争は続くのか……、傍で見て応援してます。
やりすぎて共倒れは無しね(笑)。
注:このコラムを書いた時点では、チョイノリは貧相な仕様のみでしたが、
後に、積算距離計(オドメーター)、前カゴ、セルスターター、ヘルメットホルダーなどが付いたチョイノリが発売されています。
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発売以来、快進撃を続けていたチョイノリですが、ここにきて失速してきています。
発売当初、月間目標2000台に対し、大幅に上回るペースで売れ、
2003年上半期で4万1000台販売の大ヒットとなりました。
発売当初の顧客のうち、自転車からの乗り換えを含むバイクに縁がなかった方が4割もいました。
チョイノリは「バイク」と言う垣根を取り払うのに成功したといえます。
が、2003年下半期の販売台数は1万1000台。2004年上半期は1万台強と激減。
「安さだけでは物足りないということか」(他メーカー)
「二輪車は消費者の好みが多様化しているので、ヒット商品でも需要を定着させるのは難しい」(業界関係者)との意見もあります。
僕の意見は、もっと根本的なところにあるんじゃないかと思うんですよね。
ズバリ、
スピードが出ない&排気音がうるさい
これに尽きるでしょう。
見てる感じ、加速も鈍いみたいですし、「割り切れない」ユーザーには苦しいところかもしれませんね。
(参考資料:毎日新聞2005年1月6日付朝刊)
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スズキはチョイノリと一緒にデフレ車も世に放ちました。
それが「ツイン」。
2シーターの軽四で49万円からと激安。軽としては初のハイブリッド仕様もありました。
↑とても小さい。現在の超小型車に通じるものがありますね。
(→コラム「解き放たれた超小型車(超小型モビリティ)」)