誰もが移動しやすい道へ




今回は個人的な想いを書かせてもらう。

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昨年、右足の手術をし、長期に及ぶリハビリ生活が始まった。

手術翌日から歩行訓練が始まり、
右足を動かすトレーニング四本足の歩行器で左足で短距離の移動
1週間後、右足に少し体重をかけられるようになってからは両脇に松葉杖での二足歩行、そして片松葉へ。
1ヶ月後には手すりに片手を添えながらの歩行、そしてステッキ(杖)での独立歩行へ。



ようやく退院が許可されたときには、何にも頼らずひとりで歩けるようになり、歩行には自信もあったけれど、
実際のおでかけには杖が手放せなかった。



2つの理由がある。


ひとつは、手術した右足の筋力が著しく落ち、歩行のバランスが悪かったこと。
もうひとつは、その体になったからこそ気づいた。



それは、道が段差や凸凹、傾斜にあふれていること。



病院は完全バリアフリーだから、歩くのに何の支障もなかった。
だが、外は違った。



健常者だったら気にも留めないだろう、雨が降ったら小さい水たまりができる程度の
わずかな道のギャップですら足を取られてしまいフラつく。

歩道の敷石や縁石が波打っていたり、少しの傾斜でも体のバランスを失いかけ
タイミングを誤ると杖が空を突き 「おっとっと」となる。

横断歩道と歩道のわずか2〜3cmの段差を乗り越えるにも歩幅の調整が要り、緊張する。

方向転換など姿勢を整えるのにひと手間かかるし、
右膝を地面につくことが許されないだけに、うっかり転倒して膝を打ち付けたら再手術になりかねない。

歩くスピードも普通と思っていたが、実際には半分くらいに落ちていたことは退院してからわかった。
後ろからどんどん抜かされるだけならまだしも、
青信号で横断歩道を渡り切るのが困難と分かったときはショックだった。



道路や鉄道を跨ぐ陸橋にもスロープやエレベーターが設置されてるけれど、
その場所が分かりにくかったり、異様に遠かったり
重だるい足を引きずって遠回りさせられるのがどれほどの負担だったか。


それを必要としている人は歩行が困難なのだから、便利のいい場所に設置するのが筋なのに、
設置することが目的化していて、利便性など考慮されていないことにも気づいた。




道路は誰に対しても優しくなった、バリアフリーになってきている、といっても、
それは健常者のエゴに過ぎない。

そして僕もかつてはエゴの一員だった。


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僕はいつかそれらを利用しなくてもいい体に戻っていく。一方で生涯必要とされている方々もおられる。
ならば、せめて困っている人がいたら、不自由を強いられた自分自身を思い出し、
ちょっぴり勇気を出して手を差し伸べたい。