ぐいちの高倉通




「おい、えらいこっちゃ。高倉六角、上がれへんようになってんぞ


いつも賑やかな太鼓腹の小兵、「坂」(仮名)が、
現場から帰ってくるなりみんなに向かって大きい声でまくしたてる。


道が碁盤の目のようになっている京都市中心部
堀川通や今出川通のような幹線道路以外の通りはおおむね狭く、そのほぼ全部が一方通行

おかげで他府県から車で来られる方たちが混乱してますね。
そんな一通地獄を走り慣れている京都人は、どの通りがどの向きの一通か知っているから 目的地にたやすくたどり着けるので、
他地域の方たちの混乱ぶりは他所事なのです(笑)。




で、「坂」が言っていたのはこの交差点のことです。



中京区の高倉六角交差点


カクカクとなっている、いわゆる「ぐいち」ですけど、南北は北向き一通の高倉通、東西は東行きの一通の六角通
ここを図のように上がりたい(北に行きたい)けれど、はたしてOKか否か。





以前はOKやったんです。
この数mの区間だけ一通が解除されていて、高倉通を「まっすぐ」行くことができてたんです。
(※モザイクをかけてあるところは、以前は無かったんです)



でも、解除されてる数mだけは、車が瞬間的に逆走することになり、事情を知らない人たち(やっぱり他府県ナンバー車)が更に混乱し
衝突事故の可能性もあったんですね。
それでアカンようにした、と。








法的にはこういう形の交差点は十字路ではなく、2つのT字路の扱いになるとのことです。
高倉六角は両者が1.6mずれています。



ただし、信号で制御されている場合はこの限りではありません(→コラム「それ、停止線と違うねん!」)。




この高倉六角交差点は、碁盤の目の抜け道としても重要なポイントでしてね。

碁盤の目やったら隣の道を行けばいいだけやん、ではないんです。
隣の通りは一通の向きが逆だからです。

同じ高倉通なのに「まっすぐ」行けないのならば、2筋東の柳馬場通まで行き、
観光客が我が物顔で歩きゴチャゴチャした三条通を走らされる大回りとなり、道を知っている地元民からしたら本気で不便になりました。
「坂」が憤るのも頷けます。




では、同じ高倉通ですが、コチラの高倉姉小路(たかくらあねやこうじ)交差点はどうでしょう。




この道は「まっすぐ」行けるのでしょうか






答え:行けます。

ええッ、さっきの高倉六角と何が違うねん!とお思いになるかもしれません。ここも道が「ぐいち」やのに。


そのわけは、交差点を挟んだ両方の道の延長線が少しでも重なっているかどうか。
この高倉姉小路はわずかに重なっているのでOK。十字路として「まっすぐ」行けるんです。





同じ通りやのに、行けたり行けなかったり。
うーん、どっちも似たようなもんやんか…。




京都市内には少しの「ぐいち」のところはいくつもあり、
実のところ長年にわたり一通の規制にかかわらず瞬間逆走が慣習化していたんです。
僕も普通にしてましたからね。
それが近年アカンようになってきましてねぇ。



法的なことや交通安全の観点から言えば規制するのが正しいのは分かってますけど、
同じ通りを一直線に走れるという長年の慣習を変えてまで「不便」にするとは世知辛い世の中やなぁと、首をかしげています。



地元紙でも大きく取り上げられましたからね。


(c) 京都新聞


ま、こんな狭くてヤヤコシくて渋滞する一通地獄に観光で入り込むこと自体が間違ってると思いますけどね〜。
僕もこんなところ仕事じゃなきゃ通りませんし(笑)。




参考記事:京都新聞 2023年5月31日付朝刊