トンボ車




数年前、あるスポーツの練習で、胸を借りようと高校にお邪魔したときのこと。


日曜なのに部活に熱心な高校生たちと一緒に練習をしながら、ずっと目に入って気になったものがあった。
グラウンドの隅っこに置かれた軽自動車。
どう見てもグラウンドには不釣り合い。


何であんな所に置いてあるのやろう。砂地のグラウンドで走り回るごとに砂が舞い、車が汚れてしまうやん。

そうこうしているうちに練習が終了。



終わったあとに待っているのは…トンボ引き
スパイクでぐちゃぐちゃに荒らしたグラウンドをきれいに整備するのは借りた者の礼儀。来たときよりも美しく。


(↑)は建前。本音は、まぁこれが鬱陶しい。
練習でくたびれているのに各々がトンボを手にし、広いグラウンドを行ったり来たり。



をしなくていい、と高校生たち。
どうして?ボッコボコやで。




すると、隅っこの軽四のエンジンがかかっておもむろに動き出し、グラウンドを走り始めた。
その後部にはでっかい整地用のブラシ



砂ぼこりを巻き上げながら(ちょっとくらい散水すればいいのに)、見てる間にきれいに均されていく。
数分の後には、来た時よりも美しくなっていた。



なんということや。今どきの高校生はトンボも引かんでいいのか!
運転してるのは休日出勤の顧問の先生かな。ごくろうさまです。

時代は変わったんやなの感想を抱きながら学校をあとにした。



そんなことを不意に思い出させたのは、こんなニュースが飛び込んできたからだ。




(c) 朝日新聞



文武両道の名のある高校で、僕がやっていた陸上競技も強豪で知られている。


この短い記事から他にも読み取れることがあるが、あえて触れないことにする。
車に乗ってみたい好奇心…、それで前途ある生徒の命が失われたことが痛ましい。



誰もが通る、若気の至りの代償は大きかった。



記事引用:朝日新聞 2024年11月18日付朝刊