のんびり旅スタイル
やっぱり「旅」が好き。
バイクで走るのが好きと思われてるけれど、鉄道旅行も好き。
そのキッカケとなったのは高校の卒業旅行。
クラスメイト6人とJRの在来線 普通列車が乗り放題の切符、
その名も「青春18きっぷ」で九州を5泊6日で一周したこと。
令和6年と違うよ。平成6年。
まだネットもケータイも無い時代だったから、ことさら事前準備が大切だった。
時刻表を手に綿密に計画を立て、宿泊先も押さえ、九州各地を時計回りに巡る旅。
列車を何回も乗り継ぎ、1日に16時間も乗車していた日もあった。
道中でハプニングが起こり計画通りに行かないのもいいところ。
そうして過ごした6人の旅は、青春そのものだった。自分の人生という長い旅路のなかでも同率1位を誇っている。
そして、30年の時を越え、あの旅情を再び味わいたくて、「18きっぷ」を手に普通列車に乗り込んだ。
現在の「18きっぷ」は5日分1セットで1万2050円。30年前から750円しか上がってない。
5人で日帰り旅行もよし、1人で5日使うもよし、シェアして使うもよし。
僕は一人で全部使った。2つの旅に分けて。
3日間で四国の西半分を反時計回りに一周。
2日間で出雲を往復。
あの時と同じように過ごしたかったから、出発と同時に連絡手段は断つ。
都会の鉄道網は最新型の車両や列車の本数の多さなど充実しているけれど、
瀬戸大橋を渡り四国に入ると、岡山から中国山地に入ると廃線や減便の嵐。
数年前に発行された鉄道旅行雑誌ですら使い物にならない有様だった。
時刻表は特急の文字が目立ち、普通列車の本数はあまりにも少なく、
卒業旅行の時とは違う意味で綿密に計画を立てないと、次の列車が繋がらなくて
周囲に何もない田舎のターミナル駅で途方に暮れる現実がちらつく。
色あせた1両編成でワンマンの、エンジン音が賑やかなディーゼルカー。
古い時代に敷設され、山間部や渓谷を縫うように敷かれたレールをゆっくりと走る。
揺られる車窓に身をゆだねると、眼前に広がるのは、数十年前で時間が止まったかのような駅舎や景色。
車内に目を向けると、子どもの頃に乗った国鉄時代の列車のようなノスタルジー漂わせる雰囲気。
無人駅では車両最前部の扉から降りるのがルールで、運転席の後ろには運賃表と料金箱。
単線がゆえに、何もない山村の駅での列車の行き違いの長い待ち合わせは度々。
その度に列車を降り改札を抜け駅舎を出て、その地の空気を、日常を、景色を、歴史を体いっぱいに受け止める。
外部から邪魔をされることもない、自分のための、自分だけの時間。
一応定めた目的地はあるが、それはあくまでもチェックポイントに過ぎず、
そこに向かう道中こそが僕の「旅」の目的である。
出逢うものすべて。
列車から眺める景色はもちろんのこと、
車輪がレールを刻む音、
乗り換え時間を気にしながらの買い出しやホームで食べる駅そば、
その先にある一軒の住宅専用の第4種踏切を通過するときの汽笛、
乗り換えても乗り換えても同じ列車に乗っている、僕と同じ目的の人たち、
一日数本の列車の到着時だけにぎわう超過疎地のターミナル駅、
そして、不意に話しかけてきた隣に座った地元の乗客。
なにもかもが僕の旅路を彩ってくれる。
次はどこの鉄路で新たな出逢いが待っているのだろう。
(2024.8.17)