人力不要車の疾走



発明家という職業(?)があります。

もっとも有名な人はエジソン(1847〜1931)ですね。生涯で1300あまりの特許をとったと聞いています。


彼が発明したものでよく言われるのは、蓄音機(1877年)や白熱電灯(1879年)でしょうか。


蓄音機で、時間を さかのぼる事が出来るようになり、
白熱電灯のおかげで、ランプに代わる安全な光を手に入れました。


電話はベルという人物が発明(1876年)していますが、それは実用に耐えがたい代物で、
のちにエジソンが改良して普及したとか。
小学校のときに読んだ伝記の本にそう書いてあったのを覚えています。


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さて、現在でも日々あらたな発明がなされ、特許庁には多数のアイデアが出願されています。


たとえば、

やかんのフタの蒸気の穴。昭和のはじめごろに小学生が考え付きました。

主婦が発明した洗濯機の糸くず取り機。それで特許料が毎月200万円も入っていました。

トラック運転手が発明した灯油ポンプ。この方は後にポンプ会社の社長になっていますね。

誰でも知ってるオセロは、セールスマンのおじさんが発明し、億単位の特許料を得ました。



エジソンが遺した言葉をひとつ紹介します↓

「わたしは気を落とすことを自分に対して許さなかった。
考えて考えて考えつくせば、もっと満足のいくものを引き出すことが出来るからだ」




では、現在の車の原点となる自動車を発明したのは?
正確には高性能のガソリンエンジンの発明ということになりますが…。

それは、ドイツに住むダイムラー(1834〜1900)と ベンツ(1844〜1929)です。
お互いに同じドイツに住んでいて、お互い同じことをやっているのを知らなかったというマヌケぶり。



先にダイムラーがガソリンエンジンを二輪車に取り付けたものを完成(1885年)させました。



なんと世界初のガソリンエンジン車はバイクだったのです。



続いてベンツがガソリンエンジンの三輪車を開発(1885年)。
そして、ダイムラーが四輪車を完成(1886年)させました。



あれ?聞いたことないですか、この2人の名前。
そうです。彼らの名前は車のブランド名として、現在でも生き続けているのです。



車が発明されて100年余り。ずいぶん進化したものですよね。
ガソリンエンジンに代わり、電気で動く車が市民権を得つつありますもんね。


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まぁ、車の世界も「100年に一度の大不況の嵐」により、販売台数が30年前の水準まで落ち込んで、
アメリカの「ビック3」(ゼネラル・モータース(GM)、フォード、クライスラー)が破綻するかも?なんて言われてますし。

(※このコラムを書いた後に、GMとクライスラーは破綻しました。)



その中のひとつ、GMがあのセグウェイ社と共同で、あらたな自動車の開発に着手しました。
起死回生の救世作とも言うべき乗り物は、充電式の二輪車です。



名前は「プーマ」。



セグウェイの技術を利用し、体重移動で前後左右に動かせます。
2人分の座席を設けて、最高速度は56km/h。1充電で56kmの走行が可能。
カーナビや渋滞情報探知の機能も備え、相互に通信も出来るようにするそうです。
2012年の一般発売が目標で、気になるお値段は、「自動車の3分の1〜4分の1」になる予定とか。



新聞の見出しを見たとき、あのGMがバイクを作るのか!!と驚きました。



しかし、そんなに世の中甘くない。実物は↓







そうでした、セグウェイが噛んでいるのです。車輪が縦に2つ並んでいるわけがないじゃない。
車輪は横に2つ並んでいるんです。
かわいい補助輪が前後についていますが、二輪車です。

実は、ダイムラーの作った世界初の「バイク」も、子ども用自転車のような補助輪が2つ付いていましたし(笑)。



↑の写真、僕のパッと見の第一印象は、ひき手不要の「人力車」でした。



そんな感じ、しません?
京都の観光地、嵐山や平安神宮周辺で人力車を見かけるのですが、
そこからアイデアを得たのでは?と思いたくなるほどの印象を受けます。
人力車の代わりに嵐山の渡月橋などを「プーマ」が走っていても違和感がないように思います。


いかにもアメリカらしい発明だと思います。
エジソンの言葉を忠実に守って「考えて、考えて、考えつくした」結果、まったく新しいものを生み出したのでしょう。



ですけど、僕にはこれに乗る度胸はないです。
だって、自分の前に、何もないんですよ。

自転車程度のスピードで走るなら可愛らしいですが、
こんな形の乗り物が56km/hも出たら、めちゃめちゃスリリングじゃないですか?
公道を走らせるより、遊園地のアトラクションにピッタリやと思いますわ(笑)。



それから、素朴なギモンですが、
仮にニポンで発売された場合、二輪なのでバイクの免許で乗ってもいいのか、どうか。
国が認可する可能性は、限りなくゼロでしょうけど(笑)。セグウェイでも公道走行不可のままですしね。



ニポンでも 奇抜で、枠にとらわれない乗り物が 自由に乗り回せる日が、生きている間に来たらいいのになぁ…。


来たらなぁ……。


参考資料:
京都新聞2009年4月8日付朝刊

学研「なるほど発明クラブ(1985年刊)