まだ見ぬ「ケッチン」




バイクも年々進化し、新しいものが生み出される一方で、消え行く運命のものもあったり…。

今回は、死語になりつつある、あるバイク用語を取り上げようと思います。




さて、止まっているエンジンを動かすには、言わずもがな何かしらのキッカケが必要です。

「動け〜動け〜動かんか〜い」と念力を送ったり、呪文や魔法をかけても、エンジンはウンともスンともいうはずがありません。
当たり前です。そんなモンで動くと思ってる人は、パソコンもスマホもポイポイして外の空気でも吸うといで(笑)。




えーと、何の話でしたっけ?あ、エンジンを動かすキッカケ…でしたね。

つまり、エンジンの始動方法といえば、いまやセルモーター(セルスタート)が一般的です。
バイクなら右ハンドルの根元にあるセルボタンを何秒か押してやればブルルルゥンとエンジンが動き出します。


コレ、セルモーターは何をしているかというと、エンジンのクランクシャフトを回してやってるんですね。
そのキッカケでエンジンが燃焼を始め、自力で回転を始めます。



結構簡単な解説ですが、止まっているエンジンを回し始めるのには大きな力が要ります。
それを片手に載る程度の小さなセルモーター(バイクの場合ね)が担っている。
小さくてもシッカリもの。けなげだと思います。




しかしエンジンが始動してしまえば、
セルモーターは何の用も成さないジャマな存在に成り下がり
ます(笑)。

だって、エンジンを回すキッカケを作るのだけが仕事なんやもん。


さらにセルモーターは「モーター」の名のとおり、バッテリーから電力を供給してもらわないと動きません


バッテリーが上がって最も困るのは、セルモーターが使えない

→車やバイクが動かず立ち往生
なんてことに。




そんな中、涼しい顔をしている一部のバイクがあります。

そう、セルモーターの代わりを人力で行うための物、キックペダル(キックスタート)のあるバイクです。

脚で強く蹴るようにガシャコンとペダルを踏み込んでやることでクランクシャフトを回し、
エンジン始動のキッカケを作り出します。バッテリーがなくても走れます。


僕、キックペダルをガシャコンガシャコンするのが、バイクの味を出すようで好きなんですよね〜。

だから、その手のバイクがもっと登場してもよさそうなのに、セルモーターに押されてしまって…。

最近の車種でキックペダルが標準装備されているのは、
スーパーカブなどのビジネスバイクや、一部のオフロードバイク、
125ccクラスのスクーターや原付スクーターなどに限られ
ている悲しい現実。



あ、ヤマハのSRを忘れてた(笑)。
こいつは1978(昭和53)年に登場してから現在までキックスタート一筋
んでもって、空冷単気筒SOHC2バルブ400ccと こだわりのエンジンを持つ渋さ抜群のバイクですわ。




ちなみに信号待ちでエンストこいて再始動でキックペダルをガシャコンやって手間取るとカッコ悪くなるので、
いかにエンストさせずに走れるかが肝。ほかにも坂道発進とか、ゴーストップを繰り返す渋滞路とか(笑)。




スクーターはセルモーターとキックペダルを併用しているのが多いですね。

どちらかひとつで十分ではないのか?と思うかもしれませんが、
これは、スクーターにおける実用性と便利さ・手軽さを兼ね備えた結果であり、
普段はセルモーターで始動する便利さ・手軽さを。もしバッテリーが上がったときにはキックペダルで始動出来るようにと
実用性を持たせたと聞いたことがあります。




排気量の大きなエンジンのキックペダルを蹴り込むには大きな力が要るため(SRとか(笑))、
古いバイクで蹴りこみ方が悪いと、ごくまれにクランクが逆回転をしてしまうこともあるそうです。


すると下に蹴り込んだキックペダルがすごい勢いで跳ね返ってきます。
これを「ケッチンを食らう」といい、スネにバチコーンと当たると骨が折れてしまうこともあるとか(痛)。
って、こんなことを書いたらキックスタートのみのバイクなんて怖くって乗れへんがな(涙)。




かくいう僕は“ケッチン経験値”がゼロですので、
痛々しいご経験を体に刻まれている方がおられましたら、僕にこっそり伝授してくださいな(笑)。



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おまけ

SRにはキックスタートを適切に行うためのレバーが左ハンドル下につけられています。
これを握りながらキックペダルを軽く踏み、ピストンの位置を上死点(シリンダー内の最上部)にもっていくことで
最も効率よくエンジン始動が出来る仕組みです(↓写真参照)。