打ち砕いたLEGEND




↑のタイトルだけでこの文章の内容が分かったなら、相当鋭いですよ。かなり感心しちゃいます。
今日(2004年10月9日)に載せてこそ意義がある文章です。


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今日(2004年10月9日付)の新聞各紙に
ホンダの一面広告や半面広告
が載っています。


フルモデルチェンジした高級車・レジェンド(LEGEND)のCMです。
セールスコピーは「意のままに操る、誇り」だそうで。


今までの車は「操る誇り」は無かったって事やね?(-_-x)



車のホンダといえば、ミニバンとミドルクラスのスポーツカーを思い浮かべますが、
ひそかに高級車
も作ってます。
失礼ながら、ホンダにゃ似合わないですが(笑)。


3500ccのVTEC(可変バルブシステム)エンジンを搭載し、
価格は標準仕様で525万円(税込)。値段だけは立派です。
2004年10月9日付毎日新聞朝刊より



実は、買っちゃいました。レジェンドを。


……ってことは生涯無いと思います。僕、車にはあまりこだわらないので。


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本題はここからです。

広告の隅っこのほうに小さな活字で車のスペック(仕様)が載っていますが、
そこにはレジェンドが初となる数字が記載されています。


ここです↓





わかりましたか?


「最高出力」の項目です。
国内仕様で300馬力(以後「PS」)を出す車はレジェンドが初めてなんです。



今まで長きにわたり、
「日本国内向けに生産・販売される(=国内仕様)」車、バイクには
「馬力規制」がかけられていました。


どういったものかというと、
最高出力に上限を設け、それ以上の出力のエンジンを車やバイクに搭載しないという約束で、
自動車・バイク業界で交わされていました。



主要車種の馬力上限は以下のとおり。

  バイク
排気量(cc) 50 80 125 250 400 600 750 800 900 1000 1001〜 軽自動車 それ以外
馬力(PS) 7.2 12 22 40 53 69 77 80 88 94 100 64 280



これらはあくまでも自主規制であって、それを破っても法的に罰せられることは無かったのですが、守られてきました。
車でいう「280PS規制」と呼ばれてきたものです。



なぜこんなものが存在したかというと、
車の開発がエンジンの馬力アップ競争になるのを防ぐためと、
ハイパワー車を狭い日本の道で走らすと危ないから…だったと思います。

(理由なんて後からいくらでも付けられますけどね)



ところが、「馬力規制」の対象は↑にも書いたとおり「国内仕様」のみであって、

輸入車はもちろん、
日本で生産、輸出した「海外仕様」の車やバイクを、また日本へ輸入する「逆輸入車」は規制の対象外でした。



日本国内には、ベンツ・ボルボ・アウディ・フォルクスワーゲンを始めとする輸入車が多数走っていますが、
これらの中には280PSを軽く超えているものだってゴロゴロしてます。



日本の自動車メーカーでも、海外で生産した車を日本に輸入してますが、
馬力規制の対象外なのでフルパワー車だって存在します。

トヨタの海外ブランド「レクサス(LEXUS)」や、ホンダの海外ブランド「アキュラ(ACURA)」などがいい例です。



トヨタにいたっては、高級車「ウィンダム」の新聞広告に
アメリカで展開されているレクサスブランドのフルパワー仕様「ES300」の写真を載せ、
「この車は海外向けの仕様であり、日本国内では販売されません」などと書く始末。


日本で売らない車の写真を載せるなバカモン!!と憤った記憶があります。
トヨタのゴーマンさが見え隠れしてます。


注:現在では国内でもレクサスブランドの車が買えます。



バイクでも、同じ車種なのに、国内仕様は馬力が低く、海外仕様はフルパワーなど、差別されていました。
同じ日本で作ってるのに、ですよ。


僕の乗る800ccの「2相棒」も国内仕様と海外仕様があり、それぞれ80PS、110PSです。
「2相棒」は国内仕様です。


バイクの雑誌を眺めてると、
2005年モデルのビッグバイクで178PSとか、
2007年モデルのビッグバイクは190PSをたたき出す!とか書かれていますが、
これらは少なくとも国内仕様ではありません


メーカーも国内仕様と海外仕様の2つを作るのが面倒くさいのか、海外仕様しか作ってないバイクもあります。
ビッグバイクはその傾向が強いですし。


くだらない馬力規制の壁に阻まれ、
フルパワー車を日本国内で販売するには、「逆輸入」するしか方法がありません。
その手間の分 販売価格に転嫁され、フルパワー車は国内仕様と比べて値段が高くなります(そしてメーカー補償も受けられません)。



しかし、国内仕様のバイクは比較的簡単にフルパワー化出来るなど、
馬力規制そのものが形骸化していました。



だったらそんな規制 無くせばいいやん。当然ですよね。
そこで、2004年6月、日本自動車工業会は車の280PS規制の撤廃を決定しました。
このニュースを新聞で読んだときは、すごいインパクトを受けた記憶があります。


そして今日、規制撤廃後第1号車となるレジェンドが発売になったというわけです。


レジェンド(legend)とは英語で「伝説」の意味です。
文字通り、馬力規制を「伝説」にしてくれました。



続けて2007年7月5日、バイクの100PS規制も撤廃されました。
いよいよ、バイクの「逆輸入車」が死語になる日が来たんです。バンザ〜イ!バンザ〜〜イ!

残念ながら、軽四の64PS規制はそのまま継続されるとのことです。


馬力規制が撤廃されたことで、ハイパワー車が今まで以上に幅を利かすかもしれません。
そのへんは交通社会人のモラルを信じたいですね。

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バイクの一面広告って、あんまり見たことがないなぁ。
もっと遠慮なく広告費を使ってバイクの素晴らしさをアピールしてほしいもんです。




記事引用:毎日新聞 2004年10月9日付朝刊