おひとり様100円の「レベル3」



ふふふ、乗ってきました。





国内初の 「『レベル3の自動運転車』による営業運転」ですよ!



福井県永平寺町で2020(令和2)年12月から、自動運転車による有償での移動サービスが行われています。


この車は道路に埋め込まれた電磁誘導線に沿って走行。

(下写真・黄色の矢印の先の線が電磁誘導線)





車に設置されたカメラで周囲の状況を確認しながら自動運転します。
車は遠隔監視されていますが、緊急時以外は操作は行わず、保安要員も乗っていません

大阪の新交通システム「ニュートラム」のクルマ版と言えばいいかな。




この車、当初から自動運転でしたが、遠隔監視者が常時監視し、保安要員も乗車する「レベル2」でした。

それが、車の性能を向上させ、常時監視・操作する必要がなくなるとともに、
保安要員の同乗も不要となる
「レベル3」へと進化したのです。




自動運転のレベルは1〜5までの5段階あり、「レベル2」までは自動運転ではなく、
特定の操作だけ車が補助してくれる「運転支援」と呼ばれています。

それが、「レベル3」以上になると、特定の条件を満たすことで
運転者は車の操作から解放され、
「自動運転車」と名乗れるようになります。

それらの車には以下のようなステッカーが貼られています。






さて、時は2021(令和3)年4月9日
早朝からバイクを繰り、永平寺町までやってきました。
名刹・永平寺の門前から自動運転車は走っていまして約2kmを営業運転しています。


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車両はヤマハ製のゴルフカート型 電気自動車(EV)
3台あり、うち2台が6人乗りの小型車仕様、1台が4人乗りの軽自動車仕様です。


↓小型車仕様






↓軽自動車仕様





ちなみに、「レベル3」になったのは3月25日わずか2週間前です。

そんな最先端の車に乗車できるなんて…、大人気で待ち時間とかあったらどうしようと気をもみました。
だって、現在市販されている国内唯一の「レベル3」の車は100台限定の上に1台1100万円もするんですよ。
それが1人たった100円で乗れるんですから、気をもんで当然ですやん。


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現地に到着し、見回しても乗り場らしきものがない。
しばらく周辺を歩いて探しても見つからず、お土産屋さんで尋ねたら、路線バス乗り場の後方にある、と。



行ってみたら、全然目立たない場所に自動運転車の乗り場はありました。
お土産屋さんからわずか30mほどの距離なのに分からへんとは。扱いが酷くないですか? orz







乗り場に着くと、そこには1台だけ停まっている車に家族連れ5人が乗り込み、ちょうど発車する段でした orz





「積み残し」された僕は、20分後の次の便を待ちます。
乗り場には僕一人。大人気どころか閑古鳥が鳴いてるがな orz


路線は「永平寺鉄道」の廃線跡を利用した遊歩道ですので、歩行者や自転車が通行します。
全然路線っぽくないですやん orz




果たして定刻が近づき、2台の車がこちらへとやってきました。
2台とも無人です。見まごう事なき自動運転車です!





結局他に誰も来ず、乗客は僕一人です。



それにしても、車が乗り場に来たところで、車内は無人のため、僕はどうすればいいのかわからずうろたえていると、

「お客様、ご乗車になられるのでしたら、ファスナーを開けてお乗りください」

わっ、車がしゃべった!

あ、これが遠隔監視してる人がカメラで僕の姿を捉えて話しかけてるんやな。

では乗りますか。



車のベースはゴルフカートなので、ドアなどは無く、周囲はビニールシートで覆われているだけです。

シートのファスナーを開け、乗り込むと、
遠隔監視者から、運賃を運賃箱に入れるように促され、空き缶のような運賃箱に100円を投入
このへんはかなりアナログです(笑)。



この日は寒く、ビニールシートだけでは冷気が入ってくるので、座席にはホットカーペットが敷いてあり、お尻が暖かかったです。
車内を見回すと、カメラやマイクやセンサーらしきものが複数見え、車外だけでなく、車内もばっちり監視されていることがうかがえます。

そして、発車前に重要な説明がなされました。



「ご乗車の車はセンサーが過剰に反応していまして、
障害物がないところでも減速や停止することがありますのでご注意ください」




はいはい、わかりましたよ。
適当に聞き流します。大したことないやろう。

このときは、それが大したことになろうとは思いもせず…。



そして、定刻となり、車は静かに出発しました。

おおお!おれは今、「レベル3」の車に乗っている!!
感激の瞬間です。






運転席はありますが、自動運転のためハンドル(※なぜか左ハンドル)には覆いがなされています。




ピピッ

出発して数十m走ったところで不意に電子音が鳴り、車が急停止しました。
前のめりになる僕。


車内の液晶画面を見ると、
「障害物を検知したため減速します」


ん?特に何も障害物はなさそうやけど…。
そして、何事もなかったかのように発進しま


ピピッ


否や、再び電子音が鳴り、減速。また前のめりになる僕。
どうやら、車のセンサーには、過剰というより、ニンゲンには見えない「何か」が見えているようです。
それはそれでオカルトっぽくて不気味なんですけど orz



それにしても、発進と停車を何度も何度も繰り返すギクシャクした運転で、
「これのどこが『レベル3』やねん!」と叫びたくなりました。
事前に説明があったにせよ、教習所で初めて車を運転したニンゲンより酷いがな(涙)。

最高速度が12km/hやから まだいいものの、
もっと速度が出ていたら乗客全員 車酔いの上にムチ打ちやど!




乗客の僕がこれだけギクシャクさせられているのに、出発前は散々おしゃべりだった遠隔監視者からは一切の説明も謝罪も無し
車内は例の オカルト検知 電子音と、モーターの小さな音がするだけです。ちょっと不安になる僕。
きっと遠隔(略)は持ち場を離れてコーヒーでも飲んでるに違いない!怪しげな「レベル3」に任せるんやないよッ!




前方の道端にたたずむ人が2人。
すると「車が通ります、ご注意ください」の音声がながれて注意を促します。
なるほど、オカルトセンサーでもニンゲンはちゃんと認識しているようです。


でも、この「レベル3」の車は電磁誘導のため誘導線を外れてまでして障害物を避ける能力はないので、
道端の人が車を避けてます(笑)



その後も何度も謎の停止や減速を繰り返しながら、
永平寺から約2km先の「荒谷」停留所に着き、10分余りの「レベル3」の乗車は終わりました。







率直な感想を言うと、
自動運転の技術は過渡期のため、現時点では何とも言えない乗り心地も含めて楽しむものなんやなと感じました。
たった100円で先端技術の「レベル3」が体験できるんやから、そういう点では貴重な経験になりましたよ。




では帰り道も100円払って、センサーがシビアではない他の車に乗ろうかなと思ったら、
運行がお昼休みに入り、次の発車は1時間後 orz



周囲に何もない場所で1時間も待つ気は起こらず、ましてや、すぐそばの国道を走る路線バスに乗って戻る気も起こらず、
歩いて永平寺まで戻りましたよ、2kmもある上り坂の遊歩道をブツブツ文句言いながら…。