それが「片肺」のいいところ



僕のかけがえのない相方である、バイク「2相棒」は排気量が約800ccあります。

白バイにも採用されたこの車種。V型4気筒の強心臓から繰り出される力はパワフルな走りとなり、
乗る者を魅了します(やや過剰設定)。


また、排気量が大きくなればなるほどエンジン出力に余裕が生まれますし、
さらに4気筒以上だとエンジンの振動も小さくなり、長距離走行でも疲れにくくなります(←重要)。
排気量の大きなことはいいことだ!



しかし、です。



日常に使うのには、この排気量は いささかオーバーです。
「2相棒」の出番の大半が「通勤」の僕にとっては、大排気量もハイパワーも必要ないんですね。
いつでも800ccのエンジンを回しているのは、ガソリンばかり食って不経済ですし。

実際問題、普段は半分の400ccあれば必要にして十分なんですけど。
でも、フルパワーの走りも捨てがたい


なんかいいアイデア無いのん?


と思っていると、ありました。


ホンダの高級車、インスパイアに搭載されている「気筒休止エンジン」です。
これは、アイドリング時や定速走行時など、エンジンへの負荷が少ない時は、
全てのシリンダーを動かす必要が無いですので、一部を休止させてしまうシステムです。

休止させてしまうので、実質的に排気量を減らすことになり、
ひいてはガソリンの節約やCO排出の減少にもつながります。



現行インスパイア(2007年モデル)の場合、
V型6気筒・3500ccのエンジンを一部気筒休止させることで、3気筒、4気筒、6気筒の3モードに変化させられます。



エンジンを上から見るとこんな感じ↓ 「●」が稼動しているシリンダー、「○」が気筒休止のシリンダーです。

3気筒 ●●●
○○○
アイドリングや定速時
4気筒 ○●●
●●○
ゆっくり発進・加速時
6気筒 ●●●
●●●
アクセルを強く踏み込むなど力強い走りを求めるとき

このようなイメージで、シーンに合わせて自在にモードを変化させられます。
しかもいつ気筒数が変化するときは、運転していても分からないくらいスムーズだとか。

4速AT車のギアチェンジよりスムーズだったら、ぜひとも乗ってみたいなぁ。どこに行ったら乗らせてくれるやろう。

けど、僕の行きつけのホンダのディーラーには「ホンダの全車種取り扱っています」と書かれているわりには、
安物のミニバンしか置いてないど(笑)。



こんなに優れた仕組み、もっと普及させればいいのにと思うのは当然ですが、
小排気量車で気筒休止させると、十分なパワーが得られず走りが悪化してしまいます。
だから、総排気量がある程度大きい車種にしか使えない側面もあります。



バイクにも採用されるとの話は2年くらい前からあがっています。
実は試作車は存在していまして、レポートがバイク雑誌に載っていました。

それによると、直列4気筒・1137ccのブラックバード(CBR1100XX)に気筒休止エンジンを採用し、
2気筒2バルブ、3気筒2バルブ、4気筒2バルブ、4気筒4バルブの4モードに変化させられます。

2気筒(約570cc)モードで走ってみたが、実に普通だったとレポートには書かれていました。
そりゃそれだけ排気量があれば2気筒でも十分走るやろう。パラレルツインっぽい走りになって面白かったに違いない。



V型エンジンが仕組み上、気筒休止に向いているらしいですので、正式採用は「2相棒」の後継車種になるとかならないとか…。
過日のモーターショーでホンダが匂わせてましたしね。
あくまでもウワサですが。


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この気筒休止、バイクの世界では別の意味でよくある話です。
プラグがカブったりして、シリンダーが「死んだ」状態になり、4気筒→3気筒になることなどを、
まとめて「片肺(かたはい)」と呼びます。

こうなると、走ることは走れますが、エンジン出力やエンジン音にムラが発生します。
僕も片肺は経験したことがありますが、気分的にヤなもんでした。



それを利点に変えるなんて、技術の進歩はスバラシイですね。
早くバイクに正式採用されて、エコノミーとパワフルを両立させられるモデルが出ることを願いつつ…。



参考資料:ビッグマシン(内外出版社) 2006年12月号