LEADの勲章



我が家のLEAD50が大病を患いました。



ある日、LEADでの仕事帰り、自宅まで後1kmというところの上り坂で、急にエンジンが苦しそうな声を上げ、
20km/hぐらいから全く加速をしなくなったのです。
その様子からして、すぐにエンジンがオーバーヒートしたと分かりました。


坂道を上りきるまでの間だけそのまま走り、そこから自宅までの数百mはエンジンを切って押していきました。


その夜、十分にエンジンが冷え切ってから再びエンジンを始動させ近所を走ってみたのですが、はっきりと分かる加速不良。
走りにキレが無くスピードが乗ってこず、車の流れに乗れません。エンジン音も心なしかおかしいですし、
排気ガスがガソリン臭いのも気になりました。


LEADが我が家の一員になって7年半。
毎日の通勤にお買い物、母親の仕事の商品の仕入れ、長距離ツーリングまでこなすなど
大活躍かつ過酷な走りを強いられ、走行距離は3万6000km。


今まで何のトラブルも無かったわけではなく、
駆動系/ミッションのオーバーホール(分解整備)、ホイールのシャフトベアリング(軸受け)交換などの手術を受け
延命を図ってきていたのです。


すぐにバイク屋さんに入院。全身の検査を受けました。
結果、ミッション、マフラーその他も正常。あと原因として考えられるのはエンジンしかないと連絡をよこしてきました。
エンジンをバラす(オーバーホール)となると、かなりの工賃がかかるが、どうする?と訊ねるバイク屋のオヤジさん。
心臓に当たる、2サイクル50ccエンジンの限界がついに来たのかなと思いました。


大金を払ってまでして修理してLEADにこだわるべきか。
それともいっそ廃車にして新しいのに乗り換えるべきか…。
普通なら安全牌を選ぶでしょう。


でも、LEADはホンダの掲げる「2サイクルエンジンのバイク撲滅運動」の波にのまれ、
懸念だった排気ガス規制も、バイクとしては一番最初にパスしたのに、生産を打ち切られたのです。


新車はもう二度と手に入りません。
乗り換えるにしても、これだけ大柄でゆったり乗れる原チャはほかには無く、
LEADに慣れているだけに、今更小柄なDioなどに乗るのは怖いと、持ち主の母親が言います。
僕だって小柄なバイクに乗るのは抵抗がありました。


母親のLEADを乗り回して、こんな事態を招いた責任と、
…何よりも今まで付き合ってきてくれたヤツですもん。


原チャの修理としては異例の大金を投じることにしました。
このままエンドマークにさせるものか!そんな思いで。


そしてエンジンのオーバーホールが行われ、無事完了しました。
僕の前に、再び元気を与えられたLEAD。エンジン音も軽いです。


苦しそうな音と加速不良の原因は、やはりエンジンでした。
「こんな風になってましたんや」とバイク屋のオヤジさんが差し出したピストンに釘付けになりました。



分かりますか?

ピストンの上部には「ピストンリング」と呼ばれるシリンダー内を機密に保つためのリングが2〜3本入っています。
(写真のピストンには2本入っています)


そのピストンヘッドが欠け、ピストンリング(トップリング)も割れて無くなってしまっています。


これでよく今まで走ってたなと、オヤジさんは感心していました。
ピストンヘッドの方は見た感じ、以前からこうなっていたようです。


前年の今頃に行った暗峠ツーリングのときに、やはり上り坂でオーバーヒートさせた後、走りが不調になったことがあったのですが、
そのときにエンジンに負担がかかって欠けていたのかもしれません。


それから1年間もその状態で走っていたので、シリンダー内で混合気の爆発にさらされ続けた末に、
とうとうピストンリングが耐えられなくなり割れたのだろうと思います。

こんなになってもエンジンが焼きつかなかったのは奇跡、いやLEADの意地か根性でしょう。


そのピストンは頂きました。
これはLEADの勲章として、そして「49のソコヂカラ」の証として、
……時に失速しそうな僕も励ましてくれるんじゃないかなと。


これからも魅せてくれることを期待して。よろしくな、LEAD!


ふふふ、これでまた原ツーが出来るぞ〜。