バスの来ないバス停




このコラムを書いたものの、どのカテゴリで紹介しようか悩んだ末に、ここにしました。
「49のソコヂカラ」は、すべての交通社会人に向けて発信しています。
だから、誰ひとり取り残さないという意味で。


------


前に、年に1本しかバスが来ないバス停を紹介したことがあります(→コラム「春分の日だけ」)が、
まったくバスの来ないバス停があります。




そのバス停があるのは、道路脇ではありません。
老人福祉施設の敷地内にあります。

それは、お役御免となったお古のバス停なのです。



認知症の方が勝手に外に出て徘徊し、姿が見当たらなくなる。
どこかで車道に出てしまい車に撥ねられた…なんて痛ましい事故、聞いたことありますよね。
ご身内でそういう事態になり、右往左往された(されている)方もおられるかもしれませんね。



しかし…、本当に「勝手に」なんやろうか。
認知機能や心身が衰えようが、強く刻まれている遠い過去の記憶が、そうさせているんじゃないのか。



「知らない施設」じゃなくて、きっと、自分の家に帰りたいんやろうなぁ。



   人通りの少ないバス停のベンチにぽつんと腰かけているご老人を見かけると、切なくなるねん。
   これ、おれが齢いったからなのかも。



そう、理由はともかく外に出た人たちも「バス停」のベンチに腰かけて
「バス」を待つことを期待
しているそうです。
これで徘徊を防げると。



たったこれだけのことで人の命だけでなく心をも救えるのなら、バス停はお古でも決して役目を終えてへんと思うよ。

元・敬老の日生まれの僕より。



(↓画像をクリック/タップで新しいタブで拡大画像を表示します)





記事引用:京都新聞 2022年10月3日付夕刊