ECOカー減税の本音




バイクを離れて、車の世界のお話をひとつ。



先日、ホンダのディーラーに遊びに行き、ハイブリッドカー「インサイト」の試乗をしてきました。
ハイブリッドカーとは、エンジン+モーターの二刀流で走る車で、
現在最もポピュラーなエコカーです。


2009(平成21)年4月度の販売台数は、普通車としては初の第1位に輝きました。
プリウスでも成しえなかった快挙です。



ちなみに、インサイトは1300ccのガソリンエンジン+モーターにより、1800cc相当の走りをするとの説明を受けました。

また、モニター画面には、どのくらいエコロジーな走りが出来ているかのアドバイスも表示され、
その総合評価を全国のインサイトユーザーと競い合うことも出来るといいます。
もはや対戦ゲームやな(笑)。

全国第1位は、40km/Lを叩き出してるそうで。
カタログの10・15モードで30km/Lなのに、どこを走ってその値を出したんや?




で、試乗した感想は、
ガソリンエンジンには無い新しい加速

普通の加速は前から引っ張られる感触ですが、
インサイトは、後ろから見えない巨人(≠ジャイアンツ)に ぐいぐい押されている感触で走り、
公称の1800ccクラス以上の軽快さを感じました。


また、プリウスのようにモーターのみで走るモードが存在せず 常にエンジンが動いているなど、
ハイブリッドさを押し出さない、控えめなところが好印象です。

ただ、燃費重視のため、車体が流線型で車内にやや圧迫感があったのが難点かな。
ホンダお得意のミニバンにこのシステムが搭載されたら買うわ、とディーラーの担当者に言っておきました。
(※後にフリードにハイブリッド仕様が出ましたが、買いませんでした(笑))。




バイクにはまだ縁の無いハイブリッドシステムは、車の世界ではずいぶん進化しましたし、
この10年ほどで環境に配慮した車が多くなりました。
2002(平成14)年から、ハイブリッド車、低燃費・低公害車など、環境負荷の小さい車(エコカー)に対して
自動車税の軽減措置は行われていますが、
今年(2009(平成21)年)4月より3年間、エコカーの新車に対し、
自動車税に加えて
自動車取得税と重量税が軽減(どちらも1回のみ)される特例措置
行われることになりました。


その内容は、

対象車両

重量税 取得税
新車 中古車
電気自動車

(燃料電池車を含む)
免税 免税 2.7%軽減
プラグインハイブリッド車 免税 免税 2.4%軽減
ハイブリッド車

(車両総重量3.5t以下で
平成17年度排ガス基準75%軽減★★★★)かつ
平成22年度燃費基準+25%
免税 免税 1.6%軽減

(乗用車など
クリーンディーゼル車

(車両総重量3.5t以下で
平成21年排ガス規制適合のディーゼル乗用車)
免税 免税 1.0%軽減

(平成21年10月以降は
0.5%軽減)
低燃費車 ★★★★かつ
燃費基準+25%
75%軽減 75%軽減 30万円控除
★★★★かつ
燃費基準+15% or +20%
50%軽減 50%軽減 15万円控除

です。


前出のインサイトを新車で買った(189万円)場合、
取得税8万1000円と重量税5万6700円が免除となり、軽減額は13万7700円になります。でかっ!(笑)



こうなると、車メーカーは値段が少しでも安く見えるように、
税金の軽減額を前面に押し出したテレビCMや新聞広告などをばんばん打ちだします。
当然ですね、車両価格の値引きは自動車メーカーなどの懐が痛みますが、減税ならば痛くもかゆくもないし。

ただ、減税の恩恵をほとんど受けられない中古車業界は泣きが入ってるらしいですけど。



とくに減税より、税金が0円、つまり免税になるハイブリッドカーが注目を浴びるのは自明の理です。

ハイブリッドカーの車種がもっとも豊富なのは、言わずもがなトヨタです。
プリウスをはじめ、クラウン、ハリアー、サイ、ノア/ヴォクシー、エスティマ、アルファード、カローラ…



そんななか、レクサスの新聞広告に僕は目を疑いました↓





レクサスといえばトヨタの大型高級車ブランドで、押しの強い面構えに大排気量にモノをいわせた力強い走りが特徴。
僕に言わせりゃ、80年代末のバブル経済を引きずった値段が高いだけの時代錯誤車…の印象です。



なのに、そこには税金「全額免除」の文字が!!
どういうことなん?

減税額も33万とか41万とか51万とかビッグやん。インサイトの減税額13万円がかすんでるよ(笑)。






RX450hとGS450hは 共に3500ccのエンジンを、
LS600hに至っては 5000ccのエンジン搭載
ですよ。
3車種とも実用燃費が10km/Lも行くかどうかも怪しいです。
そんな車のどこが環境対応車、どこがエコカーなんや?



これらの車はハイブリッドなんです。
そして、車重が重いために、燃費基準が甘々で、ゆうゆうと規制をクリア。
しかも、レクサスのハイブリッドは、環境に配慮すべく搭載されたのではなく、
エンジンに加え、効率よくパワフルな出力を得るためにモーターを載せただけなのです。


なので、これら3車種のスペックは以下のようになっております↓

  値段(税込み) 排気量 エンジン出力 モーター出力 合計出力(参考)
RX450h 570万円 V型6気筒・3456cc 249PS フロントモーター 167PS 484PS
リアモーター  68PS
GS450h 787万円 V型6気筒・3456cc 296PS 200PS 496PS
LS600h 973万円 V型8気筒・4968cc 394PS 224PS 618PS

※↑「合計出力」はあくまでもエンジン+モーターの単純な合算であり、両者が同時にフルパワーを出すことは無いそうです。



ごく普通に走る5人乗り乗用車で1500cc・100PSあれば十分なのに、このオーバースペックがいかに無駄かわかるでしょ。



金持ちにしか買えないガソリン食いのインチキ・エコ高級車なんぞ、
税金をなんぼムシリ取っても許されそう(笑)なのに、税金が免除の大サービスなのは、こういうカラクリなのですね。
そんなもん腑に落ちひんがな。



バイクの軽自動車税も、251cc以上は一律4000円(※2016年以降は6000円)ではなくて、燃費に応じて税額を変えても構わへんと思うど。
「2相棒」も実燃費がバイクとしては良くないので、税金がたとえ3倍の12000円になっても文句は言わへんわ。



んでもって、実燃費が良い車の税金を大きく減免すればいいのに、そうはしない。いつものことですが。
ちなみに、外車は1車種もエコカーの認定を受けられていません。軽四もエコカー減税を受けられない車種が多いです。
国内の燃費基準や環境基準は通過していますが、今のエコカー減税の基準はそれ以上に厳しすぎるんです。


たとえば、燃費のいい小型バイク購入の半額を税金で補助してくれたら、きっと売れるよ。このご時世やもん。
15万円の原チャが7万5000円で買えるなら、おれなら迷わず買う
(↑転売対策や中古価格の暴落対策はしなきゃいけないので、現実的じゃないけど)。



今、100年に1度の大不況と言われてますやん。
ことに、耐久消費財である車が売れない。
アメリカの「ビッグ3」のうち、GM(ゼネラルモータース)とクライスラーは破綻しちゃいましたしねぇ。



いわば、これらの減税って、自動車業界を元気にするためだけの施策じゃないのですか?

他の生活に直結する部分での減税って何も無いし。

エコの名を借りた車を売るための「隠れみの」じゃなないの?


車が売れたら経済が良くなるの?
エエ値のする新車に乗り替える経済的余裕がある人は、そもそも不景気と縁が無いんじゃないの?



はっきり言えば、赤字を出したトヨタを救うためのものなんでしょ。
2006年度と07年度の2年連続で単年度決算2兆円以上の黒字で、周囲に憎まれるほどウハウハやったのに、
昨年度(2008年)は、トヨタとして71年ぶりの赤字。それもたかが4000億の赤字くらいでピーピー泣き言言うんやないよ!



免税車に恵まれない日産やマツダなどは、苦境に立たされています。

「乗ってカンガルー」、「ハイブリッドだけがエコカーじゃない!」とか
「i−stop」、「今だ!マツダ!」とか CM打って頑張っているのに、ぜんぜん目立たないし、言うほど売れてない。
事実上税金で救ってもらえる企業はいいですねぇ。


政界がトヨタにコビっているのが良く分かりますわ。
その訳は、他のコラムで書くことにしましょうか。


京都新聞 2009年5月9日付朝刊
JAF MATE  2009年6月号



おことわり:
2009年5月現在、日産のエクストレイル・ディーゼルもエコカーとして
自動車取得税および自動車重量税が免税となっています。