withウォークマン




バイクで年がら年中、一人であっちこっち走りますが、ふと寂しさがよぎることがあります。


一人で走ってるからではありません。友人などとツルんで走ってても感じることですが、
耳がさびしいのです。



車で走ってるときは、たいていラジオやCDやMDやテープをかけたり、TVを観たり(本当はダメですが)してるでしょう。


僕は車を単なる移動の手段としてとらえていますが、「音」があるだけで、単なる移動も楽しくなります。



車を運転するときは、たいていFMラジオを聴いています。
知らない土地に行ったときに、そこのFMのDJの軽快なしゃべりを聴くのがまた楽しい。



山間部などでNHK−FMしか入らなくて、否応無しにクラシックとか浪曲とか政見放送とか聴かされて
雰囲気ブチ壊しになることもありますが(笑)。




ラジオなどを聴かなくても、車に2人以上で乗っていたら会話も弾むでしょう。
それの際たるものが、12時間耐久ドライブですね。これが最強ですわ(笑)。



でも、バイクにはそれら「耳の肥やしになる音」が入ってきません。



無いわけではないですが、強いて言うなら、
風切り音とか、エンジンサウンドとか、
後ろから追いかけてくるK察車両のサイレンや、
「そこのバイク停まりなさい!」などの叫び声とか…音はあれど音色が無いのでつまらないです。

(エンジンサウンドにほれ込む方もおられますので、一概に「つまらない」は失礼かもしれませんが、あくまでも僕の主観で)



2ケツで走っていても走行中だと会話も困難です。
友人と原チャでツーリング中に2台並んで地声でしゃべることもありますが、
どうしても大声になるのでのども痛くなりますし、その状態をずっと続けるわけにもいかないし。



インカムなどの無線機などを搭載したらいい、とも考えますが、それだと参加者全員が無線機を持ってないといけない。
そんな都合のいい話はそうそうありません。



そこで登場するのがウォークマンです。
最近では 「iPod」 のように大量の音楽を録音できるメディアもありますし、なんと言っても種類が豊富、値段も手ごろです。



街を行くバイク乗りを眺めていると、
半キャップの下からヘッドホンやイヤホンを覗かせながら走ってる方を見かけます。
彼らはきっとバイクを単なる移動の手段としてるからこそ、
退屈を紛らわすために音楽を聴いてる
んでしょう。




しかし、ここには大きな落とし穴が。
言うまでも無く、ヘッドホンやイヤホンは耳をふさいでしまいます。
さらに周りの雑音に負けない程度にボリュームを上げると、
外部の音は全くと言っていいほど聞こえなく
なります。



その状態がOKと言えるはずがない。



大体、周りの音が聞こえないほどボリュームを上げて音楽などを聴くことは
道交法で禁止されてる
んですけどね。
緊急車のサイレン、踏み切りの警報音、クラクションが聞えないなど、もっての他ですもんね。



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僕はかつての失敗から、バイクで走るときは音楽は無しです。



大学時代、自分の車を手に入れた友人らと4人で長距離ドライブに出たときのこと。

車3台にバイク1台(←おれ)の異様な組み合わせ。
3人はそれぞれの車で音楽を聴いたり、当時はまだ高価だった携帯(←持ってることがステータスって時代でした)で
走りながら連絡を取り合ったりと楽しそうでした。



かくいう僕はバイクで淡々と走るだけ。仲間はずれ的で、ぜんぜん面白くないわけです。
そこで、秘密兵器を取り出しました。

言わずもがな、ウォークマンです。
音楽を聴きながら走ったら、退屈さもしのげるに違いないと、
ヘッドホンをし、フルフェイスを被って、ウォークマンの再生ボタンを押しました。




いまでもはっきり覚えています。最初に流れてきたのは2018年に引退した安室奈美恵の「Don't wanna cry」
軽快なメロディーにあわせて鼻歌交じり。エンジン音が耳につくのでボリュームを上げてノッていました。
こりゃいいやんと思った次の瞬間、僕の視界には青い海が広がっていました。



そう、音楽に気をとられて道が急カーブしてることに全く気づかなかったのです。



あわてて急ハンドルでカーブを抜け、ピンチはしのげましたが、たまたま対向車がいたら正面衝突だったかもしれないですし、
最悪、ガードレールを突き破って青い海の藻屑になっていたのではと、震え上がりました。
そういう経緯があって、僕は音楽を聴きながらバイクに乗ることはありませんし、これからもきっと無いでしょう。


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1979年に世に出たウォークマンは、それまで家やホールなどで聴くものとしてきた音楽の概念を根本から覆し、
新しい生活スタイルを提唱した素晴らしい家電製品だと思います。
でも、バイクとの共存は難しいようです。



結局バイクに乗るなら、ある程度耳がさびしくなるのは覚悟することが必要ってことですね。
まぁ、音楽や会話が無くたっていいじゃない。バイクはそれ以上に魅力ある乗り物なんやから、そんなものに頼らなくても問題ナシ!!




決してひがんでいるわけではない。