アンカータスキ
季節は秋。お住まいのところでも地域の運動会・体育祭といったものがあるかと思います。
ふた昔前なら、体育祭は地域の一大イベントであり、
家族総出でお弁当やゴザ、もといレジャーシートを持って参加・観戦に行ったものでしたよね。
今ではレジャーや娯楽が多様化し、特に地域の結びつきが弱い都市部では、
わざわざ体育祭で体動かして汗を流すなんて やってられへん…ってところかも知れません。
まぁそう言う僕にしても、面倒やなぁと思いつつも毎年密かに参加してました(笑)。
ああいう元気のある雰囲気が好きなもんで。
だいたいは町内対抗競技の頭数稼ぎが僕のポジション。球入れとか百足競争とかね。
そういや今年は メイン競技であるリレー要員のお声も掛からへんなぁと、ちょっぴりガッカリしていました。
すると、前日の夜に町内の体振(体育振興会)役員が直々に我が家を訪れ、
「リレー出走予定者にドタキャンが出たので、明日走ってもらえませんか?」と
僕に白羽の矢が立ったのでした。
エエで。町内のために一汗かかせていただきます!
って、中年デブのおれが頼られるって、足に自信のあるヤツ、我が町内にはいないんかえ?!
翌、運動会の当日は10月上旬にもかかわらず気温が31℃まで上がる暑い一日でした。
「町内別対抗リレー・予選」は午前中の最終種目。
妙に気合の入った町内もある中、我が町内は更にドタキャンが出て
予選開始数分前にやっとメンバー12名が揃う「寄せ集めチーム」。
もう少しで棄権になるところやったわ。
列の一番最後に並んでいたというだけで僕にアンカーが託されます orz
さすが寄せ集めチーム。順番の決め方まで適当やわ。
こりゃ予選落ちやな。
引っ込み思案で、何につけても先頭はイヤ、でも最後もイヤ。
一番責任のない真ん中あたりがいいもんね〜と長年甘んじてきた僕。
その僕が、上位でバトンを託されると責任重大。
ダントツのビリッケツだと観客の注目の的になるポジションに。
なんということや。でも任されたからには、やるど。
赤いアンカータスキを肩に掛け、たるみをギュッと結んで締め付け 体に密着させると、
人生初のアンカーという大役に、普段見せることのない闘志が湧き起こり、緊張に武者震いする。
そんな予選では、寄せ集めチームにもかかわらず11人は快走し、
なんとトップで最終走者の僕にバトンが回ってきた!
予選落ちどころの話とちゃうやん!
2位との差はわずか数メートル。しかも相手は速そうな人やん。
何が何でも抜かされるもんかーッ!!
実は筋トレのやり過ぎ&前日のボウリングのやり過ぎで全身筋肉痛。
おまけに寝不足で頭痛もしていて走れる体調ではなかったのですが、
トップ&アンカータスキの力がみなぎり、自分でも驚くような速さでグイグイ走る!
背後から2位のランナーの足音が耳に入る。
抜かれてたまるか!
もはや歓声すら耳に入らない。
フルパワーでゴールテープを切って駆け抜けた。トップで完走するのも人生初。
予選一位通過。
このときに初めて分かりましたよ。
アンカーでトップでゴールするのがこんなに気持ちのいいものやったとは!
体育祭のリレーでこの興奮ぶりですから、オリンピックの優勝で雄叫びを上げるのも分かる気がしましたわ。
ちなみに2位のランナーは万歳しながらゴール。
その彼が「ストレートでも全然差が縮まりませんでした」と話してくれましたが、
きっと、トップのアンカーのデブには勝てると思ったんでしょうよ。そうはいくか!(`∀´)
万歳は「参りました」のポーズやったんか?(笑)
16時に行われる決勝まで他の種目にも出ず、家に帰って鋭気を養いました(昼寝)。
たかだか小さなトラック1周しただけなのに、普段の筋トレやランニングでは使わない筋肉を酷使したようで、クッタクタだったんですよ。
短距離走、あなどれず。
そして迎えた最終種目、「町内別対抗リレー・決勝」。
走る順番を変えなかったので、僕には再び赤いアンカータスキを渡され肩から掛ける。するとさっきまで寝ていた体に力がみなぎる。
各予選を勝ち抜けた強豪揃い(?)6チームの先頭ランナーがスタートラインに並び、スタートのピストルが鳴った。
なんとここでも我が町内がトップでバトンリレーをしているではないか!!何度も言うけど寄せ集めチームやど!
奇跡の光景にアンカーの重圧がズシリとのしかかる。緊張しすぎて体がシビれてきたがな。
しかし、第8走者のペースが遅く3位に後退。
更に、第10走者がコーナーで滑ってコケて順位を下げ、
僕がバトンを受け取ったときには5位まで落ちていました。
トップは既にバックストレートを走っているので、逆転優勝はもはや無理。
ならばひとつでも順位を上げてやる!
デブのソコヂカラを見よ!!
(↑肩に力が入ってるなぁ)
今度は歓声どころか周囲も目に入らない!
足がちぎれるかと思うくらいの全力疾走をしたけれど、力及ばずそのまま5位でゴールイン。
順位はともかく、やっぱり気持ちよかったですよ。
アンカーという重責も果たせて満足感でいっぱいでした。
それから、自分の町内のテントに戻り、
町内の応援の方々からたくさんねぎらいの言葉を掛けてもらえたのが最も嬉しかった。
あの太い体で疾走していたのが意外だったようですけど(笑)。
こうして体育祭は無事に終わり、総合順位で万年ブービー賞の我が町内は、はじめて一ケタ台の順位をおさめたのでした。
来年もリレーのアンカーは僕に任せて下さい!!
(2013.10.6)