ホ・ホ・ホータル来い!



こっちのみーずは あーまいぞ、
こっちのみーずは うーまいぞ…

梅雨の前後の風物詩、蛍の季節がやってきました。
夜の水辺に黄緑色の光を放ちながら舞う姿を、テレビなどでよく目にします。
幻想的ですよね。


でも、蛍もめっきり見られなくなったと言います。
僕自身、乱舞してる蛍どころか、生の蛍そのものをこの歳になるまでほとんど見たことがなかったのですから。


蛍はきれいな水辺にしか生息しません。
それでは家の近所のドブ川で蛍を見ようなどとても無理。

さらに蛍が光るのは雨上がりなど、条件が限られているのです。



京都市内で蛍が見られる場所といえば、左京区の琵琶湖疏水の支流「哲学の道」が有名ですが、
その先にある、わが母親の店のすぐ前の疏水でも、蛍が見られると聞き、ぜひ見たいと思っていました。


2003年6月1日、日曜日。天候、曇り一時雨。
母親の店で手伝いをしてると、店先の水がめに生けてある葉にスイカの種が乗っかっていました。
なんでこんな所にスイカの種が…とよく見るとスイカの種に、赤っぽい2つの点々があります。


初めて見る、蛍の姿でした。

お〜お〜、水を求めてここまで来たんかいな、誰もお仲間がいないし寂しかろうに。
と、仕事を放ったらかして見入っていました。


そうなっては気が気でなりません。
事あるごとに店先の水がめを覗いて、蛍が外敵にやられてないか確認モード。


そうこうしている内に日が暮れ、店じまいとなりました。
片づけをそこそこに店の外を見ると、目の前の疏水の暗がりに何人もの人影とささやき声が。
今晩も舞っているのです、蛍が。


疏水べりへ寄りました。


いました。
こんな住宅地の水辺なのに、蛍がここにも、そこにも、あそこにも!
黄緑色の光をやさしく点滅させながら、ゆっくり動いています。


弟も店に手伝いに来ていたので、デジカメで蛍の撮影をさせました。
シャッタースピードが変えられないので、これがベストショットです。


店先の水がめに居た蛍も光を放っていましたよ。

しばし幻想的な世界に浸ったあと、現実に帰り、手伝いの続きに戻りました。


こんなにたくさんの蛍を見たのは生まれて初めてで、興奮しましたよ。
人間の目をもなごませてくれるのですから、蛍って役得ですよね。


僕にとっては、蛍というと、野坂昭如の「火垂る(ほたる)の墓」を思い浮かべてしまいます。
終戦直後の貧しい時代を必死に生き抜こうとする、14歳と5歳の兄妹の前に現れた蛍…。
あのシーンが脳裏をよぎりましたが、
これからは、この日の夜のことを思い浮かべられたら…そう思いました。


(2003.6.10)