モトとレール
僕の毎年恒例、遅い夏休みは、とうとう10月にまたがるものとなってしまいました。 「2相棒」とツーリングに出た行き先は、山陰地方。島根県にしました。 だらだらと旅行記を書いても面白くないので、僕が一番良かったと思うところだけ、 ぎゅうっと濃縮してお届けします。 ---------- 2005年9月30日。晴れ。 この日は、バイク乗り人生初となる、 「ツーリング中にバイクを置いて電車に乗る」イベントを行いました。 場所は島根県の最南端に位置する奥出雲町(旧・横田町)のR314にある 「奥出雲おろちループ橋」。 日本で一番大きい二重とぐろを巻くループ橋です。 かつてはこの区間は急勾配の狭い道でだったそうですが、 道路を改良して通行しやすく勾配のゆるいループ橋へと変貌しました。 |
↑おろちループの全体図 |
どのくらい大きいかというと、肉眼では一望できないほどです。 航空写真を見て「ああ、本当にループしてるわ」と分かる程度。 走っていても、ずっとカーブを曲がっている感じで、ループしてる実感できません(笑)。 この国道と並行するようにJR木次(きすき)線が走っていますが、 この区間は列車も急勾配を一気には上がれないため、 日本でも数少ないスイッチバックを行うことでも有名なところです。 しかも貴重なZ字形の3段式スイッチバックです。 こんな楽しそうなもの、乗っておかなきゃ。 ツーリングで、いつもバイクで走ってる…は、心の中でいささかマンネリ化していたので、 旅の途中で違う乗り物を楽しむ、そういう新しい刺激が欲しかったのです。 |
↑おろちループのふもとと 最高地点の三井野大橋 |
スイッチバックをするJR出雲坂根駅に「2相棒」を停めます。 あ、ど田舎の無人駅ですので、バイクを適当に停めておいても誰にも迷惑がかかりませんし、 盗られる心配もありません(笑)。 貴重品以外の荷物は「2相棒」にくくり付けたままにしていきましたから。 防犯対策もハンドルロックのみ(笑)。 だいじょうーぶ。こんなところで物盗りするやつなんていませんよ。 駅のホームには「延命水」と呼ばれる水が湧き出ています。この水がまたおいしいのです。 飲めば寿命が延びる、縁起のよさそうな水を汲みに来る人は多く、 ポリタンクを幾つも持ってきてる人が、水飲み場を占領して汲みまくっています。 汲んでる人に聞くと、この水を飲んでしまうと、普通の水道水など飲めないと。 これでコーヒーを作るそう。 冷たくて気持ちがいいですので、僕はこの水を飲むだけでなく、洗顔までしました(笑)。 |
↑延命水、スイッチバック 出雲坂根駅 |
そうこうしてる内に列車が入線しました。 いざ列車へ! この木次線は1日に列車が3本しか走らないお荷物路線ですので、 時刻表で事前に列車の時刻を調べておかないと、痛い目に遭います(笑)。 ほかにシーズン中は、「奥出雲おろち号」なる観光トロッコ列車も走ります。 この日は「おろち号」運転日ではないですので、 普通の1両編成ワンマンカーに乗り込みます。 バスよろしく、後ろから乗って整理券を取り、前から料金を運賃箱に入れて降ります。 乗り物の操作から開放される喜び。 どっかとロングシートに座り、車窓を眺めてれば目的地に着ける安心感。楽チン楽チン。 列車はディーゼルの音をがらがらと立てホームを離れます。 乗客は僕を入れて4人。 都市部の早朝の始発列車みたいな感じで何も気兼ねする必要ありません、 が、利用価値が見出せない路線だけに廃線の危機を感じるのは僕だけではないはず。 隣のロングシートに座っていたおじさんは靴を脱いで読書にふけっています(笑)。 北から南へ走ってきた列車が、ここでいったん北に振り、坂を上ったところで、再び南に向きます。 スイッチバックのたびに、 運転士さんがマスコン(って言うんでしたっけ?列車のアクセルのことを)を 持って車内を移動。 反対側の運転席に座り、列車の進行方向が逆向きます。 なんだか不思議な感覚です。 |
↑スイッチバックする線路 |
ループ橋からの風景も良いのですが、列車から見た風景は格別です。 全体にスローペースで、のどかさが一段と増します。 制限速度の標識は30km。急勾配ですので、速く上れないのもあるでしょう。 僕にとっては都合のいい完全リラックスモードです。 また、一番眺めのいい地点では列車のスピードが止まりそうなほどまでに減速し、 シャッターチャンスを逃すこともありません。 ばしゃばしゃシャッターを切りました(笑)。 これ、観光客の僕のためのサービスかとこのときは思っていましたが、そうではないそうです。 実際の運行時間と時刻表を照らし合わせても、1分の狂いもありませんでしたし。 いつものごとく子供のように車内をウロウロして、風景を見逃すまいとする僕。 おバカさんを放し飼いにして大丈夫かオイ(笑)。 楽しくって仕方がないんですよね。 ループ橋がある出雲坂根→三井野原の一駅間で標高差が170m近くありますので、 下界を見下ろすと大迫力です。 至極シアワセ。 |
↑列車からしか見られない 風景(三井野大橋) |
次の三井野原駅で降りても良かったのですが、1駅を歩きとなるとループ橋を数km歩かなくてはいけません。 次の列車で戻るとしても、終点で引き返してくる同じ列車に乗ることになるので、 どうせならと終点の広島県の備後落合駅まで行ってしまいました。 山間をとことこ走り、約30分後に終点に着きました。ここで芸備線と連絡しています。 列車の運賃箱に320円を入れ、駅に降り立ちます。 連絡駅やけど、何もないと聞いていましたので、 ある程度の覚悟はしていました。 が、僕の予想をはるかに上回り、本当に何もありません。 どこをどう見ても何もありません。駅の外に出ても何もありません。 駅員もいません。ただ列車の連絡をするためだけに作られた駅のようです。 |
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列車の出発まで時間があるので、ホームでボケーっとしてると、 乗ってきた木次線の列車の運転士さんが話しかけてきました。 バイクで来てるけど、風景もいいしスイッチバックを体験したかったので列車に乗ってみた、 とか話していると、 「おろち号」のオレンジカードがあるけどいかが?と 僕に営業をかけてきました(笑)。 ま、断る理由もないので買いましたよ。深い緑の中を走る青い「おろち号」が写ったカード。 今回のツーリングの唯一のオミヤゲになりました。 ふたたび来たルートを戻ります。今度の乗客は、僕を入れても2人。 やっぱり廃線の危機が…。 また、「おろちループ」が眼下に広がってきました。行きで要領を得ているので、 先ほどより落ち着いて車窓を楽しめました。 さっき見たばかりなのに、なぜか新鮮さを感じました。そして、降車駅が近づいてきます…。 |
↑木次線の列車 (宍道方面) |
↑芸備線の列車 (新見方面と三次方面) |
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こうして往復1時間半の電車の旅は終わり、再び「2相棒」との旅に戻りました。 もちろん荷物ともども、盗難には遭ってませんでしたよ(笑)。 木次線内にあるおいしいお蕎麦屋さんについてのウンチクを運転士さんから きいていましたので、そのうちの1件にあとから伺いました。 駅舎が蕎麦屋という亀嵩(かめだけ)駅のほうです。 「砂の器」のロケ地にもなったので、知ってる人もいるかも? ややかた目にゆでた蕎麦粉100%の蕎麦はおいしかったですよ。 ツーリングの途中でバイクを離れて違う乗り物に乗る…ちょっとハマりそうです。 |
↑亀嵩駅舎の蕎麦屋のそば |