大阪渡船物語




川を人や車が快適に行き来するためにあるものといえば、

ですね。


小川を人が渡るためだけにかけられている小さな橋や、列車が行きかうためにかけられている鉄橋

ぎしぎし揺れるつり橋
水かさが増すと流れてしまう流れ橋に、水没したりする沈下橋
川ではなく、海峡をまたぐ大きな橋や、陸地の谷間を駆け上がるループ橋
道路に欄干だけがある「はりまや橋」(笑)。



橋といってもさまざまなものがあり、
そこには、生活が息づいています。



しかし、です。
大阪港に程近いところでは川を船が行き来するために、
橋は地上から非常に高いところに架けられ
ていています。

これでは、自転車や歩行者が渡るためには、取り付け道路や階段といったものを経由しないと橋にたどり着くことすら出来ず、
余計な労力・体力を使わされかねません。




そこで、大阪港に近い川辺・水辺には最短距離を結べる、渡船(とせん)があります。 




大阪市内に8ヶ所の渡船場があり、それを全部乗ろうというのが、
大学時代からの友人「脇」が考えたサイクリングコースでした。




2008(平成20)年11月9日決行。

大阪市の南隣の堺市にあるニポン最大のお墓、「仁徳天皇陵」まで車で自転車を運び、
渡船サイクリングのスタートです。
「脇」からいただいた地図…ならぬ地形図には、確かに「渡船」の地図記号があります。


渡船の場所はコチラ↓

番号順に


1:天保山(てんぽうざん)渡船場

2:甚兵衛(じんべえ)渡船場

3:千歳(ちとせ)渡船場

4:落合上(おちあいかみ)渡船場

5:落合下(おちあいしも)渡船場

6:千本松渡船場

7:船町(ふなまち)渡船場

8:木津川渡船場




渡し場はこんな感じでして。



特に分かりやすくしてあるわけでもなく、住宅地の片隅にぽつんとあるので、
事前に下調べをしておかないと場所が分からず迷いそうです。
そりゃそうでしょうね。別に観光地でもあるまいし。あくまでも地元の方々のためのものですから。


渡船は自転車と歩行者専用で、こんな船が就航してます。

大阪市の直営
「OSAKA CITY STAFF」とバックプリントの入った水色の上下を着たスタッフが2〜3名乗り込んでいます。



ちゃんと時刻表があり、それに沿って渡船が運航しています。
なので、初っぱなから時間に間に合わず船に乗り遅れて、待ちぼうけを食ったこともありましたね。





船に自転車を載せ、川や港を渡るのは僕にすればめったにない経験ですので、
ひそかに興奮してました(笑)。



気になっていたことがあって、「脇」に耳打ちしました。


「渡し賃は幾らなん?」


すると、「すべて無料」とのお答えが。
タダには大きなワナが待ち構えていると諺にはあるけど、本当に大丈夫なん?あとで目ェひん剥くような請求とか来ない?(怯)

「脇」曰く、「渡船は歩道の一部なので、お金は要らない」そうで。
バイクは降りて押していても利用できない理由は、このへんにあるようです。




そんなこんなで船に乗り込みます。

写真が暗くて申し訳ないですが、船内はこんな感じ。
あくまでも「橋」の代わりですので、船に凝った装備等はなく、立ち乗りが基本。
転倒防止のため、天井に手すりが設けられてるくらいです。


屋根はありますが、といったレベルのもので、天気がよければ外してオープンカーみたいにしてくれれば楽しそうです(笑)。
ただ、風は吹き抜け放題で冬は寒そうですし、雨も入り放題で雨降り時には確実に濡れます(涙)。


川なので波が立たず船もほとんど揺れませんし、乗り心地もまずまず。
大都市大阪にありながら、ローカル色全開なのがいい。

船は、どどどどっ、と野太いディーゼル音を上げ、水面に航跡を残しながら対岸目指して突き進みます。



僕は写真撮ったりして喜んでますが、ほかの地元の乗客は対岸に着くのを待ってるだけの様子で、
ものめずらしそうにしてるキョロキョロしてる僕だけが浮いてます orz

エエやん。僕は観光客なんやし〜(拗)。


そしてものの2〜3分で対岸に到着

船がロープで手早く係留され、ゲートが開くと、おのおの下船します。
そして、サイクリングの僕たちはスタッフに「おおきに〜」と言い残して、次の渡船場へ向けて自転車を走らせます。



序盤で僕の自転車のタイヤが釘のようなものを拾ってタイヤを貫通しパンクしちゃいましてねぇ。

「脇」が替えのチューブを持っていましたが、僕の自転車にはサイズ合わず、僕も修理キットを持ち合わせてなかったために、
自転車を押して自転車屋を探すなどで2時間くらいロスしちゃいましたし、「脇」にも迷惑をかけてしまいました。

それ以降、長距離サイクリングのときは、
替えのチューブと、チューブを外すために使うタイヤレバーと、携帯用空気入れの3点セットを必ず携行しています。
幸いにも、今のところそれを使ったことはありません。




さて、川を渡る方法は渡船だけではなく、こんなものもありました。
先ほどの地図で、青字で9番と書いてあるところです。

USJにほど近い安治川(あじがわ)エレベーターを使って地下にもぐり、
川の下のトンネルをくぐります。


そのエレベーターは自転車・歩行者専用で定員が58名(!)の巨大なもの。
倉庫などで使われる荷役用のそれを思わせます。


かごの両側に扉が付けられていて、前乗り、前降りが出来るので、
自転車を方向転換させる必要がありません。

ちなみに深夜時間帯はエレベーターが運行停止するので、
写真右側にある階段を使って歩行者だけが行き来できます。
川底の歩道は狭いので自転車を押して…。また巨大エレベーターに乗り、対岸に上がります。

昔は隣にある、もっと巨大なエレベーターで
車も川の下をくぐった
そうですが、
いまでは近くに橋が架かり、お役御免となっています。
日が暮れたころ、阪堺電鉄の路面電車とランデブー
住吉大社のある大阪の下町を電車と競争するのは面白かったですよ。


ちなみに自転車の僕たちが勝ちました(笑)。




渡船とセットにして忘れてはならないのが、大阪7低山
ニポン国内でも有数の「標高の低い山」が集まっているのも大阪でして。

そのうちの3つをサイクリング中に立ち寄り、「登山」しました(笑)。

蘇鉄山(堺市北区) 標高6.8m 天保山(大阪市港区) 標高4.5m 昭和山(大阪市大正区) 標高33m





このようにして、1日がかりの大阪渡船サイクリングは無事…ではないけど、一応楽しく終了することが出来ました。




渡船は大阪の水辺で生活や仕事などされる方々にとって、なくてはならないものだということは
よく分かりました。


しかし。

大阪市のHPに掲載されている渡船時刻表を見ると、
渡船の運行本数は、通勤通学時間帯を除いて
1時間に1〜4本
程度。1往復にかかる時間は5分くらい。


つまり、スタッフは最短で1時間に5分しか働いていない
ことになってしまいます。


繰り返すも、渡船は大阪市直営ですので、
渡船の運行スタッフは全員大阪市の職員


船賃は無料ですから、渡船の運営費はすべて大阪市持ちです。




大阪市はいろいろな意味で金遣いが荒いと世間から叩かれる中、
高い賃金(税金)を払ってまでして市職員が運行させる必要があるのかな?
べつに、市のOBや船舶免許を持ったアルバイトなどに任せても構わなさそうやね〜。

と、渡船に揺られながらしばし考え込んでしまいました。


(2010.4.11)