真夜中に一人でリフトに乗る男!



以前とタイトルが変わってるやないかい!と 突っ込まれた皆さんへ。
この文章を読んだ友人が、もっとセンスのあるタイトルを付けてくれたので、拝借しました。

でも、こんなのあんまりだー!(号泣)

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僕、自己紹介の項目にも書いたことがありますが、冬はスキーヤーに変身します。
小学3年から親父に連れられて、滋賀県の伊吹山スキー場に行ったときから、毎年滑りに行ってますね。


「スキー」と聞くと、ジンマシンが出るというか、身の毛がよだつというか、めまいがするとか、吐き気をもよおすというか……、
とにかく、何がしかのトラウマを持っておられる方も多いと思います。

「どうして スキーでトラウマになるの?」とお思いの方は、きっと雪国育ちなのだと察します。
理由は、本当は「知らぬが花」ですが、参考までに続きを読んでください。


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それは、僕たち雪国育ちでない人の結構多くが、
小学生・中学生・高校生時代のいずれかに「スキー研修」を受けさせられてるからです。


いまどきのクソガキ共…お子様たちなら、何がうれしくて、スキーなんかに行くんや、USJとかに連れて行け! と、言うでしょうし、
先生方も保護者からの評判を落とすまいと、ウケの良いほうに流れていることでしょうけど。

類似品としましては、他地域の学校の修学旅行で 京都に来る(僕は京都人なので「行く」は表現が不適切)が あります。

住んでる人間からすると、こんな所にきて何がうれしいのやろ、と思うのと同じですね。


ま、今のことはこっちに置いといてですね、当時は、「研修」という聞こえのいい表現で持って スキー場へ連行する学校が多うございました。

かく言う 僕の通っていた 某・府立高校の「研修旅行」という名の修学旅行は、
長野県の菅平スキー場へ4泊5日(車中1泊を含む)のスキー研修
でした。

しかも、大学受験や就職活動に差しさわりが出ないようにという余計なお世話な配慮か、1年のときに行っています。

僕は下手なりにも、スキーができるのでそれなりに楽しかった思い出がありますが、滑ったこともない同級生にとっては、
拷問そのものだったと思います。

それに、そんな彼らが、「研修旅行」をきっかけにスキーをするようになったとは、ついぞ聞きませんでしたからね。

僕が、もしも教員の立場で修学旅行を立案するとしたら、少なくともスキーを始めとする「研修」は考慮に入れないでしょう。

おれかって、今の高校生の修学旅行みたいに、海外とか行きたかったわい!


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長い前置きになりましたが、ここからが本題です。


下手の横好きのまま のんべんだらりとスキーを続けて、今に至っている僕です。
そんなやりかたなので、キャリアが長い割に 上達が見られず、
友人と年に2〜3回(全部日帰り!)滑りにっても、イマイチ楽しめてない自分がありました。


これではいけない、そう思った僕は、自分に試練を課すことに決めました。


一人でスキー場に行って、猛特訓やッ!!!


思い立ったが吉日、インターネットでスキー場情報を調べていると、近場で「土曜の夜はオールナイト営業」してるスキー場を発見。
ナイトスキーをしたいと かねがね思っていた僕にピッタシ!
早速車に乗って、スキー場に向かいました。
時は2003年2月15日23時。
ターゲットは、「びわ湖バレイ」。京都市の自宅から30km。車で1時間弱。

★びわ湖バレイ(滋賀県志賀郡志賀町木戸1547−1 電話:077−592−1156(冬季のみ))

琵琶湖の西側、比良山系の一つ、
蓬莱山(標高1174m)、打見山(標高1103m)の山頂付近にひろがるスキー場。

関西地域から高速のアクセスが比較的良いので、利用しやすい。

9つのコースと5ヶ所のリフトを備える。内、オールナイトは6コース。

ただ、山頂にあるスキー場へは、ゴンドラで行くしか方法はなく、
料金が往復
1800円と高いのがネック。もっと安くしなさい!



1995年ころに、スノーボード(以下、ボード)が大ブレイクして以来、スキー場の様子は一変しました。
いまや、どこが「スキー場」やねん!と叫んでしまうほどの ボーダー(※ボードをする人の意)の山。

スキーヤーは隅っこに追いやられてしまって、ボーダーが幅を利かしています。
最初のころは「ボード禁止」と硬派なスキー場があったのですが、それでは客が遠のいてしまい、次々に軟派なスキー場に成り下がっていきました。

モチロン、「びわ湖バレイ」も例外ではありませんでした。



下界でリフトの6時間券(3500円+保証金1000円)とゴンドラ切符と購入し、
4人乗りのポンコツゴンドラを独り占めして、標高1100mの「びわ湖バレイ」に到着。
時は、日付が変わって、2月16日0時。


この時間なのに、ゲレンデはボーダーの大安売り。
僕も流行に乗って、2年前に長いスキー板をやめてショートスキーに転向したので、人のことは言えませんが(笑)。



さっそく特訓開始。
実は、一人でスキーに行くのは初めてだったんですよね。
いつもは、同行の友人に気を遣ってもらってばかりで、正直、後ろめたいものがありました。


今こそは、自分のペースで滑れると、内心喜んでいました。
天候は小雪、気温0℃、風力3m。雪質は(人工雪なので)カキ氷並。びわ湖バレイにしたら、なかなか条件イイやん!


この時、既に下界では雨が本降りとは露知らず
友人たちに「滑りに来てんねん、いいやろー」と 余裕しゃくしゃくでメールを送っていました。

緩斜面でフォームを意識しながら、足慣らしを兼ねて何本か滑り、
初のナイトスキー、それも、一人で気ままに滑れることに気を良くしていたのです。
昼間のスキー場と違って、幻想的な風景に感動。クセになりそう。

が、ふと我に返ると、一人ぼっちで滑ってる人が少ないことに気づきました。

大抵は、友達同士や、カップル、家族連れ(深夜なのに…)。
4人乗りのリフトに相乗りすると、一緒に乗ったメンツが↑の何れかという事がほとんどで、
そいつらが仲良くしゃべってるのを見ると、のけ者にされた気がして、急に虚しくなったのです。


4人乗りリフトに相乗りしたとき、耳をそばだてて横のヤツの会話を盗み聞きしてやりました。
でも、小さい声で聞き取れなかったり、自分たちの滑りがどうのこうのばかりで、ちっとも面白くありません。
そのなかで、秀逸だったのが↓


  学生と思しき男同士2人
  「前に、●●へ滑りに行ったときにな、▲▲が売店に行ってボラギノールありますか?』って言うとんねん。
  無かったみたいでなぁ。それくらい置いとけよ、ってな」
  「スキー場で痔やなんて、(売店でも)前例が無かったんやろうな」
  「ああ、でも▲▲が、そこまで言うんやから、よっぽどパックリ切れたんやろう」(←「切れ痔」か?)
  etc.etc……。


リフトの端っこで2人と反対に顔を向け、体をプルプル震わせながら 必死に笑いをこらえる僕。
リフトを降りて、すぐに2人と反対のコースへ滑り降り、人気が無いのを確認して、思い切り笑いました。
第3者のおれの横で、そんな会話を平気でするとは、相当度胸のあるヤツやな!!

ゲレンデで、地べたに座って
ボードのビンディング(※板とブーツを結束する金具)を装着してる連中も楽しそう。

でも、装着し終わって 滑れる状態になってるのに、
まだ座ったままペチャクチャ喋ってやがるのは どうかと思います。


ヤツらは、コースを塞いで迷惑をかけてるのが解らないのでしょうか?

血圧がインフレを起こしそうなのを まぁまぁ落ち着いてと、もう一人の僕が声をかけてます。


でも、コースの途中で寝転んでイチャイチャしてる 超・大馬鹿ボードカップルを見たときは、
ド真ん中で邪魔しやがって〜、轢きコロスどー!!(-_-x) と、マジキレしそうでした。おおっと失言。

僕も、一応大人ですので、連中を轢くなど物騒な事は、さすがにしませんでしたが、
代わりに、わざと間を割って滑り抜けてやりました(笑)。


エコヒイキではなくて、ボーダーよりスキーヤーのほうがマナーが良いですよ。
だけど、見渡す限りボーダーがうようよ。カービングスキー派がチョロチョロ。僕と同じショートスキー派がパラパラ。
昔ながらの「長いスキー板」派は、たった1人しか見かけませんでした。

民主主義の原則で言うなら、ボーダー派の圧倒的勝利、さしずめ“与党”です。
僕たち“野党”は、ヤツらに服従するしかないのでしょうか!!?うううう(涙)。


ま、エエねん、今日は特訓に来たんやから、独りぼっちでも寂しくないもんね〜と、ムリヤリ強がり、
アイツら「障害物」をかわす滑りをして腕を上げようと、割り切ることに。


滑ってはリフトに乗り、リフトに乗っては滑り を、休憩もせず延々と繰り返します。

「びわ湖バレイ」と下界を結ぶゴンドラは午前2時〜5時は運休し、「陸の孤島」化するので、
1時過ぎから「2時で終了組」が下山していきます。ただでさえ短いリフト待ちが、待ち時間なしで乗れるようになりました。

そうなりゃ、加速度的に滑るペースが上がります。1インターバルが最速5分でしたからね。
それでもって、休憩した時間が、トータルしても30分も無かったので、6時間で何回リフトに乗ったか分からないです(笑)。


普段、滑りに行くといったら、5〜6本滑って、レストハウスで1時間ほどマッタリして、また数本滑って、レストハウスでメシ食って…で、
リフト券のモトが取れて上出来ですので、今回が文字通り「特訓」なのが分かっていただけるかと思います。


ほかのスキーヤー・ボーダーも似たり寄ったりだと思いますよ。
レストハウスは何時行ってもビール飲んでる人や、寝てる人で込み合ってますし。
案外ひ弱なのかもね、休憩時間のほうが長いミナサン(笑)。


当然、それだけ集中して練習すると、滑るたびに上達しているのが、ハッキリと分かり、それが心地よい快感に。

滑り始めてから2時間余り、今までの見るに耐えないヘナチョコの滑りがウソのように攻撃的に変わり(※当社比)ました。

時間は午前2時半。温かいカフェオレと板チョコでエネルギーを補給し、元気100万倍!
リフト券もまだ3時間半使える!
楽しくて楽しくてたまらないので、いくら滑っても疲れが出て来ないし、第一、休憩するのも時間が勿体無いんです。

気分は絶頂にありました。  


ところが、僕の幸運も逃げ出し始めたのです。


午前3時。滑り始めて3時間が経とうかという頃になって、ガスがかかり視界が不良に。
追い討ちをかけるように降っていた雪がミゾレに、遂に雨になってしまいました。
調子に乗ってたのに、雨で雪が溶け出し、べチャべチャになって滑りにくくなりました。

ウェアもグローブもボトボトに濡れて、雪のときより返って寒くなるし。
なぜゆえ、スキー場で雨に降られなアカンねん!と怒ってみたところで どうにかなるわけでもなし。


下界行きのゴンドラは5時まで運休しているので帰れないし、レストハウスは寝てるヤツらで満員。
それに、ここでやめたら、リフト券も勿体無いし。
根が貧乏性なもので(笑)。

これも試練なのだと いいほうに考えて、雨で地肌が見え出したゲレンデを 何かに取り憑かれたように滑り倒しました。
それこそマシンのように。
この間、↑以外に書くことが無いくらいに。


そして、リフト券の残り時間がゼロになった、6時20分、特訓終了。
雨は結局止みませんでしたが、そのおかげで滑る人がさらに少なく、コースを独り占めできました。

滑ってるときは、空を見上げる余裕もありませんでしたが、空も明るくなり始めていました。
もう、最後のほうは足がガクガクで、1回だけ転倒しましたが、他は無傷。
よくここまで体力、気力が持ったもんだと、自分自身の底力に感心したものです。



ゴンドラをまたしても一人で占領し、満足に満足を上乗せして下界に下りました。
これで、「本番」でも、友人たちとタメを張って滑れることだろう。


下界は「びわ湖バレイ」以上にキツい雨でした。


そこには、これから「びわ湖バレイ」に上がるボーダー共が多数いました。


「上に行くのはやめておいたほうが良いですよ、びわ湖バレイも雨降ってるし、
雪はべチャべチャで地肌も見えてるから」とアドバイスしてあげようかと一瞬考えました。
が、やはり目の敵のボーダーのこと、行って悲壮な顔をするがいい!!と不敵な笑みを彼らに投げかけ、
その場を後にしました(笑)。


睡魔と闘いながら自宅に到着したのは、8時前。荷物の整理もそこそこに 昼過ぎまでバタンキューしたのは言うまでもありません。

(2003.2.16)