国民審査



過日 衆議院が解散されて、総選挙が11月9日に行われます。
選挙カーが朝からにぎやかですね。

「マニフェスト」が どうのこうのと…。
「選挙公約」=「実現しない」イメージがあるから、
聞こえのいいように横文字で言ってるだけって事に気付いてる人は、多いのだろうか??


それに先立ち、全国の有権者の皆さん宛に選挙のハガキが着ていると思います。


僕、選挙日は副業(問題発言)が忙しくて、投票が出来ませんので、今日(11月2日(日))不在者投票に行ってきました。
今まで選挙を棄権したことがありません。せっかくの権利を放棄するのは もったいないですもんね。
不在者投票は初体験です。どんなして投票するのか楽しみにしながら、我らの「山科区役所」へ向かいました。


区役所の2階の投票所に入ると、思っていた以上に多数の方が投票に来られていました。
20代前半と思しき青年や、車椅子に乗ったおばあさんも来られていて、感心しました。


さて、投票ですが、今回は一人3票を投じます。衆議院小選挙区・衆議院比例代表・国民審査の3つです。

ここで初めて気付いた方もおられるでしょう。
「国民審査」って、何や? と。


選挙のはがきをよく見てください。

「衆議院議員総選挙」の下に「最高裁判所裁判官国民審査」なる、長ったらしいモノが書き記されています。
これが、今回のコラムの一番のポイントです。


で、最高裁の裁判官の何を投票するのか?大半の方は分かっていないと思います。

まず、最高裁は、
内閣の指名によって、天皇が任命した
最高裁長官と、
内閣が任命して、天皇が認証する
14人の裁判官の、
計15人で構成されています。


続けて、憲法79条・第2項に、こう記されています。

最高裁の裁判官は、任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際、国民の審査を受ける。

その後10年を経過した後に行われる衆議院議員総選挙の際、また国民審査を受け、
その後も同じように繰り返される」



つまり、
最高裁の裁判官については、その職務の遂行について国民が厳重に監視を行うとともに、
直接に、厳正な批判を下せるようにしていると、僕の持っている政治経済の本に書いてありました(笑)。


くだいた言い方をすれば、
最高裁の裁判官が、「憲法の番人」としてふさわしいかのチェックを国民にゆだねている
んです。

最高裁が扱うのは、憲法解釈や、法令違反などを争う裁判に限られているからです。


それは分かったけど、実際には国民は何をするの?と言うと、
上記の国民審査の条件に該当する最高裁裁判官を辞めさせるかどうかを投票します。
今回の国民審査にかけられる裁判官は、その内の9人です。


普通の投票なら、投票用紙に候補者名や政党名を記入したり、すでに投票用紙に記載されている候補者の欄に丸印をしますよね。

ところが、国民審査だけは違います。
辞めて欲しい人の欄にだけ『×』を記入するんです。


それ以外を書くと無効(「○印」も無効)ですし、何も書かないとOKの意味(←重要)になります。

これにより、過半数の「×」投票を受けた裁判官は罷免(←ひめん・つまり、クビ)になります。
一言で言えば、最高裁裁判官のリコール(解職)投票です。



それだけの予備知識を持って、不在者投票に臨みました。
区役所の担当者に「国民審査とは何か?」とわざとたずねて、
担当者がちゃんと理解しているかどうかチェックしてみました(笑)。

担当者、ややシドロモドロ。でもまぁ一応理解できる内容を説明できたので、ギリギリ合格の60点差し上げます。もっと勉強しといてよ(笑)。


ちなみに、投票所に国民審査についての説明が何もなされていません。
それだけで、国民審査がどういう扱いをされているか丸分かりです。


さらに、「裁判官がどういう業績を残しているか、分かんないやん」と言う僕に、
担当者は「その資料が、今日届く事になっていまして」と申し訳なさげにこたえます。なんと無責任な!


今日(2003年11月7日)の新聞に、
9人の裁判官の経歴や「どういう判決を下した」とか「こういう信条を持っている」とかのコメントがが新聞の片隅にチョロッと載っていました。
読んでみましたが、内容が高度すぎて、理解できません(涙)。
さすが最高裁の裁判官を務めるだけあるわ。もっと分かりやすいコメントせんかい!!


ま、不在者投票する今の時点では、そのデータすらもありません。
「それじゃ、何の判断材料もないまま、投票させるのか?」とやや不機嫌な僕に、
担当者は「それなら棄権も出来ます」と。
そんなん有りかい!!?


「いや、投票します。権利ですから」と投票用紙を受け取り、9人全員に「有効となる文字を記入」しました(笑)。


実は、最高裁裁判官の国民審査は、
恒常的に行われる唯一のリコール(解職)選挙
だって知ってましたか?


議会や首長(市長など)、議員など、特別職の公務員のリコール(解職)には、有権者の3分の1以上の署名が必要で、
更に住民投票で過半数の同意がいります。
他にも、何がしかの是非を問う住民投票をしたくても、有権者の50分の1以上の署名を集め、条例を制定させないと出来ません。
…など、公務員を住民の手で辞めさせようとするのには、非常に手間がかかります。

なのに、最高裁の裁判官だけは、誰でも投票により辞めさせることが出来ます。


それほど重要な意味を持つ投票に無関心な方は多いです。
結果がしっかりとそれを教えてくれます。

前回の国民審査(2000年6月)のときは、対象者全員、

無記入 (OK) 約5000万票
×」(罷免(クビ)) 約500万票

でした。

もちろん、過去に国民審査にかけられ、罷免されたカッコ悪い裁判官は1人もいません。

おおかた「訳わからんから何も書かずに投票しよう」って方が大多数なんでしょう。
この類の投票の時は、普通、投票される側は罷免を恐れてビクビクするもんでしょうけど、
これに限って言えば、当の裁判官たちも「どーだっていいや」と思ってるに違いありません。

こんな国民投票いらんやん!

「国民審査で最高裁裁判官をクビにする」運動でも起こせば、より国民審査が身近になるかと…。
失礼しました。

(2003.11.3)