日本一長い・下道路線バスの旅




総延長170km、停留所数169、乗車時間6時間半。
下道だけを走る 一路線の営業距離が国内最長の路線バス。

奈良県橿原市の近鉄・大和八木駅と、和歌山県新宮市のJR・新宮駅を、
紀伊山地を縦断する路線、

奈良交通の特急301/302系統、「八木新宮線」










3枚目の路線図の写真だけは、画像をクリック/タッチすると、新しいウインドウ/タブで拡大表示されます。



交通社会を語るなら、やはり乗っておきたい。
長年の夢がかなって、2022年のGWに乗りに行きました。

長距離運行の路線バスというと、高速バスに代表されるように観光バスタイプの車両が一般的ですが、
大和八木線はごく普通の路線バスで長距離を走ります。











専用車両ですよ。全面ラッピングで派手です。

しかもルートの8割がカーブや勾配のある山間部という、乗り物酔いしやすい人泣かせの路線。

ただ、山深い中を走るだけではなく、
この路線は十津川温泉や熊野本宮大社、熊野古道といった、紀伊山地の歴史ある名所を押さえているところが◎。




コロナの影響で3年ぶりに行動制限のないGWだけあって、旅行者は多いんやろうなぁと思いながら近鉄・大和八木駅の改札を出て、
バス乗り場に行ったら、バス待ってる人、数人(汗)。
僕の知っているGWといえば、人だらけ・渋滞だらけのオーバーツーリズムもとい「観光公害」が標準ですので、
閑散としている駅前に拍子抜けましたよ。とてもGWの真っ最中と思えへん。


乗客は約15人。車両は普通の路線バスといえども、
長時間の乗車が快適なよう、座席の背もたれが高くなっていて、座り心地もよかったです。
カップホルダーも備わっていましたし、ペットボトルも置けますよ。





だって、終点の新宮駅まで





長っ!


そして、特筆すべきはバスの運転。
バス酔い対策にあらかじめ強力な酔い止めを飲んでたんですが、
酔うどころか、無駄のないスムーズさに気持ち良くなって何度もうたた寝してましたよ(笑)。



携帯(ガラケー)の着信は無音に設定し、スマホは機内モードにして、両方ともリュックのポケットに仕舞いました。
楽しいバス旅やもん、俗なデジタル機器を触るよりも、車窓を楽しもうと、ずっと窓の外見てました。

新緑の五月晴れ。コンディションは文句なしです。
自分で運転してると景色をずっと見ているわけにはいきませんが、乗客である今は心おきなく豊かな自然の景色に抱かれていました。
裸眼視力が微妙な僕ですが、優しい自然が僕の目を癒してくれ、メガネをかけるのを忘れるほど。
一時的と思いますが、視力が良くなっていたのでは?



奈良盆地南端の五條市〜新宮市の紀伊山地縦断ルートであるR168は、バイパス化が進んで走行の難易度は大きく下がっていますけど、
秘境は秘境のまま。

バスは途中3回の休憩があります。長丁場やから運転手さんも乗客もくたびれるしね。



奈良盆地最南端の「五條バスセンター」で市街地とお別れのあいさつをする10分間。
日本一の吊り橋である、「谷瀬の吊り橋」前で20分間。
源泉かけ流しが自慢の「十津川温泉」で足湯が楽しめる?10分間。


の3本立て(笑)。



これは、谷瀬の吊り橋。






と書いてあるのに、どう見ても100人は渡ってます(笑)。



さっさと行けば休憩時間で吊り橋の往復も可能だとか。
超高所恐怖症の僕は、渡るどころか橋を前にして足がすくんでました(笑)。



そしてこのバスのもうひとつ特筆すべきところに、運賃表があります。
乗車時に整理券を取りますが、その番号がすごいことになってます。



五條バスセンター付近で、



1ページで収まっていたものが、



谷瀬の吊り橋(上野地)で、





一画面に表示し切れず、2ページに(汗)。




なお、運賃箱の横に紙幣専用箱が後付けで設置されてます(笑)。
路線バスで運賃を紙幣で払うほど普通は長時間・長距離を乗らないでしょ?(苦笑)
ICカードでキャッシュレス決済も可能ですが、ここはぜひ現金で…。




僕は途中の十津川温泉郷で一度下車し、
「ホテル昴」併設の外湯で100%源泉かけ流しの温泉を堪能しました。










運賃表は3ページに…。




十津川温泉は、すべての入浴施設が加水・加温・殺菌消毒なしの、正真正銘 源泉かけ流し。


「湯水のごとく」の諺どおりの豊富な湯量で、極楽でしたよ。
あふれたお湯はホテルの裏手の側溝に流れ出てまして、触ったら暖かかったです(当たり前か)。
こんなきれいなお湯を使い捨てにするくらいなら、ポリタンクに入れて持って帰りたかったですわ(笑)。




そして次の便のバスに乗り、一路新宮へ!
あ、「八木新宮線」は両方向とも毎日1日3本走ってまして、途中下車して観光などができるようになってます。

途中下車可能で2日間有効な「168バスハイク券」を使うと、全線通しと同じ料金でバスを乗り継いだり、
2日間かけてバス旅を楽しむことも出来るんです。





奈良県から和歌山県に入り、熊野本宮大社で、初めて席が埋まり、立ち乗りの乗客が少し出ました…が、
次の 湯の峰温泉で降車してしまい、また全員着席できました。
GWといえども、この程度なんです。信じられません。
それ以外は途中のバス停で乗客の乗降があっても、乗っているのはほぼずっと10名あまり。



十津川温泉にしても数えられる程度の人しか見かけませんでしたし、
最も人が多かった谷瀬の吊り橋でも、それでも100人ほど。
当然、国道168号線も空いてました。


のんびりとした環境にすっかりなじんだ僕。

京都の大混雑に慣れてしまっていたので、こんな人の少ないGWがあっていいのかと何度思ったことか。
あんな喧騒の中で神経すり減らしながら毎日を過ごしていることが馬鹿馬鹿しく感じていました。




十津川からバスに揺られること2時間。
終点の新宮駅に到着!時間は18時を過ぎていて、日は傾いていました。




すごく長くバスに乗っていたはずなのに、あまり時間を感じませんでしたね。
ずっと車窓を楽しんでいたからか、信号も渋滞もなかったからか…。










運賃表がとんでもないことになってます。4ページって(滝汗)。



全線乗車で運賃は5350円!!距離や時間も凄いけど、運賃も凄いです(笑)。

なお、前述の「168バスハイク券」も同額です。
全線を1乗車で制覇すると、記念品が貰えます…が、個人的には途中下車して有り余る自然や歴史を堪能してほしいところ。



そして、この時間からではJRなどの公共交通機関では都会へ出ることは出来ず、新宮での宿泊が必須になります(笑)。



翌日、JRを乗り継いで京都へ。




紀勢線・関西線・草津線とローカル線ばかり乗り継ぎ、バス顔負けの7時間もかかりました orz

列車もガラガラで、やっぱりGWと無縁でしたね。
京都などの観光地が異常なだけなんやね、きっと…。



(2022.6.4)