大文字山から見下ろせば



毎年お盆に行われる五山の送り火
マニアの僕は毎年バイクで全部の送り火を巡るといったヒマなことをしていますが、送り火以外の日はそこに登れるのはご存じでしょうか。
東の夜空を焦がす「大」の字のある大文字山は、ミニ登山の定番となっています。
「大」の字から眺める風景の良さは京都市内髄一。



ゴールデンウィーク2日目の2007年4月29日(日)
向かいの家に住む幼なじみの「達(仮名)」と自転車に乗って、大文字山を目指しました。



登山ルートは2つあり、ひとつは山科区の毘沙門堂の奥から登るルート
こちらは山歩きと呼べるレベル5位の難度です。

そして僕たちが選んだ、銀閣寺から登るルート。レベル2の初心者向け。
アイテムは水筒とタオルだけで十分。ハイキング+α、と言ったところ。

お弁当を持っていけば休日の家族サービスにもピッタリ。
僕の家が近くだったら脚力向上に毎日でも登りたいほどやね。


でも、山は山。自然が相手ですからナメたらケガはするし、コースを外れたら遭難するかもしれません。


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僕と「達」は自転車を漕ぎ漕ぎ、九条山を越え、銀閣寺へと向かいます。

途中、蹴上浄水場のツツジを見、
琵琶湖疏水インクライン下をくぐるレンガ造りトンネル「ねじりまんぽ」を通り、
南禅寺を抜け永観堂を横目に眺め、
新緑の哲学の道の地道で砂埃を立て、法然院を過ぎ銀閣寺へのベタベタの観光ルートを、
たくさんそぞろ歩いている観光客を蹴散らしながら激走(笑)。
いかなる乗り物でもやってることは一緒ですわ(爆笑)。



この辺の道は登り坂が多く、勾配もかなりあります。

有り余った体力+21段変速マウンテンバイクの僕は悠々と走りますが、
前タイヤが歪み、カゴが取れそうな見た目盗難車の、1段変速オンボロママチャリの「達」
日ごろの運動不足も手伝ってゼーゼー言ってます。

僕の後ろで「ペースが速い!」とピーピー文句をたれています。
自転車を換わろうかと言っても「いいよいいよ」と断る「達」ですので、ひとり苦しめさせておきました(笑)。



家を出てから35分、7kmを走って銀閣寺裏の大文字山登山口に着きました。

丁度いいウォーミングアップだった僕に対して、ママチャリで走りきった強情な「達」はすでに体力ゲージが黄信号です(笑)。


僕のペースで全ては進んでいますので、自転車を停めるや否や登山開始。
さっさと歩いたら20分くらいで登れるよーと、文句三昧の「達」をなだめ、登山道を歩き始めます。


最後のほうに石段もありますが、基本は石ごろごろの山道。
普通のスニーカーでもOKですが、ソールが柔らかいので足の裏が痛くなるかも。



仕事のお得意さんの方と次の日曜に滋賀県の比良山を登るから、これを練習に…と言ってる「達」は、
歩き出して5分もしないうちに瀕死
(笑)。「もうアカンわ」と子どものようにダダこねてます。
こんなところでKOされててどーすんのん。来週お得意さんの前で恥をかきたくなかったらしっかり歩くッ!


かと思ったら突然ムキになり走り出したり、U字のゆるいカーブをわざわざ直線的に急斜面をよじ登ってショートカットする「達」。
頭の構造がよく分かりません(;´Д`)



資材運搬用のリフトを見つけ「あれに乗せて上まで運んでいって!」言ったり。
リュックを背負ったチビッコたちから、僕たち2人の年齢を足したのより高齢な方まで広い年代の方々が楽しそうに歩いているのに、
僕たちときたらハシャぎまくって…山に来てまで浮いてるやん(-_-;)



湧き水が飲めるようにしてある場所があります。飲んでみると、混じりっけの無い透き通った味がします。おいしい。


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当初の予定より約5分遅れの 登り始めて約25分、それまでの木々が生い茂っていた視界が開けます。
標高330m・「大」の火床に到着。ふもとからの高度差は約240mです。



そこから見えるは、180度の大パノラマ。

雲ひとつ無い青空、鮮やかな新緑、そして遠くに見える下界の風景。
京都タワーや、他の送り火の火床、京都御苑や下鴨神社の森
も見えます。

これだけの風景です。「守るべき京都の眺望景観・借景38」に選出されるだけあります。




↑京都盆地を西へ望む



今年初の夏日となった暑さはどこへやら、さわやかな風が体を包み汗も吹き飛びます。
あれだけ文句をたれていた「達」が感嘆の声を上げています。
「ここやったらK帯通じひん(通じない)し、仕事が嫌になったらここへ逃げて来るわ」と。
いや、ここは見通しいいからK帯通じるで(笑)。




遠くから見ると文字に見える「大」ですが、実際には火床は段々畑状に75基が配置されています。
1画目が80m、2画目の左の払いが160m、3画目の右の払いが120mあります。

地図上で見ると「大」の字は高低差50m、幅120mもある巨大さ。

↑「大」の2画目を見下ろす。火床は「=」型 ↑同じく「大」の2画目を見上げる ↑「大」の3画が交わる「金尾(かなわ)」
と呼ばれる火床は「+」型



普段の火床には何もありませんが、送り火の翌日早朝に火床へ行くと、
護摩木(ごまぎ)や割り木の消し炭がたくさん残っています。
からげしと呼ばれ、和紙に包むとお守りになります。

誰もいなかったらサイコーなんですけど、GWさなかの行楽日和だけあって人が多い。

今の段階でもうじゃうじゃして人口密度高いのに、
途切れることなく次から次へと人だけでなく
犬まで連れて登頂
してきます。



大学生らしき集団が、今では見かけなくなった真鍮メッキしたアルマイト製の大鍋を持って歩いています。
おいオマエら、まさか神聖な大文字山の火床をカマド代わりにしてカレーとか作るんと違うやろな?!

そういうことは先に言ってもらわんと困るなぁ。
本当にカレーやったら、Myご飯(お代わり付)とMyスプーンを用意してくるのに(惜)。


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十二分に大文字山を堪能したので、下山します。昼前から登りはじめておなかが空いたからが本音。
食べ物どころか飲み物ももって行きませんでしたから、お弁当をを広げている家族連れを見てるとよだれが出てきそうで(笑)。



登りより下りのほうが足にキます。でも、距離が分かっているので気楽です。「達」なんかさらにハシャいでますし(笑)。
ケガも無くふもとまで降りてきました。山上でのすがすがしさは消えうせ、ムッとした暑さと、銀閣寺道の人の洪水に辟易しましたね。

その近く、白川今出川交差点の南東に昔ながらのアイスキャンデー屋があります。
素朴な味わいが自転車+登山(?)の疲れを癒してくれました。

と言うのは僕だけであって、帰宅すると「達」は前日に12時間も寝たのに「また寝るわ」と家に引っ込んでしまいました。
相当くたびれさせたみたいで(笑)。



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京都の名所はどこも人ばっかりで疲れるわ…とか、
ありきたりな名所旧跡めぐりに飽きたり、喧騒を離れたい人は大文字山へどうぞ。
僕が自信を持ってオススメします。
すぐそばの銀閣寺に行くぐらいなら、こっちのほうが断然登る価値があります。



他府県から京都観光に来てわざわざ山登りをして汚れる人は稀(と思う)ですし、楽を覚えたズボラ人間もまず来ませんから、
集まる人のクオリティも高めですよ(笑)。