20年後のチョイノリ




諦めてはいなかった。

------


2023年の大阪モーターショーでのこと。

スズキのブースの端にぽつんと展示されていたのを僕は見逃さなかった。



20年前の不況とデフレのまっただ中に現れた、あのチョイノリである。


かつて、ネーミングにあるように思いきり割り切った仕様で登場(→コラム「スズキの逆襲」)。


当時流行した「価格破壊」を地で行く5万9800円と破格で 自転車からの乗り換えを促す下心があったものの、
その座を免許もヘルメットも不要の電動アシスト自転車(電アシ)に奪われてしまった、悲運の持ち主。




それが姿形やチェーン駆動はそのままに20年かけてEVの「e-choinori」として復活した次第。




単にエンジンを取っ払ってEV化した(→コラム「50ccを乗っ取ったEV」)のではなく、
このe-チョイノリの見どころは、家電メーカーとコラボしているところにある。



なんと、パナソニックの電アシのモーターとバッテリーをそのまま流用しているのだ。
わざわざ新しいものを作り出さず、既存のものを流用したことに意義がある。

決して単なるコスト削減ではなく、ニホンのモノづくりお得意の、工夫のなせる業であろう。




いま、50ccのエンジンを搭載する原付一種は、
来る排ガス規制の強化に費用対効果の問題で対応できない(しない)問題と、
小出力のモーターを搭載したフル電動車両を特定小型原付として公認したことにより、肩身の狭い思いをしている。


それが、こういう形ででも「原付」に活路を見出そうとしているのだから、僕はスズキを応援したい。


そして、ニホンの技術力の底力を端っこではなく、真ん中で立たせてほしい。