2サイクル vs 4サイクル、サシで勝負!




僕のコラムは、バイク乗り初心者〜中級をターゲットにしているのに、
内容がだんだん難しくなってきて分からない、と言う声を耳にしました。
自分では「知ってて当然」と思ってることが、意外と「知らない」と言われて、軽いショックを受けてます。




そこで 今回は、バイクの心臓にスポットを当てて、解説したいと思います。




さて、バイクや車、トラックに至るまで、燃料を必要としている乗り物には必ずついている「エンジン」。
ほぼ全ての車が「レシプロエンジン」(reciprocate:往復運動する(英))と呼ばれるものを載せています。



  他には、マツダお得意の「ロータリーエンジン」と呼ばれるものもありますが、絶滅危惧種ですので、ここでは割愛。
  以後、「エンジン」と表記したら、全て「レシプロエンジン」のことを差すのをご了解ください。




エンジンは、更に 
2サイクル(2ストローク 《2スト》)エンジン
4サイクル
(4ストローク 《4スト》)エンジンに分かれます。



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この2つを説明する前に、エンジンそのものについて解説。



エンジンの内部にはシリンダーと呼ばれる円筒があり、
その中で燃料を爆発させる勢いで、ピストンが上下運動します。注射器を思い浮かべるといいですね。
上下運動を、ピストンと繋がっているコンロッドと呼ばれる棒を介して、クランクで回転運動に変換し、

そこから、ミッション(ギア)→クラッチ→スプロケット→チェーンやベルトなど→タイヤ と動力を伝えます。




エンジンの動力を生み出す「作業行程」は、「吸気」、「圧縮」、「膨張(爆発)」、「排気」の4つから成り、

4サイクルは 呼び名の通り、
一つ一つの作業工程が
きっちり分かれています
が、

2サイクルは
「吸気・圧縮」、「膨張(爆発)・排気」を
同時に行います


かなり横着です。

↑図の中の数字は、「作業工程」の数を示しています。


エンジンの排気量とは、気化した燃料(混合気)を1度にシリンダーに吸い込む体積を指します。
つまり、ピストンがシリンダー内を往復する距離間の体積となります。

シリンダーの実容積ではありません。




エンジンレイアウトも色々あって、

シリンダーが1本のエンジンを単気筒、シングル
シリンダーが並列2本のエンジンを、ツイン、パラレルツイン
シリンダーが並列4本では、インライン4(フォー)、直4(ちょくよん)
その他、シリンダーがV字型に配置されているものをV型エンジン
シリンダーを向かい合わせに配置したものを、水平対向、フラットと呼んでいます。


また、エンジンの据え方によって「縦型エンジン」「横型エンジン」があります。




クランクシャフト(↑の2サイクルエンジンの図で言うと、エンジン下部の丸こい物体(クランク)の軸のこと)が、
車両の進行方向と平行だと「縦型」、垂直だと「横型」と呼ばれます。
両者の違いは…僕にゃあ良く分かりませんorz


ただ、縦型エンジンを搭載したバイクのタイヤの駆動にはドライブチェーンを用いず、
ドライブシャフトとよばれる棒を介するのが主流です。




原付は単気筒ばかりです。
まあ、ヤクルト1本分にも満たない排気量なのに、それより小さいシリンダーを何本も作るのって難しいでしょうし。
そういわれると、原付って働き者やと感心しますね。所得は膨大やのに、ろくすっぽ働かん人間もいるのに、健気やん…。
また、自分の首を絞めたような(笑)。



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車のエンジンは全て4サイクルです。(昔の360ccの軽四に2サイクルがありましたが…)
バイクでも、4サイクルが主流で、



2サイクルは、古い原付スクーターや
草刈り機、チェーンソーなどの超小排気量エンジンに限られています。




2サイクルのメリットは2つ。




★4サイクルのような「吸気・排気バルブ機構」が無いため、構造がシンプルで、軽量・コンパクトに出来ること。

 さらに、
製作コストも低くなるし、整備も簡単
 エンジンが小さく軽くなると、車体にかかる負担も減るからバイク全体が小さく、軽く仕上げられます。



★同じ回転数なら、
膨張(爆発)回数が4サイクルの2倍になる
  《 ピストン1往復に1回膨張(爆発)行程がある (※4サイクルは2往復に1回) 》 ので、
 
4サイクルに比べてパワーが出しやすいこと。瞬発力に長けていること。

 さまざまなロスがあるので、単純に4サイクルの2倍にはなりませんが、
 同じ排気量でパワーを競ったら、4サイクルは 太刀打ち出来ません。




だから、原付などの小型のバイクは、
小さな排気量で十分なパワーを得るためと、
製作コストを低く抑える両方の要求を満たせる、2サイクルエンジンが多かった
のです。



それなら4サイクルなんて要らんやん、とお思いでしょうが、
ちゃーんと2サイクルにもデメリット があるのです。




広い回転域でパワーが得られない(=パワーバンドが狭い)、いわゆる「ピーキー」なエンジンになりがち。
  マイルドな走りは期待するほうが無理な話。
  特に低回転域の力が弱く、エンストを起こしやすいです。


ガソリンにエンジンオイルを混ぜて一緒に燃やすので、排気ガスに特有の臭いと白煙を生じてしまう。


▲構造上、燃焼効率が悪く、未燃焼ガス(生ガス)が多く出てしまうので環境に良くない
 (それを防ぐために、排気ガスと共に出て行った生ガスをシリンダーに戻す、チャンバーと呼ばれる排気管を持っています。
 (↓写真の赤で囲った部分)

  

 また、エンジンオイルの燃えカスがマフラーに溜まりやすい。
 
マフラーが詰まりパワーダウンする原因に。


▲メリットにあった、「膨張(爆発)が4サイクルの2倍あること」の裏返しで、燃費が悪い


▲「構造がシンプル」ということは、エンジンが簡単にレッドゾーン以上まで回ってしまいやすくエンジンが焼き付きやすい


エンジン音が甲高く、大きい。


▲大排気量エンジン向きではない。


▲4サイクルに比べるとエンジンの寿命が短い。



ヨイショしておいて、地面に叩きつけるようなデメリットの山。でもこれが現実なんです。



4サイクルは、燃費がいいし、
低回転〜高回転まで幅広くパワーが出る(粘り強いということ)し、
エンジンオイルを消費しない
し、
エンジンがしっかり作ってあるので、耐久力もある



世の中4サイクルでっせ! 2サイクルの負け〜!!



さらに2サイクルを追いやるような事実が待ち受けていました。
そのせいで、2サイクルは絶滅の危機にさらされています。
それは、次にしましょう。

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