孤独の淡路島




※おことわり
このコラムで言う「原付」とは125cc未満のバイク全てを指します。
また、コラムの最後に書いていますが、原付の航送が2015年9月23日より復活しています。




瀬戸内海に浮かぶ最も大きな島、淡路島
関西圏の日帰りツーリングで「1周する」といえば、
1周160kmの淡路島か、1周220kmの琵琶湖かの二択になるくらい定番のコースです。
関西圏以外の方はその辺を心得ておくように(笑)。



その淡路島でバイクをめぐる ちょっとした騒動が起こっているのを広く知ってもらおうと思い、筆を執りました。




本州(兵庫)と淡路島を結ぶ「明石海峡大橋」と、
四国(徳島)と淡路島を結ぶ「鳴門海峡大橋」の2つの橋により、
本州と四国が一本の道で結ばれていることはご存知かと思います。

しかし、これらの道は「神戸淡路鳴門道」という高速道路の一部のため、
高速を走行できない125cc未満のバイクや自転車、歩行者、その他もろもろのために
本州と淡路島の間にはフェリーが航行
しています。




その一つが「たこフェリー」です。
会社の正式名称の「明石淡路フェリー」より愛称のほうが有名になってます(笑)。
それもそのはず、フェリーの船体にはデカいリアルなタコの絵が描かれていて、皆から親しまれていたのですから。
リアルなものだけではなく、タコをモチーフにした「ゆるキャラ」もあります。

海のない京都市に住む僕にすれば、家から最も近いフェリーの一つであり、
束の間の海の旅を楽しめる航路として、一度は乗ってみたいと思っていました。
それは叶わなかったのです。




2009(平成21)年3月28日〜2011(平成23)年6月19日まで
景気浮揚策として国策で行われていた、週末・祝日の高速道路が原則最大1000円で乗り放題、
通称「1000円高速」。その辺についてはコラム「下道愛好家の抵抗」でも読んでもらうとして…。


走行距離に応じて課金されていた高額な高速料金が国策によりタダ同然になってしまいました。
こうなると、車で高速使ってお出かけ…となりますよね。


さらに、一部の地方高速では、2010(平成22)年6月28日〜2011(平成23)年6月19日まで
通行料金を完全無料とする社会実験が行われました。


おかげで車で遠出をする人がさらに増え、他の公共交通機関の利用が減少
運輸業界各社は収入減による対応を迫られたのです。



そして、ある会社は運行本数を減らして維持費を抑え、またある会社は極限まで値引きをし集客を図りました。



たこフェリーも明石海峡大橋が激安となったために乗客が大きく減少。経営の危機に立たされます。
それでも地域の足の確保のためと終夜運行だったのを、昼間だけの運行にし、なんとか延命を図ってきましたが、
それも限界となり、2010(平成22)年11月15日、運航を休止
フェリーは海外に売り払い社員の退職金などに充てられました。



本州(兵庫)と淡路島を結ぶもうひとつのフェリー会社「淡路ジェノバライン」(←外部リンク)のフェリーは現在も運行されているため
人と自転車の往来は可能なのです。(ただし深夜の運行はありません)

ちなみに四国と淡路島の間にはフェリーの運航はありません(痛)。それはそれで問題なのですが…。




つまり、
高速を走行できない、ジェノバラインにも乗れない原付は淡路島に渡ることが出来ないのです。
それよりも問題なのは、淡路島内の原付が島に孤立させられてしまったことでしょう。

淡路島の原付ユーザーはよく黙っていられるなぁ。おれが島民やったらブチ切れやで。


さらに、たこフェリー運休から8ヵ月後に、
諸悪の根源だった「1000円高速」や、日の目を見なかった高速激安プランが東日本大震災の復興財源確保のために終了。
高速料金は通常価格に戻ります。



これにより他の公共交通機関の優位性も戻ることは戻りますが、つぶれた会社は元に戻りません



その責任は誰がとるの?車を優先したために足を奪われた住民の怒りはどこにぶつければいいの?



たこフェリーを復活してほしいとの声もあり、2011年3月に再起を図る予定だったのですが、
政治的な問題で暗礁に乗り上げ、予定は未定に。


結局バカを見るのは末端の市民ということです。


淡路島はバイクでは少ししか走ったことがありませんが、自転車ではフルコースで1周したことがあります。
その経験から言わせてもらうと、美しい瀬戸内海や、厳しい山岳路、謎のパラダイス(笑)など
さまざまな風景を見せてくれ、「1周」の名にふさわしい島だと思います。
それだけに、こういう仕打ちをなされているのが悔しくてなりません。


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追記:
2015年9月23日に、
ジェノバラインの高速船「まりん・あわじ」に原付が積載できるようになりました!(運賃450円)
実に5年ぶりに原付が再び本州と淡路島を行き来できるようになったんですよ!!