キャブレターの息継ぎ



ここでひとつ、バイクでは長きにわたり主流となっていた燃料供給装置について書いてみようと思います。

メカオンチの僕ですので、我が家にストックしてあるバイブル的な古いバイクの雑誌を何度も何度も読み返し、
知識を増やそうと努力はしましたが…。


全部書き終わってから読み返したんですけど、
僕自身も認めます、このコラムは何かの役に立つとは到底思えません(涙)。



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今回の主役は、ガソリン霧状に吹き出して空気と調合し、適切な混合気をつくりだしエンジンに送り込む装置。
その名をキャブレター、略してキャブといいます。
人間で言うところの「肺」にあたるパーツです、ハイ。



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えーと、気を取り直して。

アクセルの開度に応じてエンジンに送り込む混合気の量を調節、走りの一翼を担うんです。


  (↑この表現、厳密には間違っているのですが、そう書いたほうが理解しやすいのであえてこうしておく。
   あまりに正確に書くと、理科アレルギーの人が発狂しそうなので書かない(笑)。)


キャブはエンジンのシリンダーとつながっていますので、
シリンダー(気筒)数と同じだけキャブがついています。単気筒なら1つ、4気筒なら4つ、てな具合です。



キャブは結構アナログなパーツで、知識があれば自分好みのセッティングに変更も出来ちゃいます。
ま、ここをいじる人は相当バイク好きな方だとお見受けしますが…。普通はノーマルのままで十分ですね。



キャブの手前には外気の通り道であるエアクリーナーボックスという箱があり、
その中にエアクリーナーと呼ばれるブツが取り付けられています。
空気中のゴミやチリがキャブやエンジンに行かないようにするフィルターですね。
エアコンなどのフィルターと同じ性質のものです。



つまり、外気の流れは、

エアクリーナー →【空気】→

キャブレター

→【混合気】→ エンジン
 

 

 

   
  【ガソリン】

→→→→→↑

   

てな感じです。
↑の図がかえってわかりにくい気がしますが、画像にするのも面倒なのでこのままにしておく(笑)。



バイク用エアクリーナーには、
蛇腹にした紙を重ね合わせたタイプの乾式
(汚れがたまったら圧縮空気で吹き飛ばせば再使用OK)、

オイルで湿らせたスポンジを取り付ける湿式
(汚れたら灯油で洗い、エンジンオイルでお湿り程度に湿らせれば再使用OK)、

そして、乾式と湿式のいいとこ取りをしたビスカス式
(一定期間で使い捨てで、モッタイナイ)

があります。

どういうわけか2サイクルエンジン車はほとんどが湿式です。


「エアクリーナって何やねん」とおっしゃる方は、一度自分のバイクの見てみてくださいよ。
たぶん真っ黒に汚れているはず。
汚れていると、吸気効率が落ちてパワーダウンや燃費の悪化につながります。
ほら、エアコンのフィルターでも掃除しないと、冷房の利きが悪くなったりするでしょ?あれと同じです。
なので、洗浄するか、交換すると、劇的に走りがよみがえったりします。



ちなみに原付スクーターに限っていえば、
ホンダとスズキはエアクリーナーボックスが車体の左後方にむき出しになっていますので、
エアクリーナーを取り出しやすいですが、
デザインにこだわる(?)ヤマハの一部の車種は、シートカウルの内側に隠されていますので面倒です。


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また、このエアクリーナーボックスもろともエアクリーナーを取っ払って、
代わりにファンネルをつけるのも、キャブチューンのひとつです。
ファンネルとは、漏斗(ろうと)のような物体で、空気をいっぱい吸い込むようにし、パワーアップを図るパーツのこと。

モンキーなどの単気筒・小排気量車などのパワー不足を解消する定番チューンです。が、
キムタクがTVドラマ内で乗り 一時期大ブレイクしたTW200(ヤマハ)などを「スカチューン」する際に、
エアクリーナーボックスがむき出しではダサいので、
見た目重視で、ボックスを取り外しエアクリーナーむき出しにするか、ファンネルに付け替える
こともありますね。


ちなみに、ファンネルだけでは遮るものが無いので、
ゴミは吸い放題でキャブが詰まったり、水も入り放題で雨の日は乗れなくなってしまいます。
ご利用は自己責任で(笑)。


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キャブのメンテナンスとして、
1ヶ月以上バイクに乗らないときは、キャブからガソリンを抜いておくのがいいです。

なぜかというと、キャブ内のガソリンは徐々に蒸発していきますが、ガソリンには添加剤が入っているので、
それが気化せず、こびり付いたりすることがあるからです。
こうなってしまうとキャブのオーバーホール(分解整備)が必要になりますので面倒極まりない。


ガソリンの抜き方は、キャブにもドレンボルトがありますので、そこから抜くか、
ON・OFFのコックがあるバイクなら、コックをOFFにしてからエンジンをかけ、そのまま自然にエンスト
するまでエンジンをかけておくのもいいです。


ま、雪国でもなければ、そんなに長期間放っておくことなく、年中ビシバシ走ってもらいたいもの。



キャブ仕様車にはチョークがあるのが特徴ですね。
キャブは先に書いたとおりアナログなので、気候の変動に応じてキャブ自身で混合気の量の調節するなど高度なことは出来ません。
それを人間が補ってやるためにチョークがついています。

(例)寒い日のコールドスタート時はチョークを引いて混合気を濃くし、エンジンの始動を助けてやります。



今ではほとんど見かけませんが、キャブ仕様の車(古)のアクセルを吹かしたときの、勢いのいいキャブの吸気音は、
いつ聞いてもシビれます。
最近聞いたのでは、軽トラ(三菱「ミニキャブ」)のもの。
軽トラなのに「コッファァアアーーーーーッ!」の咆哮が実に渋い
バイクではこの音がエンジン音にかき消されてしまい、あまり聞けないのが惜しい。


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キャブが不得手としているのは標高の高いところ。
標高2000mを超えるような高所では、空気が薄いので、キャブが適切な濃度の混合気を作り出せず
アクセルを開けても「ガボガボ」という音がしパワーが出なかったりします。いわゆる酸欠ですが、
それを俗に「キャブの息継ぎ」などと呼びます。



この息継ぎを何としても体験してみたかった。



僕のバイクでの最高所到達は、長野県/岐阜県の県境に位置する「乗鞍スカイライン」の畳平で、標高2700m
ここが当時、自家用車で行ける国内最高所でした。


その時のバイクはキャブ仕様の「相棒」でして、ここでならキャブの息継ぎが聞けるに違いない!とワクワクしたのですが、
走れど走れどその気配すら起こらず すんなり走りきってしまいました。

「相棒」が優秀だった証拠かもしれませんが、ご主人様の期待に応えて冗談でも息継ぎして欲しかったぞ!!


また最も苦手なのは高所でのコールドスタートで、
上記の理由により最悪でエンジンが始動出来ないこともあります。
富士山の5合目あたりが実験にもってこいですが、間違っても試さないように!



ほかにも、一気にアクセルを全開にするとキャブ混合気の供給が追いつかず、息継ぎを起こし、
ギクシャクしてしまいます。これは「相棒」で何度も経験しました。
このときは自分のバイクが劣ってるように感じ、ちっとも嬉しくありませんでしたが。


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さて、車の世界ではキャブではなくインジェクション(電子燃料供給装置)が主流ですよね。
細かい設定をコンピュータが全部してくれる、とっても賢いパーツです。

簡単に言えば、キャブレターの苦手な部分を克服しているオールマイティ型で、
乗り手は基本的に何も考えなくていいのです。
高所だって平気ヘイキ。


近年、バイクもキャブからインジェクションに移行していますが、
これはバイクの排気ガス規制と密接な関係があります。

ま、インジェクション自体が排気ガスの浄化作用があるわけではなくて、
キャブではマネ出来ない、正確な燃料供給によって不完全燃焼を未然に防いで、
結果的に有害物質の発生を抑える効果がある、という意味合いです。


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ところで、「2相棒」はインジェクション仕様なのに、チョークがついてるんですよ。
なんでこんなもの付いてんねんと ホンダのメカにたずねたところ、
このインジェクションは「常にキャブの最高の状態を作り出す程度の仕様」であるためだそうです。
それならキャブ仕様にしてくれたらよかったのに…。



インジェクションのセッティングはパソコンをつないで行います。
そのためキャブより簡単かつ正確にセッティングが出来るらしいです。
だけど、バイクにそういうハイテク(死語)は似合わないなぁ。




参考資料:タンデムスタイル(エルビーマガジン社) 2002年12月号、2005年3月号