次世代バイクの蛇足
18世紀後半にイギリスで始まった産業革命により、手工業から機械工業への変革が起こりました。
それを支えていたのは、機械の動力の燃料となった石油。
それ以来、人間生活は石油をはじめとする化石燃料と切っても切れない関係にあります。
車やバイクを動かす燃料として欠かせない、ガソリンや軽油だって、化石燃料のひとつですもんね。
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動植物の死骸の堆積物が数十億年もかけて作りあげてきた化石燃料。
それをニンゲンはたったの200年余りで使い果たそうとしています。
学校で習いませんでしたか?石油はあと20年で枯れてしまうということを。
僕の小学校時代にもそんなことを言っていましたので、大人になったときには大混乱が起きるのだろうなと幼心に思っていたものです。
今も石油は湧き出していますので、あのときの話はガセネタやったんか?!とキレてしまいそうですが、
いつか尽きてしまうのは間違いのないこと。
アラブ諸国や石油大富豪の没落が目に浮かぶ…(冷笑)ではなくて、いつまでもそれに頼っているわけにはいきませんので、
やっとこさ、ニンゲンは石油に代わる何かを模索しはじめます。
代替燃料として現在あるのは、 一部の流通業のトラックなどに使われているLPGであったり、 京都市のパッカー車・市バスに採用されている、 てんぷら油を再生成したバイオディーゼル。 物を燃やした力で動力を得る…というのは簡単ですが、 何かしら問題が出てきます。 石油のような有機物を燃やすと、 イヤでも二酸化炭素をはじめとする 余計な物質が出てしまいます。 上に上げた代替燃料だって例外ではありません。 軽油より有害物質の排出量が少ないだけです。 つまるところ、地球温暖化、です。 |
じゃあ、無機物を燃やせばエエやんと言うことになります。
それの代表はロケットですね。ロケットのエンジンは水素と酸素を化合(つまり、燃焼ですが)させた力で推進していきます。
ですが、今のところ、経済的なことも含めて石油に勝る燃料がありませんので、
石油の消費量を少しでも減らし地球への負担を減らそうとする動きが出てきます。
それが「21世紀に間に合いました」で有名になった、
トヨタのプリウスをはじめとする、ガソリンエンジン+モーターで動くハイブリッドカーです。
エンジンは走行と発電の両方に使い、
発進・加速など大きなトルクが必要なところではモーターを、
高速巡航するときなどはエンジンを使う、アレです。
すごい燃費をたたき出しますよね。現行モデルのプリウス(1500cc)でも、実用燃費がリッター20kmとかでしょ。
僕の「2相棒」なんか、実用燃費リッター13kmですよ。ボロ負けやん(涙)。
まぁ、ハイブリッドカーの基本的な考え方は「電気自動車にエンジンを積んで発電する」ですからね。
エンジンは一定の回転数を保った時、燃焼効率が最高となります。
発電時はエンジンは一定の回転数を維持するので、普通の車より燃費が良くなるわけです。
他にも、電車でおなじみの、減速時にタイヤの回る力で発電する「回生ブレーキ」でモーターを回すと、
ガソリンを全く使わなくて済むのでさらに燃費が向上する、と。
これがハイブリッドカーの高燃費の理由。
そして、モーターは騒音をほとんど出さないので、静かなのもメリットですね。
これからの車は、ガソリンエンジン→ハイブリッド→燃料電池と移行していくのは間違いないところでしょう。
現に、トヨタはミニバンやSUVでもハイブリッドカーを出していますもんね。
「ハリアーハイブリッド」が「3000ccのエンジンで4000ccクラスの加速」とうたい文句にもしてますが、
ハイブリッドを走りの向上に使っている点、ちょっと基本路線からはずれている気がしないでもないです。
「アルファードハイブリッド」でもリッター10kmくらい走るそうですし、1500Wのコンセントも付いているので、
結局、もともと燃費の悪い車やファミリーカーなどにこそハイブリッドがお似合いなのでしょう。
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と、車の話ばかりが続きましたが、バイクのハイブリッドは無いのか?という疑問が当然にしてわきます。
答え:ありません(笑)。
だって、
ハイブリッドカーにはモーターと、発電した電気をためておく大量のバッテリーが必要なんですよ。
ご自分のバイクを見回してください。どこにそんなものを置くスペースがあるんですか。
それに、その分車重も増してしまい、バイクの利便性と相殺してしまいそうです。
(※現在はハイブリッドバイクが存在します。→コラム「進化したPCX兄弟」)
バイクはハイブリッドを通り越して、次世代のメカニズムを模索しています。
電動バイクです。 ヤマハが2001(平成13)年にリリースした電動原チャ「パッソル」は バイク用では世界初の脱着式リチウムイオンバッテリーを採用。 家のコンセントでバッテリーを充電出来、 100%モーター駆動のクリーンなバイクとして一世を風靡しました。 乾燥重量は44kgと軽く、 同じ距離を走るのに必要な電気代はガソリン代の2分の1〜3分の1と 経済的。 お値段20万円。デザインもヤマハらしく精錬されててお洒落です。 |
最大の欠点はフル充電からの航続距離が30km/hで最大で32kmだった点ですが。
これはあくまでもスペック上の数値であって、実用的な航続距離はたったの20kmにも満たないと某バイク雑誌に書かれていた気が。
長距離ツーリングなど不可能ではないか…。
続いて今年(2005(平成17)年)、 パッソルの後継車となる電動原チャ「EC−02」を発売。 19万9800円と、前作と変わらない値段で より高性能なものに仕上がっている模様です。 バッテリーの寿命も延びてるみたいですし。 しかし、未来的なデザイン…と言うより、チビマッチョか豆タンクみたいやわ(笑)。 |
僕のほしいバイクを全部買ってたら何回ぐらい破産したら済むのやろ?(笑)
だけど、コンセントから充電となると、
その肝心の電気の生産元は8割以上を占める火力発電や原子力発電なわけで、
結局、環境に負荷を掛けてしまいますね。
そこで次に出てくるのが燃料電池です。
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今流行の燃料電池バイクも実用化段階に入ってきています。
水素やメタノールを使いモーターを回して走る、
有害物質をほとんど出さない(水素式だと、排出されるのは水だけ!)究極の乗り物は、
車よりもバイクのほうが先に市場に出てきそうな感じがします。
ヤマハは2004年9月に大手バイクメーカーとしては 世界で初めての燃料電池バイクの公道走行を始めています。 FC06 PROTOという、どこかで見たことがあるようなデザインのバイクです。 メタノールを分解して発生した水素から電気を作る「直接メタノール燃料電池システム」を採用。 水素を直接充填する方式よりタンクを小型化できるほかに、 燃料の貯蔵・運送が容易で早期の実用が可能だそうです。 ↑新聞の文章を見ながら書いてるのですが、 書いてる僕本人はイミがほとんど分かっていません(笑)。 1回の充填(4リットル)で、約100km走れ、 二酸化炭素の排出量は、ガソリン車より2割削減できるそうです。 2005年中の発売を目指していますが、 1台数千万円になるので、リース方式を検討とのこと。 数千万円って…バイクお得意の「転倒」などしたら、自腹で弁償できないではないか…。 メタノールは薬局で売ってるやつでもOKなのかな?(笑) |
車の燃料電池車もホンダの「FCX」と、トヨタの「トヨタFCHV」が形式認証を受けました。
ただ、こっちも最新の技術や素材を使っているので、今の時点で市販した場合の価格は、1台数億円だと。
やっぱり当面はリースを続けながらコスト削減や本格的な普及につなげたい…としています。
数億円の車のリースって、1ヶ月いくらで借りられるのやろ?
カネが有り余ってる大企業くらいしか借りられないなぁ。
(燃料電池車については→コラム「究極のエコカー」)
あと、燃料電池車は水素と酸素を使うので、衝突などして燃料が漏れ出したら、大爆発の危険性が…ガソリンの比じゃないよなぁ。
おお怖い。
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さらに、電動バイクと燃料電池バイクに共通した、ある問題があります。
100%モーター駆動だと走行時に音がほとんどしない点です。
上記のハイブリッドカーのメリットはデメリットでもあるのです。
「2相棒」で走行中に件のパッソルと併走したことが2度ばかりありますが、
真横にいるパッソルからは全く音が聞こえませんでした。
家の近所でエスティマハイブリッドが車庫入れしているシーンに遭遇したときも、
「うぃーん」というかすかなモーター音だけで巨大イモムシがするするとバックする姿に、
気色悪いと思ったものです。
これでは車が接近してきてもニンゲンの五感が全く機能せず、事故が増えちゃうのではと心配します。
ほら、道を歩いてると、背後から突然自転車が追い抜いていってびっくりした経験とかありませんか?あれと同じことです。
将来、すべての車がモーター駆動になったと想像すると、それはそれで悪夢ですね(笑)。
車がいっぱい走ってるのに異様に静か…せいぜい風切り音とタイヤの摩擦音くらいしかしないでしょう。
やはり、車やバイクはエンジンサウンドがあってナンボと思いますよ。
電動ではエンジンチューンもマフラー交換も出来ませんしね。
AMGとかMUGENのようなチューンアップメーカーが経営難に陥って暴動が起きそうやん。
いま中国で大人気のニポン叩きみたいな感じでモーターメーカーに投石や生卵投げつけたりとか(爆笑)。
で、世界に目を向けてみると、イギリスで燃料電池バイクが開発されていて、
最高速80km/h、航続距離は160kmと、かなり実用的なものになっているみたいです。
値段がおよそ100万円。これは安いな。
数千万とか数億とかの数字で金銭感覚が狂ってるから、勢いだけで買ってしまいそう(笑)。
あと、懸念の静か対策に「ぶるるーん」というエンジン音を出す装置がつけられるそうです。
何か間違ってへんか、それは…。
「地球に優しい」とエコマーク認定などがありますが、
いままで散々地球を痛めつけておいて、今ごろ「地球に(略)」なんて、ニンゲンもムシが良すぎですよね〜?
参考資料 |
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JAF MATE | 2004年1・2月号 2005年3月号 2005年5月号 2005年6月号 |
京都新聞 | 2002年10月10日付 朝刊 2005年6月18日付 朝刊 |
毎日新聞 | 2002年10月10日付 朝刊 2004年9月23日付 朝刊 |