85%減の彼方に




今春の大阪モーターサイクルショーや、今年のバイクカタログを見ていて、
バイクのラインナップの貧弱さにため息が出ました。


車種・カテゴリーにも偏りを感じます。
質実剛健か、超スーパースポーツか の二極に近づいていると思うのです。

以前は、いい意味で個性的なバイクが市場を賑わせ、バイクって楽しいと思ったのに。


どうしてこんなことになってしまったのでしょう。



僕が考える理由は2つ。

ひとつはバイク人口の減少が挙げられます。
80年代にバイクと出会った方なら、今はなんとバイク乗りが少ないことかと思われるのでしょうね。


しかし、真実は↓でしょう。

ニポンのバイク史上、2度目の排気ガス規制です。
1998(平成10)年に行われた初の排ガス規制は、メーカーの努力で乗り越えられましたが、
今度のは、手ごわいです。



今回の排気ガス規制の枠組みを見てもらいましょう。

  CO(一酸化炭素) (g/km) HC(炭化水素) (g/km) NOx(窒素酸化物) (g/km)
  旧規制値 新規制値 旧規制値 新規制値 旧規制値 新規制値
原付1種(50cc未満) 13.0 2.0(▲85%) 2.00 0.50(▲75%) 0.30 0.15(▲50%)
原付2種(51〜125cc) 13.0 2.0(▲85%) 2.00 0.50(▲75%) 0.30 0.15(▲50%)
軽二輪車(126〜250cc) 13.0 2.0(▲85%) 2.00 0.30(▲85%) 0.30 0.15(▲50%)
小型二輪車(251cc以上) 13.0 2.0(▲85%) 2.00 0.30(▲85%) 0.30 0.15(▲50%)



なお、適用時期は

原付1種・軽二輪車 新型車 2006年10月1日
継続生産車・輸入車 2007年 9月1日
原付2種・小型二輪車 新型車 2007年10月1日
継続生産車・輸入車 2008年 9月1日

となっていて、すでに始まってはいます。

それにしても、いきなり最大85%減ってムチャするなぁ…。今までの規制が緩かったのやろか…?



排気ガスの検査は、1回1km・200秒の決められた走行パターンを連続6回繰り返して行われます。

今までの規制では、後半4回のデータから有害物質の量を測定していたのに対して、
今回の規制は、6回全てのデータから測定されるようになっています。

これがコールドスタート方式で、キャタライザー(有害物質の除去装置)は温度が上がらないと本来の性能を発揮しないので、
冷えている前半2回のデータを含まれるのは、かなり厳しいそうですよ。

さらに、規制値を維持する耐久性も、現行の1万2000kmから、倍の2万4000kmに延長されます。


イジメられまくってるなぁ。



この規制の彼方に見えているのは、言うまでもなく、2サイクルエンジンのバイクの完全なる絶滅です。


今バイク屋で置かれている2サイクルの新車の原チャ(特にJOG)には「今しか買えません!」などのPOPが付けられ、
希少価値を押し出しています。
本当にバイクにとっての2サイクルの魅力は捨てがたいのが ありありとしています。
(このあたりのことについては、「2サイクルvs4サイクル、サシで勝負!」参照)




しかし、いくら他のメリットが抜きん出ていても、効率の悪い2サイクルは、
「環境にやさしくないから」もはや生き延びられないのです。



2008(平成20)年8月現在、国内4メーカーで生産されている2サイクルのバイクは、
ヤマハのグランドアクシス100、ただ1車種。
それも規制が始まる9月で生産が終了し、国産2サイクルバイクの新車は、地上から姿を消します。




それだけではなく…、あくまでも僕の個人的な憶測ですが、

  こんな規制を決めたヤツは、
  実は環境に配慮とか、ではなくて、

  単なる大のバイク嫌いで、クリアできないような厳しい規制をぶちかまし、
  メーカーにバイク生産を諦めさせ、バイクそのものを地上から排除しようとしてるのではないか、


と深読みしたくもなります。



ま、そう言ってもお上には逆らえませんので、それに合わせたものを作り出さなくてはいけません。



排気量の大きい車と違い、排気量の小さいバイクで規制をクリアするのは、
おざなりな言い方ですが、並大抵の努力ぐらいでは済まないらしいです。



少し話のそれるたとえですが、
マフラーからの排気音量を1デシベル(dB)下げようとすると、出力を1馬力(PS)も落とさなくてはいけないと聞いたことがあります。


僕が言いたいのは、排気ガスの有害物質を減らすためには、同様にエンジン出力を限界まで引き出すことが出来ず、
ある程度の余裕が必要になってくる。
つまりパワーダウン



もともとパワーが少ない小排気量車は死ねと言うのか。



こうなるとメーカーの取る方針は決まっています。
規制対応が困難&技術向上にコストがかかる、
その割に台数が売れない
 ↓
生産中止
 ↓
バイクのラインアップが激減

の悪循環に陥ります。



やる気あんのかバイクメーカー!と怒鳴りたくもなりますが、バイクの販売台数が伸びない以上、
利益を追求する企業にあって、不採算事業は切るしかないのは致し方ないことです。



でも、ですよ。
メーカーにはバイク好きがたくさん居るでしょ。いやバイク好きだらけでしょ。
だったら、どうか僕たちの大好きな乗り物を、これ以上減らさない工夫や努力もしてください。


僕には、「2相棒」の後がまに据えられる、現行モデルのバイクが無いもんでねぇ。




参考資料:「オートバイ」 2007年3月号 (モーターマガジン社)