二度あることは三度?!「五山送り火」完全攻略祈願




今年もやってきました。京都の夏の終わりを告げるイベント、「五山の送り火」
京都人を自称する僕にとって、避けては通れない行事の一つです。


僕が子供の頃は、背の高い建物が少なかったので、
母親の実家の前のビルの屋上に上ると、五山の送り火が一望だったのですが、それも過去の話。
いまやタダで送り火全部が見えるポイントは、僕の知ってる限りではありません。


でも、どーしても金を払わずして全部見たい。
と、なると、…もうおわかりですよね。毎度おなじみ原チャの登場です。



2004年8月16日月曜日13時前。
世間はお盆休みの中、仕事をしている僕のPHSに、超・極悪友「真宗Jr」こと「T」が電話をよこしてきた所から、
今回の物語はスタートします。



地元京都を離れ大阪に住む「T」曰く、

「今日は仕事が休みになってん。今晩五山の送り火やろ?
全部を原チャで見て回りたいし、これから京都に帰省するわ。

えいまる君はもちろん行くよな?でも翌日は早朝から仕事やし22時には大阪に戻りたい
と、僕に返事をさせる間も無く一方的に のたまったのです。



僕も僕ですし、OKOK!帰ってこいよ〜、待ってるど〜♪と二つ返事で「T」を迎えることにしました。
五山の送り火を見るためだけに帰省する「T」。

ヒマなヤツと思っ…ゲホゲホッ!!独り言ですハイ。

送り火全制覇に懸けてるなぁと思いました。


その夜、19時40分、本当に帰省してきた「T」と僕は原チャ2台を並べて山科を脱出し、五山送り火制覇の旅の開始です。
「T」はスマートDio、僕はLEAD。


この2人でコンビを組むのは、昨年の秋に黒枝豆を買いに行った時以来です。


僕も原ツー(これをツーリングと呼んでいいのか)はご無沙汰ですので、
まだひとつも送り火を見ないうちからボルテージが勝手に上がっていきます。


毎度のことですが、送り火の完全攻略のポイントは、ただひとつ、時間が命です。

“送り火制覇経験値”が「2」の僕ですので、ルートも、どこで見るかも、全て一任されました。

過去2回は単独行動でしたので気楽でしたが、
今回は、わざわざ帰省してきた「T」に満足してもらわなくてはならない使命も帯びていますので、セキニン重大です。


ここをクリックすると新しいウィンドウが開いて、五山の配置図が見られます。(京都新聞より転載)


山科から西へ山を越え、京都市の市街地に入ると、あちらこちらに人だかりが出来ています。
彼らの目線は送り火が灯される場所を向いています。
それをしきりに「T」が「こんな所からも見えるのか。みんな(見える場所を)よく知ってるんやな〜」と感心していました。




今回はルートマップをつけていませんが、巡る順番は毎年同じ。

「大文字」→「妙法」→「舟形」→「左大文字」→「鳥居」

時計の3時の方向から反時計回りに9時の方向まで順番に巡ります。




まず僕は、「経験値2」を生かして予定通り百万遍交差点にやってきました。

「大」の点火間際に到着した僕たちは、すごい人だかりに圧倒されます。


やがて20時になり、漆黒の山肌に紅い「大」が浮かび上がる
歓声が上がりました。


カメラや携帯でせっせと写真を撮る人たち。
おいおい、そんな画面を通して見るんじゃなくて、
生の「大」を網膜に焼き付けよう
や。


一人激しく酔いしれている僕に対して、「T」は冷めています。
「T」は「大」の右下の部分が、木立の陰になって見えてないのが
少々ご不満
な様子。

「まぁ、しゃあないなぁ(=仕方がないなぁ)」と言わんばかり。



ああそうかいそうかい。「五山の送り火」制覇は時間との戦いなのに、その上にクオリティをも求めると言うのか。


完璧に見るのが難しいことが分かっている僕は、少しくらい文字がかけていても構わないと思っていたので、
その態度にムッとなります。


こうなりゃこっちにも意地がある。もっときれいに送り火が見えるところを探そうやないかい!!


百万遍の交差点から原チャ2台が飛び出し、次なる目的の「妙法」の「法」を目指します。
途中の交差点を曲がるときに「T」が「今の場所は『大』がはっきり見えた!」と言いますが、時間がないので通過。

「法」は、低い山に点されるので、見えるポイントが限られます。
ホコ天になっている川端通からならバッチリなのですが、バイクを置いて歩いて行く訳にもいきません。
何度でも言いますが、時間はない。
高原通から見やりました。
低い上に建物が邪魔して、さっきの「大」より見え方が悪いです。

でも、先ほどの「T」の問題発言があるので、少しでも見えるようにとその周辺をうろつきます。
今はそんな悠長なことをしてる場合じゃないんやけど…。


突然、その近所の母親の店のすぐそばで、かなりの人だかりが。
不意に「大」が夜空にくっきりと大きく見えました。
どうして??去年はここから「大」は見えなかったはずなのに…。
疑問はすぐに解けました。過日解体された建物が「大」を遮っていたのです。


ちょっとしたことで見えたり見えなかったり…それを探すのも面白いでしょうね。
時間があれば。

このときは、
美しい…。と、ただただ呆気に取られました。




…などと余韻にひたっていては時間が足りなくなります。既に去年のペースより大きく後れを取っています。10分くらい遅い。
ヤバいぞ!


住宅地や裏道を抜けて北大路通へ。川端北大路交差点から北の川向こうに「法」がきれいに見えています。
なぁんや、最初からここから見ればよかったなあぁ。



そして西に目をやると、「舟形」の右半分だけが見えました。 



僕は「ホラホラ、舟形が見えてるわ」と大興奮モードで言うと、
「T」はあっさり一言、



「セコい」



セコいって言うなー!!!!!!!!


「T」は自分が置かれている状況を丸っきり分かっていません。
「経験値2」の僕は、時間がない、と ひとり焦っています。


このとき既に20時20分。最後に点される「鳥居」にも火が入る時間です。消されるまでに後30分あるかどうか。
京都盆地の東端に近い所から、西端まで時間内に行くには厳しい時間です。


それでも、完璧主義の「T」のために「妙法」の「妙」がパーフェクトに見えるように
松ヶ崎通北大路から北へ住宅地を暴走。

道を行く歩行者を蹴散らしベストポジションを求め続けます。


やはり、低い山肌に点される「妙」は建物の陰に入り左下が見えません。
諦めてもらって、再び大渋滞の北大路通に戻り、西に向かいます。
途中で、一瞬だけ「舟形」が見えました。
本当は「舟形」のすぐそばまで行きたかったのですが、
そこまでいくと「二兎を追うもの一兎も得ず」状態に陥るので却下。



あとから「T」は「舟形」が一番見た気がしなかったとイチャモンをつけてくるのですが、
これだから送り火制覇のシロートは困るんやわぁ。



北大路通りは西行きも東行きも大渋滞です。
それもそのはず、車で送り火を見るなら、この通り沿いが一番 数が見えるからです。
でも、この渋滞ではそれも叶わず。
今日みたいな日に車で来るとは愚かなリ。こんな時こそ原チャやで、わははははははは〜!!


僕は先を急ぎたいので、カメ状態の車列の中をハイビームとクラクションをてんこ盛り使い、
わずかな隙間でもあれば強引にツッ込み
ます。
路駐して送り火を見てる愚民にも容赦ないクラクション攻撃をお見舞いです。


たとえ1mでも前へ前へ行かなきゃアカンのです。
「T」を含めた他のバイク共を置き去りにして車の間を走る走る。
時には右折レーンから直進だって厭わない。


そんな暴走状態の僕を止めるK察もいませんので、やりたい放題、すり抜け天国です。


僕に置き去りにされた「T」曰く、
「普段、えいまるは安全走行とか言ってるけど、あの走行には事故ると思ったわ」
と驚いた様子。


あ、そう?と、かわしながらも、
内心「自分にもこんなにバイクのウデがあったのかと再認識するくらいスゴい走り」と我ながら感心しちゃいました(笑)。


「アクロバット走行やな」と「T」。いやいや、「公道ジムカーナと呼んでもらおうかな(笑)。



スミマセン、今だけ極悪走行を許してくださいカミサマ〜(頼)。



北大路通から西大路通へ。毎年のように背後に「左大文字」がはっきり見えてます。
南下する僕たちの原チャのミラーに映っています。


「T」が、これを北上しながら真正面に「左大文字」を見たいと言います。
僕だってそうしたい。でも、それだと順番が逆周りになり、全部見ることは不可能になってしまうのです。
諦めてミラーに映して見てくれぃ!



円町交差点から丸太町通を西へ。残すは「鳥居」。現在20時40分。間に合うかどうか。

交通量が減るので、ここからはペースが上がります。

周囲には多数の原チャ。しかも一糸乱れず横並びで西へ進んでいきます。
みんな同じスピードやん(笑)。

目的は一緒か!行くぞヤロー共!!


無法者・丸太町通原チャ連合が辛うじて守っているのは赤信号だけ。
それも、「赤でもあわよくば無視して行こうと思ってたやろ?」と「T」。
ウッ、するどい!


20時50分、「鳥居」到着。僕の第一声は


「遅かったー!」


そう、もう送り火は鳥居の形を留めてなく、ほとんど消されて残骸と化していたからです。
しばらくその場にたたずみ、消されゆく「鳥居」を見続けました。
一緒に走ってきた原チャの一人は、それを携帯で撮り、来た道を帰って行きました。


こうして3年連続の五山の送り火完全制覇は失敗に終わりました。
敗因は、言うまでもなく「T」のわがままに付き合い余韻に浸り過ぎたことです。



と、言うことや。送り火完全制覇は一筋ならではでは行かんのよ、「T」!


21時半ごろに山科に戻り、「T」は「有意義やったよ。帰省してよかった」と満足して電車に乗って大阪に帰って行きましたとさ。

送り火制覇・激走区間は、14km。京都市街は決して広くないと思うのですが、案外走ってるもんですね。