7173人の21.0975km



桜のつぼみ膨らむ都大路を市民ランナーが駆ける、「京都シティハーフマラソン」が、今日、3月9日に盛大に行われました。
平安建都1200年を記念して始まったこの大会も、今年で早や10回目。


記念大会とあって、7173人もの市民ランナーが参加しました。
都市部で行われる大会としては、京都のが最大規模と聞いています。
途中には給水所も数ヶ所あり、ドリンクが山盛り。本格的です。



高校時代陸上部所属で、中距離で足を慣らした僕にとっては、とっても出てみたい大会です。
出りゃエエやん、と言われそうですが、現在の僕は、仕事でヒザを本格的に傷めてしまい、
走るのはおろか、体調が悪いと歩くのも足を引きずるほどです。
その体で、本業の現場仕事をこなしているのだから、さらに症状は悪化していきます。
とってもくやしい。

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同じ陸上部で、大学でも陸上部に所属し、その後も走り続けている「川」(仮名)は毎年のようにハーフマラソンに出場し、
「山科区1位」の成績を残していまた。

「山科区で1位」って、はっきり言って、お山の大将や……ゴホンゴホン! つい本音が。

今年は陸連の登記登録選手にグレードアップして参加すると、今年もらった年賀状に書かれていたので、
必ず応援に行こうと決めていました。

ここまでは毎年のことだったのですが…。

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そこへ、僕の同級生の「中」(仮名)が、「体がなまってるから、ハーフマラソンに出る」と突如宣言し、
道連れとして、やはり同級生の「西」(仮名)、「橋」(仮名)を引きずり込んだのです。

こんな動機が許されていいのか?

さらに、この3人は仕事が忙しいとか何とか言い訳をたれて、練習などほぼ全くしてません。

それなら、足慣らしに、丹波高原ロードレースの10kmの部とか、距離の短いのに出ればいいのに、いきなりハーフマラソンとはね。
こいつら、21.0975kmという距離をナメてる、そう思いました。



競馬の予想で言うなら、
「川」…は、言うまでも無く大本命。1時間10分台前半で走る健脚ぶり。
まぁ、問題ないでしょう。


「西」は、大会10日前に、「マラソン当日がつらい仕事が忙しくて完全に練習してない。果たしてどうなるか?当日逃げたろか?
と、僕にメールを寄越して来たので、

「逃げたら許さん!!当日は5kmのチェックポイントで待ってるからな〜。今から走れー!」と返信したら、
「そこまで辿りつくかわからん。こんかいの目標は「川」の妨害やからな」と返信して来る始末。

1週間前に「準備は整った。あとは走るだけや。当日病院の手配よろしく!」とさらにメールしてくるし。
こいつは、大穴や。

「中」は体重が10kgも増え、典型的なビール腹。おい!その歳でみっともない体形になってどうすんねん!
仕事が忙しすぎで、休日出勤までしていて、練習以前の問題だったらしい。
年度末やからなぁ。
こいつも、大穴や。

「橋」は、「駅から1kmくらいは歩いていた」とのこと。
…コメント無しでいい?(笑)
やっぱり、大穴や。


ホンマに救急車の手配がいるかも…、とても不安でした。


そして、当日。
やはり同級生で、HPにもたびたび登場する、「真宗Jr」こと「T」と一緒に応援に行くことにしました。
原チャで追っかけをしようと思っていたのですが、
朝、「T」に電話したら、「原チャ(母親に)乗っていかれて、あらへん(=無い)」
以前彼はDioを廃車にしてしまい、新しく購入した「スマートDio」は、母親のものになっていたので、どうしようもありません。
仕方なく、地下鉄で移動。

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レースは、車椅子の部が8時57分に、ハーフマラソンが9時に、平安神宮前をスタートします。

コースは、

前半:

平安神宮・鳥居前(スタート)→
神宮道(南下)→<神宮道仁王門交差点>→仁王門通り(西進)→疏水べり(北上)→冷泉通り(西進)→<川端冷泉交差点>→
→川端通り(南下)→<川端御池交差点>→御池通り(西進)→<烏丸御池交差点>→烏丸通り(北上)→<烏丸今出川交差点>→
→今出川通り(東進)→<河原町今出川交差点>→河原町通り(北上)→加茂街道(北上)→<加茂街道北山交差点>→
→北山通り(東進)→<川端北山交差点>→川端通り(北上)→白川通り(北上)→宝ヶ池通り(西進)→国際会館前折り返し→



後半:

国際会館前→宝ヶ池通り(東進)→白川通り(南下)→<天王町(白川丸太町)交差点>→
→丸太町通り(東進)→<丸太町岡崎交差点>→→岡崎通り(南下)→<岡崎冷泉交差点>→
→冷泉通り(西進)→神宮道(南下)→平安神宮・鳥居前(ゴール)



↑を飛ばし読みした皆さん(-_-x)に解説しておくと、同じ道を往復するのではなく、
ぐるっと時計回りに都大路(但し、東半分だけ)を走ります。


コースの前半12kmは緩やかな登り坂、後半9kmは下り坂(大半が白川通り直進)です。
すごく豪華なコース取りです。京都人の僕に言わせれば。

当日の天候は雪。9時時点の気温8.5℃。京都の3月の気候やないよ!
コンディション悪すぎ!!
寒い寒いの連発。服をいっぱい着てる僕ですらこれですから、薄着のランナーは半端な寒さじゃなかったでしょう。


スタートは、招待選手、陸連登録選手、一般の順。
参加者数が多い…多すぎるので、最後尾のランナーは、スタートラインから、何と4〜500mも後ろ。
「大穴」の3人は、ほぼ最後尾で、スタートの号砲がなってから、3分くらいは全く動かなかった、と言ってました。

ゴールした人は全員順位と公式タイムが出るので、これでは不公平だと思っていたら、
ランナーは靴に磁気を埋め込んだチップをつけ、スタート、ゴールのラインを通過するときに、それと機械の間でデータ交信するので、
差別は無いそうです。


平安神宮に行ったことがある人なら分かると思いますが、
あの場所に7000人余りも集結することが、そもそも物理的に無茶な訳で、

スタート時はダンゴ状態で無法地帯と化すようです。

「西」や「中」は走ってはいけない、道路以外の歩道の植え込みなどを疾走。
植物を踏み荒らすなー!などとは言ってられないそうです。


また、タイムリミットが設定されていて、
5km、7.5km、10km、12km、17km地点を規定の時間内に通過できないと、自動的に失格になってしまいます。
ホノルルマラソンのように歩いてゴールを目指そうとすると、失格の憂き目を見ます。


さて、僕と「T」は、大本命の「川」は別として、「大穴トリオ」は、5kmも走れないだろうと予想して、
第1の「失格ポイント」、5km地点に向かいました。

すでにレースは始まっていたので、地下鉄を降りて、コースへ向かう僕の足は、ソワソワして自然と速くなります。
僕の歩くスピードに「T」がついてこれてません(笑)。


5km地点は、烏丸今出川交差点付近。「京都御所」の北西角に当たります。
程なくして先頭ランナーがやってきました。

パラパラとランナーが僕たちの前を通過していきます。
9時17分、大本命の「川」がやってきました。

「『川』ファイト!」と声援を送ると、片手を挙げて応えてくれました。
やっぱり走りが違います。

そのうち、片側2車線を使ったコースの「ランナー密度」は次第に高くなっていきます。

パラパラ スタスタ ドドドド! パオーン!(意味不明)


人の大洪水!すし詰めで、皆さん走って行きます。ってか、高密度になったら自分のペースで走れへんぞ!

何がうれしくて、こんな状況下で走らなアカンのんや?おれには理解できん!

いつまで経っても走ってる人の流れが切れません。
なんじゃこりゃ!これでは「大穴トリオ」を探し出すなんて、ムリ!

これをあえて形容するなら、混雑した繁華街を行く人たちが、全員同じ方向に走っているといえば、近いでしょうか。
とにかく、生まれてはじめて見る、異様な光景です。悪夢を見ているようでした(笑)。


ランナーの格好もさまざまで、見ていて面白いです。

ラグビーのユニフォームで走ってる人もいました。
おでこの広いヅラをかぶった人もいました。(←しかも、この人は速かった!)
 全身唐草模様の人もいました。※拡大図→
 スーパーマンもいました。
 ドラえもん(左)までいました(笑)。右側の全身肌色の人は一体…?


「2時間ペースランナー」とプラカードを掲げて走ってる役員の方がいました。
片手ををあげて、プラカードを持ったまま、決まった速度で走るのって、辛いだろうと察します。
でも、その「2時間ペース」を目標に走ってる人にとっては、心強い味方でしょうね。


「大穴トリオ、どこにいんねん!」と目を凝らして探してる中、
9時27分、何と5kmで脱落予定の「大穴」・「西」が、沿道の僕たちの肩を叩いていったのです。
それも、余裕の表情で。
んなアホな、話が違うやんけ!


それ以前に「中」と「橋」も通過していたようです。
ええええー!

ひょっとして、これって、完走するのでは!「T」がそう言い出しました。
まさか…あと16kmもあるのに。

僕は内心、折り返しの12km地点・国際会館前で脱落することを望んでいました。
運動もしてへんくせに、完走なんてあつかましい!


5km地点のタイムリミットは、スタートから36分。
1kmを7分(時速8.5km…駆け足程度)で走ればOKです。
ここで脱落した人は、僕の見た限りでは少なかったように思います。

タイムアップで失格となり、ナンバーカードを着けてまま、とぼとぼ歩道を歩く人たちに哀愁が漂っていました。

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居てもたってもいられなくなった僕は、「T」を置いて地下鉄の駅に急ぎ、一路、平安神宮へ向かいます。
平安神宮の最寄りの地下鉄の駅から、痛い足を引きずり平安神宮まで走りました。

着いた途端、トップのハリド・ハヌーチ選手(アメリカ)のゴール!
1時間2分15秒!大会2連覇!

この選手、マラソンの世界最高記録保持者だそうです。
そりゃ速いわ。

水色の丸の中の人物が、ハヌーチ選手→ 



肩で息をしながら、はあはあ、おれは間に合った。「T」は間に合わなかった、さまあみろと、ほくそ笑んでました。


程なく「大本命」の「川」ゴール、1時間12分。
やはり速い。これでも本人は自己ベストではなく、「ボロボロやった」と言ってましたが。
「川」ならフルマラソンもいけそうやなぁ。


それにしても、後から来るはずの「T」は、まだ平安神宮に来ません。ああ、地下鉄に乗り損ねたんやな、と思っていました。

すると、「トップのゴールインから見てたよ」と「T」からメール。

何で何で!おれの方が先に地下鉄に乗ったはずやのに!どうして、すでに平安神宮に居るんや!?

「T」と合流して、その訳が分かりました。
「T」は遠回りな地下鉄ではなく、最短距離を行く「市バス」を使ったのです。
「頭使わななぁ」と「T」。キーくやしい〜!!

などとふざけている間にも、
雪の降る中、
次々とランナーは「生還」していきます。




「あいつら、本当に帰ってくるかなぁ」と思ってると、スタートから1時間46分後の、10時46分、「T」の携帯が鳴りました。
電話の主は「大穴」のひとり、「西」


「今、ゴールしたし」


何いいいいいいぃぃぃぃ!!!

全く練習をしてないはずのヤツでしたが、なんと21.0975kmを走り切ったのです。
ってか、オマエ、携帯持って走ってたんかい!!

「西」曰く、「いや〜楽勝やった、メールしながら走ろうかと思ったくらいやったわ」
ゴールをして一息ついた彼は、余裕の表情でそう語りました。

くやしいいいいい!!!



それから、着替えを済ませた「中」「橋」と合流。
この二人も、それぞれ1時間48分、1時間38分で完走していたことを、そのとき知りました。
何でやねん!大万馬券乱発!!


3人は、前日にスポーツ用品店で、ウェアなどの調達を行うほどの気の入れようだったと聞きました。
なかでも、「中」は、ジャージまで新調するなどの張りこみよう。
やる気ないとか表面上では言いながも、気合は入れてたんやな。


かと思ってたら「橋」が、
「ウォークマンで音楽聴きながら走っててん、だって、退屈やろ?」と。
そういう問題ちゃうやろ!そんなランナー、聞いたこと無いわ!
こいつ、大物になりそうや……。


彼ら3人、成し遂げた達成感か、すっごくうれしそうでした。
揚々とレースの完走を語ってくれます。
聞き役のおれに飛び火しました。

おれ、今現在、来年までにヒザを治して、シティーハーフマラソンに出てやる! と意気込んでます。
「T」は、僕が悔しがってる様子が笑えた、と言ったほどでした。全身で悔しがってたんですね、おれって。


結局、5980人が完走しました。完走率、8割強。結構、率が高いんですね。


去年は、ゴール直後に心臓マヒで亡くなられたランナーもいましたが、今回は滞りなく終わった様子でした。
長距離を走るのは、体に大きな負担がかかるんですよね。普段から走っていても、これだけは予測がつかないそうです。
その悪条件をはねのけ、完走した4人は、すごい!よくやった!

でも、おれの予想が大ハズレで、くやし〜〜〜!!!


ところで、この大会、市民ランナーを広く募集するくせに、参加費が5000円も要るそうです。
見返りは、スポーツドリンク飲み放題+「ナイキ」のロゴが入ったポンチョだけ。

スポンサーに、半導体で世界を席巻する「ローム」が入ってるのに、参加費高すぎ!
ボッタクリー! どこにそんな大金がかかってるのか説明してくれ!

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ひとしきり喋ったあと、この後どうする?と言うことになりました。
すると「西」が一言、
「競馬場に行ってくるわ」
あきれてる3人を残し、「西」と「中」と2人は競馬場に向かいました。

元気なヤツ……。


さらに、上には上がいるもので、「川」はハーフマラソンを走ったあと、昼から仕事をしていたそうです。
仕事上、土日は休めないので、仕事のシフトを上手く組んで何とか出場した、と。

う〜ん、参った!