いにしえの原付乗車「許可」




原チャの免許の買い出しだい!」なんてコラムを書いたことがあります。
50cc未満のバイクが乗れる原付免許って、他の運転免許と比べて、取得が圧倒的に簡単ですよね。


原付免許を取得するには、京都府の場合、
午前に試験場内にある 天下り 別施設で法令等の学科講習&実車による実技講習を受け、
午後に試験場で学科試験を受けて合格すると免許皆伝…です。

1日で免許が取れます。

費用は合計8050円(2023(令和5)年現在)。
あと写真代が必要ですが、それを足しても福沢諭吉or渋沢栄一1人でおつりが出ます。




このように、今でも「免許」という割には十分簡単に取得できちゃうと思うのですが、
その昔、原付に乗るのは免許ではなく「許可制」だったんです。
当時のカブの広告にも原付の許可が「簡単に貰えます」と書かれてますし。しかも14歳から


(↓「ホンダのカブ号」の下に小さい字で書かれていますね。)





まぁ、このころの原付は、いわゆるバイク然としたものではなく、
正式名称である「原動機付自転車」の文字通り、自転車に補助エンジンを載せたようなものが主流だったようですが。
だから中学生でもOKやったのかも。
(→コラム「原動機付自転車の基」)
(→参考コラム「アシストのバラ売り」)




しかし、「許可」とはどういったものやったんやろう。
この時代の交通関係については情報がはっきりしない点も多く謎だったのですが、

このたび、原付の許可を実際に受けた方からメールをいただきました。ありがとうございます!



いわく、

警察に行って、350円と住民票を出したら許可がもらえたとのこと。



原付に乗る資格を金で買うってことですよね。裏口入学みたいやな(違)。

この方は1959(昭和34)年9月に14歳で許可をもらった、と。
おおらかな時代ですね〜。

…と思いきや、10本の指紋も取られたんですって。
え、原付に乗る許可を取るだけやのに何で指紋がいるのん?!
国家権力による指紋採取は 犯罪者や、犯罪に悪用できる技術の取得者などに限られてるはずですけど?!!
ひー、ケーサツ怖いわ〜 (*`皿´*)ノ




それが現在のように原付も試験を受けて取得する「免許制」になったのは、この翌年の1960(昭和35)年

バイクの免許制度は何度も何度も変更され、緩い時代から厳しすぎる時代まで様々な道を歩みますが、
原付は法律上バイクに組み込まれることなく、原付のままマイウェイを突き進み、今に至っています。




ちなみに、1960年頃の物価はこんな感じです。

国鉄最低運賃……10円
入浴料……
16円
チキンラーメン……
35円
うどん・そば……
30〜35円
コーヒー1杯……
60円
理髪料……
163円
大卒初任給……
1万3467円



現在の物価は、それらの10倍〜20倍になっていると考えると、
原付許可の350円は、現在に換算すると、高く見積もっても7000円程度でしょうか。



1946(昭和21)年以前に生まれた方なら原付の許可を得られたことになりますね〜。
おじいちゃん、おばあちゃんならその時代のバイク事情について興味深いことを知ってるかもしれませんよ。
話を聞きがてら実家に遊びに行って、ついでにお小遣いをねだってみては?(笑)




情報提供:M野さま
まことにありがとうございます。

参考資料:
高山・湯布院昭和館
https://showakan.jp/about/showa-chronology/



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余談:
情報提供者様のお父様は、車の試験は前進とバックだけで免許を貰えたと話されていたとのこと。
いつの時代かわからないとのことでしたが、年代を考慮すると、ニホンで現在の運転免許制度が始まってまだしの昭和10年あたりと推測できます。
(→コラム「起源は昭和8年」)
それにしても、そんなにアバウトな試験で免許皆伝してホンマに大丈夫やったんですかね?!