我が代車人生に悔いナシ




2010(平成22)年9月26日。

いつものように「2相棒」と一緒に走りに出た僕。
目的地へ向け山間部の道を とことこと心地よく走り、良い一日になるだろうとご機嫌でした。



そのときでした。
「2相棒」がお腹でもこわしたかのように突然ガクンガクンとノッキングを起こし、
メーターパネルにあるインジェクションの異常を示すランプが点灯したのは。

なんやこれは?
初めて経験するトラブルにこのまま走り続けては危険と直感的に感じた僕はツーリングを中断し、引き返しました。



一時期は安定した状態でしたが、徐々に症状の悪化が進み、
10月6日、もはや普通に走れないほどガクンガクンとノッキングを頻発するようになった「2相棒」。
アカンのか?もうアカンのか?な走りは「お別れ」の文字を僕の脳裏によぎらせました。



でも僕は決めていました。「2相棒」は最初で最後の大型バイクだと。
今まで苦楽をともにし、とことん乗り尽くすことを誓っている以上、そう簡単には諦めたくはなかった。

仕事場の近くのバイク屋さんに連絡を取ると、症状から判断して、修理には長期の日数と高額の費用が発生すると告げられましたが、
脈があるならお願いしますと預けました。

人事を尽くして天命を待つ、か。
そう書いてはみたけれど、僕のしたことと言えばバイク屋さんに電話しただけですが(笑)。




「2相棒」の代わりとしてバイク屋さんから貸し与えられたのは、JOGでした。
他の原付2種以上の代車はすべて出払っていて、これしか残ってないらしいです。

弟が独立する際に原チャ(JOG)を持っていったため、我が家には久しく原チャがありませんでした。
ひいては、僕の近場の足が無いことを意味し、大きなバイクでは使い勝手が悪いので、なにかと不便だったんですよね。



お借りしたJOGは2002年式で 走行距離が2万260km。なかなかエエ距離を走ってるやん。
自賠責証を見ると、このバイク屋さんに売却されたものをそのまま代車として使っているのが見て取れました。
そりゃそうでしょうね。せいぜい数日間、足代わりに使われるだけなんですから、わざわざキレイなものを用意する必要はない。
現に、黒のボディはキズだらけで地の色が見え、シートも穴がいくつか開いてましたので、見場はお世辞にもいいとは言えません。



それでも修理期間中もバイクと共に過ごせるのなら、そんな些細なこと、どってこと(大したこと)あらへんよ。
何でも大歓迎やで。




かくして原チャ乗り、えいまるが誕生したのでした。




年式で分かるとおり、このJOGは2スト車。
当時、既にホンダは原付スクーターも環境に配慮して4ストに移行を始め、パワー不足が指摘されつつあった中、
2スト命のヤマハは50ccとは思えないパワーを生み出すエンジンを載せたバイクを世に送り続けていたのでした。



アクセルを開けると、往年のどっかんパワーが僕の体を貫き、
少し前にホンダの4スト原チャ、スマートDioに乗った時に感じた物足りなさは瞬時に宇宙の彼方に消え去りました(笑)。

さすがヤマハ!さすが2スト!やっぱり原チャは こうでなきゃな!!
国道をアクセル全開。車の流れに乗ってビュンビュン走る走る!メーター振り切ってたのはトップシークレットや(笑)。




10月7日
原チャ乗りらしく(?)ちょっと小僧っぽい服装をし、ややガニ股でJOGに乗り、出勤。
同僚に「えいまる君、いつもピチッとした格好してるのに、今日はどうしたん?フザけた格好して」

「フザけた」って orz

まぁ、この日のルックスは、デカいシャツをヒラヒラさせて、ボトムスがダボダボのGパンやしなぁ。
年齢考えろとか言われても仕方がないか〜。




その日、午後から半日有給休暇を申請しておいた僕は、12時のチャイムと同時に職場をJOGで脱出。
上司には「ちょっと用事がありまして」と当たり障りのない理由を言いましたが、
それがまさかオキテ破りの代車の原チャでツーリングとは思うまい(笑)。




原チャで思い切り走りたかってん。




R9を西へ。京都縦貫道が無料化社会実験の真っ最中のため、ほとんどの車が縦貫道へと流れ込んで行き、
下道にはちょろちょろとしか車が走っていません。
僕の前後とも車両の影すら見えない国道は、僕のために用意された舞台と化しています(笑)。


亀岡市との境、老ノ坂峠はやや勾配のあるカーブが続く峠道。
バイクでならコーナリングが楽しめる道路条件なんですけど、
カーブの部分にだけ大きな減速帯があり、ガタガタして面白さが半減しちゃうんですよね。

そこはタイヤが小さく重心の低い原チャ。ガタガタだろうが何だろうが、怖さを感じず走りこめます。
まぁ、アクセル全開にしても後続車を振り切れない程度の速度しか出てないからってもあるけどね。
それに、万一コケても後続も対向もいないから轢かれる心配も無い(笑)。



峠を抜け、亀岡市街へ。

普段なら通行料金の高い縦貫道を避けた車で慢性渋滞が起こっているR9が、
やっぱりガラガラ。前方視界、超良好。

昼間でこんな光景は初めて見たので、思わず写真を撮ってしまった(笑)。

デジカメを持ってなかったので、
ウィルコム(※外部リンク)のスマートフォン「アドエス」でパシャパシャ。





国道沿いには、通過する車の人を見込んだであろうショッピングセンター「アルプラザ」や、数多く立ち並ぶ飲食店が
軒並み閑古鳥鳴いてます(笑)。
ただでさえ亀岡市は隣の京都市に顧客を吸い取られまいと必死やのに、このままやったらゴーストタウンになってしまうど。


まぁ、その閑古鳥のおかげで、お昼ご飯に立ち寄った空いてるラーメン屋で、
1日20食限定のセットメニューが食べられましたので、無料の縦貫道に一応感謝しとく(笑)。




亀岡市の渋滞の名所である「頼政塚」交差点も、「矢田口」交差点も、「加塚」交差点もストレートで通過
亀岡在住の同僚が、(高速である)縦貫道より、下道を走ったほうが早い」と言うのもうなずけるよ。


加塚交差点でR9をそれてR372へ。
京都市〜姫路市の近道であるこのルートは、平日は高速料金節約の大型トラックが多く通行し、
この日も例外ではありませんでした。
左端を走っている原チャの僕は、追い越されるときの走行風にフラフラさせられます。



亀岡運動公園のそばにある、
1万5000坪に20品種、800万本
が咲き乱れることで有名な「夢コスモス園」
この時期なら秋風にそよぐコスモスでいっぱいのはずなのに、
見たところチラホラ咲きで、
こんなコスモス園に入園料を払ってられるか状態。



それよりも周辺では彼岸花が見ごろですわ。
10月なのにコスモスより彼岸花が咲き誇ってるって どういうことやねん(笑)。
今年の異常な猛暑は花の開花も狂わせてしまったようです。
いつもはスカーッと通り過ぎてしまう亀岡市〜南丹市園部町の田園地帯を貫くR372は
有料速度測定
を警戒して、かなり控えめに走行。

そのおかげで、周囲の風景を楽しむ余裕ができ、キレイなススキに出会うことができました。

をっ、コオロギが止まってるやん。



…って、チグハグな光景に、今が何月なのか分からんようになってきたわ(笑)。









ここまで読み進めてきて出てきたキーワードは、





◎ 10月


◎ R372



の2つ。

と来たら、僕の目的は、もうお分かりですよね?






解禁されたばっかりの今年初の黒枝豆を買いに来たんですよー!!  




職場から黒枝豆の里・兵庫県篠山市まで35km、1時間強で来られました。

京都市山科区の自宅からだと、渋滞する京都市街を横断しなくてはならず、それだけでもストレスになっちゃうんですわ。
京都市西京区にある職場からだと、その渋滞をまるまるパスしたところが起点になるので、
気分の安定度が違います。それでわざわざ有給を使ったというわけ。



篠山へは季節を問わず何度も何度もバイクで走りに来ているので、正直な話、もう飽きてしまっています。
でも、秋風を受け、のんびりと一人 原チャを走らせていた僕の視界に広がる 一昔前ののどかな風景を残す篠山は、
昨年弟のJOGを失敬してやってきたオフ会番外編のときとも違う姿を見せてくれました。

きっと僕には、走ることばかりに心を奪われて、今まで周囲の美しさがキチンと見えてなかったのでしょう。



毎度お世話になっているYさんの「店」に立ち寄るのが僕の常。

原チャで来ても、店のおばちゃんは
「赤いバイクのMさん(本名)」とすぐに分かったそう
です。

メットを脱ぐ前になんで分かるのかなぁ?僕にヘンチクリンな後光でも射してます?(笑)




でも、おばちゃんは相当お疲れのようで、いつもの気難しく客に説教たれるどころか、口数が少ないです。
どうしちゃったんでしょう。僕はここで怒られんと黒枝豆買いに来た気になれへんのんよ?(笑)


この後10月末のシーズン終了まで足繁く篠山に通い、Yさんの店で何度も黒枝豆を買わせてもらうことになるのですが、
最後までおばちゃんは元気が無いままでした。

何かあったのやろうと察しましたが、それには気付かない振りをし、
来年会うときには、また客を叱り付ける いつものおばちゃんを期待してますよと妙な励まし方をしちゃいましたわ(笑)。



JOGのハンドル下のコンビニフックとメットインに「戦利品」を満載し、篠山を後にします。



R173を北上。


道沿いには黒枝豆を売るビーチパラソルやテントの店があちこちにありましたが、
街と街を結ぶ路線ではないので交通量がさらに少ないため、
どこもおしなべて暇そうに店番をされていました。


さらに平日やしねぇ。Yさんの店で買ってなかったら、他の店に偵察にも行きたかったところ。




県境を越え、京都府京丹波町でR9にスイッチ。
あ、そういや、近くに昨年の原付オフ会で訪れた丹波自然公園があるやん。
今年も「田んぼアート」をしていると新聞で見たのを思い出し、立ち寄ってみました。

着くと何だか賑やか。近所の老人ホームのお年寄りたちが見物に来ていました。
日ごろ屋内で過ごされているだろうお年寄りの皆さんも太陽の下でニコニコされています。


展望台に上がり田んぼを見下ろすと、
稲の種類が昨年の4種類から6種類に増え

さらに黄金色に色づいているのでコントラストがハッキリしています。


ウデ上がってるやん(笑)。


翌週の収穫に向けて田んぼの水が抜かれて干上がっていますので、
田んぼの中にも入れました。



有機栽培なので足を踏み入れると、稲穂の間からイナゴがピョンピョン飛び出し、
ああ、やっぱり田んぼはいいなぁと思わされます。



来年は、さらに凝ったデザインを期待し、帰路につきました。




今回のルートの最大の難所、京丹波町と南丹市園部町の境にある峠、観音峠もラクラクと走れます。
このJOG気に入った。「2相棒」よりも面白いわ〜。


原チャで走っているのが楽しいので、さらに寄り道をしたくなりましたが、代車でトラブルを起こすと厄介ですので
これ以上の距離を伸ばすのを止め、後ろ髪を引かれる思いで帰宅しました。

それでも122km。昼から出発して4時間程度の原付ツーリングにしては、良い走りっぷりでした。




この1週間後に、また午後から有給を取り 代車のJOGで再び篠山に向かった僕がいました(笑)。



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「2相棒」の修理は2週間におよび、その間JOGで走りまくりましたね。
いつもなら大きなバイクの駐輪スペースが無くて、立ち寄ることを断念していた店などにも行けましたし、
その機動性を存分に活用。セカンドバイクの重要性を実感した次第。



同僚らからは「スピード違反で捕まるなよ」とか「原チャでは物足りひんやろ?」とかいろいろ言われましたね。


むしろ僕は、「2相棒」修理中も途切れることなくバイクに乗らせてもらえたことが嬉しかった
通勤時間も「2相棒」で走るのとほとんど変わりませんでしたけど、無事故無違反で乗り切りました(笑)し、
なにより、原チャで走っていた日々が無性に楽しかった。




「2相棒」の故障の原因は、燃料電子制御装置(インジェクション)の故障と分かり、
ユニット丸ごと交換すると、ノッキングの症状も出なくなり、元通りになりました。

「2相棒」退院の前日に、感謝の気持ちを込めてJOGの拭き掃除をしてやりました。
きれいになったJOGを見てると、このまま我が家の一員にしたくなりましたね…。



こうして、つかの間の原チャ生活は終わりを告げ、ふたたび「2相棒」と小回りの利かない不便な日々に戻りました。
ちなみに2週間のJOGの走行距離は560km。代車の原チャでどんなけ走ってんねん(笑)。