おひとり様100円の「レベル4」







遂に「未来の車」に乗ってしまった。


国内初の、「『レベル4の自動運転車』による営業運転」ですよ!!


福井県の永平寺町で自動運転車の実験として、以前より自動運転車による有償での運行を行ってまして。


自動運転の段階にはレベル1からレベル5まであります。



2020(令和2)年12月の運行開始時は、
常時監視の上に保安要員も同乗する「運転支援」と呼ばれるレベル2からスタート。
これは現行の車にも取り入れられているものがありますね。
(→コラム「ぶつかれない車」)


2021(令和3)年3月に、
常時監視の必要がなくなり、保安要員も不要となる、名実ともに「自動運転」となるレベル3へと移行。
これは国内の市販車においてはホンダの車、レジェンドの「ホンダセンシング・エリート」搭載モデルのみで進展がありません。
(→コラム「『伝説』のレベル3」)


そして、特定の条件下において、人の関与が全く不要となり、
搭載されたカメラやセンサーなどを駆使して車自身が自律的に運転制御をする、本格的な「自動運転」、
それがレベル4です。

ニホンにおいては2023(令和5)年4月に解禁されました。
(→コラム「ゆかいな自動配送ロボットたち」)


2023(令和5)年5月28日に、
遂にレベル4の第一号となる、自動運転車による、乗客を乗せた営業運転が始まったのです。


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自動運転車は曹洞宗の名刹・永平寺と荒谷という集落の間を結ぶ2kmの区間で運行しています。
公道と言っても車道ではなく、鉄道の廃線跡を遊歩道にした小道なのですが…。





というわけで、開始翌週の6月4日、朝から「2号R」と共に、自動運転の里、永平寺へと向かいました。
運行は日曜日の日中のみでして、今回は運行開始からわずか2度目の営業日です。ミーハーと呼んで(笑)。




永平寺にやってくるのは2年振り。
その時は、レベル3の乗車をしに来たんです。(→コラム「おひとり様100円のレベル3」)

あの時は閑古鳥が鳴いていて、最先端技術が日の目を浴びていないことを嘆きましたが、今回はさて…。


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お昼時に永平寺に到着。そして前回とまるで異なる光景に引きつったのです。
駐車場が埋まってるやん!

そう、2年前は新型コロナウイルスが猛威を振るっている最中で、世界中が閉塞感に包まれていた時。

国内では、感染拡大防止のため不要不急の外出は控えましょうと自粛モードになっていて、天下御免の永平寺もガラガラ。
人もまばらで、沿道のお土産屋さんは沈黙状態。
おかげでバイクを参道まで乗り入れて停めるという暴挙もでき、永平寺を悠々と参拝できたのですが…。



コロナ禍が去り、以前の状態に戻った名刹は、呑気な僕を受け入れてくれる雰囲気はありませんでした orz
これはまずい!
踵を返し、「終点」の荒谷へとバイクを繰りました。







荒谷に到着すると、そこにはお昼休憩中の自動運転車が2台停車していました。
午後の運行まで30分ほどあるためか、周囲には誰もいません。



おかげで写真撮り放題
自動運転車の横に「2号R」を並べて記念撮影までしたのが冒頭の写真です(笑)。



で、肝心の「未来の車」は、「レベル3」のときと同様、やっぱりヤマハの電動(EV)ゴルフカートです(笑)。




ただ、車体が心持ち大きくなり7人乗りにグレードアップしています。


名を連ねるスポンサー様(?)も仰々しいものが。





おや、レベル3のときはご当地デザインナンバーやったのに、ただの白いナンバーになってるやん。経費削減かな?




そういや、営業車なのにナンバープレートが緑ではないのは何故なんやろう?
…スポンサー様からの鉄拳制裁を受けそうなので見なかったことにする。




車のあちこちを眺めると、レベル3よりもセンサーやカメラが増えていて、レベル4への意気込みが感じられました。
車内も車外も監視しまくりです。そりゃ国内第一号やしミスは許されませんからね。













↑この画像だけ拝借しました。確か経済産業省のページやったかな(適当)。





運賃箱は相変わらず空き缶タイプでしたが(笑)。



レベル3にはなかった緊急停止ボタンがありました。とっても押したくなりましたが、グッと我慢。




写真を撮ったり眺めたり観察したりしているうちに発車時刻の13時が近づき、



自動運転車 「ご乗車ありがとうございます。運賃は最前列右側の運賃箱にお入れください」


車が僕を認識したのか、自動音声でアナウンスが流れました。
前回(レベル3)のときは遠隔で監視しているおじさんが話しかけてきたのに!
さすがレベル4、本当に無人運行のようです。

空き缶に運賃の100円を投入。
前回も思ったけど、最先端の技術をたったの100円で体験させてもらってエエのやろうか?
どうせなら試乗モニターにしたらいいのに。アンケート答えてあげるで(笑)。






それにしても、先週から始まったばかりというのに、乗客は前回同様、僕だけのようです。
閑古鳥が繁殖してるやん。大丈夫かコレ?

乗り場の隣にある蕎麦屋さんの駐車場から、
一人ゴルフカートに乗って喜んでる僕を訝しげに見る人たち
が。
まぁ、不審者が不審車に乗ってるように見えるわな orz

それだけでなく、そばの国道を行く車もツーリング中のバイクも、全員スルー。



こんな貴重な経験が100円で待ち時間ゼロなのに、みんなおいでよ〜!
まぁ、個人的には一人で占領してゆったり座れたからエエんやけど(笑)。



そして定刻を過ぎ、いつ動き出すのやろうと思っていると、



「2号車、発車します」
今度は音声合成ではない女性の肉声が。あら、運行スケジュールは自動ではないの?(笑)



すると車はするすると発車しました。EVなので静かなもんです。

発車前に自動音声で、座席の前にあるバーを握っておくように案内がありました。
急な加減速に備えるためで、最初の発進時だけ不測の衝撃に備えてしっかり握ってましたが、あとはハンズフリーでゆったり腰かけてました。
自動運転車に乗るの2回目やし、慣れたもんですわ(笑)。

2km先の永平寺を目指します。



ああ、おれは今 夢の「レベル4」に乗っている!



すさんだ日々が続き 表情に力のなかった僕、忘れていた笑みが自然とこぼれました。




レベル3の車にはオカルトセンサーが搭載されているのかと思うほど、何もないところで突然電子音とともに急減速や急停止を繰り返し、
ギクシャクとした走りで、いろいろな意味で怖かったけれど、
レベル4は違いました。段差に差し掛かると穏やかに減速したり、
「障害物を検知しましたので停止します」と自動音声まで流れたのです。


それ以外にも自動音声での各種車内アナウンスもあり、加速もスムーズで乗り心地もいいです。確実に進化しています。
今回も、道路に埋め込まれた電磁誘導線に沿って走っているのは変わらずですが。





ジョギング程度のスピードで、夏を迎え濃くなっていく木々の緑の中を進み、気持ちがいいです。



ハンドル(※なぜか左ハンドル)にはイタズラ防止のためかカバーが被せられていましたが、
下から覗き込むと、カーブなどでちゃんとハンドルを回しているのが見えました。感心感心。




途中で永平寺から出発した車両とすれ違います。







って、文字通り「無人」ですやん!!繰り返すけど、レベル4になってまだ2回目の運行日やで!
宣伝が足りないんと違うか?!



出だしがよかっただけにレベル4の性能を信用していたのですが、ルート中盤あたりから
「車が通ります、ご注意ください」と誰もいない周囲にアナウンスしたり、
何もないのに速度を落としたりと謎の行動をとるように。
もしかしてオカルトセンサーは継承しているんやろうか?(怖)



そんなハプニングも以前に比べれば些細なもので、約9分ほどで永平寺に到着。
2kmの乗車はあっけないものでした。





さっきすれ違ったのは無人車やったけど、たまたまやろう。
これだけ永平寺に参拝の方が来られているなら、自動運転車に乗る方もたくさんおられ…。





また誰もいないやん!! orz



自動運転車の停留所は、国道に面した京福バスの大きな乗り場の陰に隠れ、全然目立たないし、
ここから乗って荒谷停留所に行ったところで蕎麦屋さんがあるだけなので、ニーズがないのでしょう。





それどころか、自動運転車の乗り場の背後がバイクの駐輪場になっているんですけど orz




またこの車に乗って次の発車で帰ることにした僕。荒谷にバイクを置いてるしなぁ。
ここまで来たけど、永平寺は2年前の空いてるときに十分見させてもらったし、混雑する今は遠慮しときます(汗)。




しばらくすると熱心に写真撮影をする青年が来ました。が、乗車する気はなさそう。

果たして13時20分の発車時刻が迫り、また一人で乗るのかと思ったところ、
僕と同じ年頃の男性2人がやってきて乗合となり、ようやく自動運転車はバスっぽいサマとなりました。




そして荒谷へもどってくると、今度は学生風の男子3人が興味津々で車に勝手に座ったりしています。
でも無人のため、どうしたらいいのか分からない模様。前回のおれと一緒やん(笑)。
見かねたのか、そばの運行事務所からおじさんが出てきて男子たちに説明をしていました。

「未来の車」のハードルはまだまだ高いようです。




乗合の自動運転車が公共交通の軸を担う日はいつになるのやら。
そんなことを思いながら、僕は「2号R」とツーリングの続きへと出発したのでした…。